45話~受験①~
ようやく学院に入学一歩手前ですね。
「205番は何処の教室だ?」
俺は手に数字が書かれてある紙切れを持って看板の前に立っていた。何をしているのか?
決まっている。
ただの受験だ。
まあ強いて普通の受験と違う点を挙げるとするなら、周りの受験生が皆俺より4歳くらい年上ということくらいか?隣で元の年齢が15,6歳だった俺とイルマはともかく秋風さんは12歳。皆と同じ状況であるので若干緊張している様子が見られる。
「んー…あった! 2-B教室だって。さっさと行こう!」
秋風さんがそう言って両手で引っ張っていく。俺とイルマはそれなりに幼い頃から鍛えているのだがさすが勇者補正。重さなど無いかのように引っ張る。
ちなみに俺とイルマと秋風さんは番号が並んでいるため同じ教室だ。
見た目年上の受験生たちの遠慮の無い目線を浴びながら俺達はのんびりと2-Bへ向かっていった。っていうかこの学院無駄に広いよ。特に訓練場とか教室以外の場所が。
これは何だろうね。もしかして生徒が脳筋ばっかりだからストレス発散できるようにと思ってこんな風な設計にしたのかな?
心の中でこの学院の見取図を見ながら一人ツッコミを入れているといつのまにか、目的の場所に着いていたようだ。そして癖で音を出さないようにドアをスムーズに開ける。何故か昔から教室を入る時に注目されるのが嫌なのだ。死ぬほど。この世界に来てから多少はマシになったかなとは思ったが、今考えてみるとここに来るまで限りなく交友関係が狭いな俺。
「……はあ」
「ん? どうしたんだいテオ? そんな今にも鬱病にかかりそうな顔をして。あ、もしかしてテストで飛び級レベルまでいける自信がないとか?」
イルマがからかうように笑いながら聞いてくるので少しじと目で睨んだ。
「そこまで言うか。ちょっと昔の俺の交友関係の狭さに少し落ち込んだだけだよ。それに俺は復習はちゃんとしたから大丈夫だ。どっちかっていうと危ないのは秋風さんだろ」
「ええ!? そこで私に振るの!!?」
「うん。少なくとも秋風さんにも飛び級まではいかなくても特待生にはなってほしいからね」
……
すると秋風さんは顔を青くして「ねえ! どうしよう私勉強あまり得意じゃないんだけど!?」とか言いながら俺の肩を持ってガクガクと激しく揺らした。それで俺は「あうあうあうあうあう」言ってるんだが、他の言葉が出せない。目がまわるし顎もカクカクするからだ。正直言って誰か助けて欲しい。
っあ! 何で周りの受験生は微笑ましい顔でこっちを見つめてるんだよ!! お前ら本当に受験生か!? 緊張しなさすぎだろ!
しかし、この雰囲気がテオによって生み出されたことを知ることはなかった。
テストの始まりを告げる試験官の声。
いっせいに数学のテスト用紙を開く受験生。
目の当たりになる裏表印刷で3枚の紙。
そして拍子抜けする俺(笑)
いやいや。確かに裏表印刷で3枚分あるのは確かに多いとは思ったけど、レベルが少し……低いのかな? とりあえず地球より学力が低いというのは分かった。これなら数学で満点近くを取ることは可能だな。
まあこの程度ならイルマ元々理数だったから余裕だろうけど、秋風さんはどうかな? 見た感じこのレベルなら解けないことも無いけど、計算速度と慣れが足りない気がする。個人的に数学を得意になることにおいて必要なのは問題の傾向を知ることだと思う。
大体文章問題だって、細部は違っても何を求めるのかを読み取れば瞬時にどの公式を使えばいいか分かるようにしないと、得意になるのは苦労するだろう。加えてこの問題の量だ。60分で200問解くってどんな鬼畜テストだろうね。まあ無料と飛び級がかかってるとなればこれも納得できるけど。
そう考えている間もテオの解答用紙は次々と埋められていく。単純な計算問題に関しては5秒でK.Oされているのだから如何に問題への慣れが重要かが分かる。
さて、なんとか残り10分で全問解いたが、見直しはどうしようか。正直言って、文章題ほど見直しのしにくいものはないと思う。あんないくつも途中計算が書かれてあるのにそこから一部の符号が逆になっていたり計算間違いをしていたりしても本人が発見するのは難しい。まあ、他人に見てもらったら一発で分かることなのだが。
だからここは計算の量が少ない問題から見直していこう。
見直しをしようと思ったのに3分。そう思い決心するのにかかったのが2分。そして残り時間を見ると、後5分。中々面倒くさいな。
若干うんざりしながら迅速に見直しをしていると、特に目立ったミスは見当たらずに終了の合図が鳴った。
そして俺は周囲の出来を確かめるような声をBGMに俺は椅子にもたれかかった。




