37話~直感少女~
「それじゃあ手順を始めるよ」
「りょーかい」
俺は今背景も床も闇のように深い色で壁も床も天井も視界には入らず、この闇の精霊は地面が無いため浮いている。
それなら浮く方法を知らない俺はどうしているのかって? 一応俺も浮けている。
…まあ、空中に描かれた水色に輝く魔方陣の上に横たわっている状態で、だが。
これからする手順というものを説明するにはまず、走りながら交わしていた会話の内容を知ることが必要になる。
「体を作り変える……?」
俺はその言葉を聞いた時、突然体を改造すると言われたために混乱した挙句ただ同じ言葉を返した。そして彼女は当たり前のことを話すような表情(鼻から上は見えないのだが)で俺の疑問に対する答えを説明してくれた。
「最初に話した通りテオがあいつに殺された時、色々と見られない姿になったでしょう? ですからもし魂を肉体に戻したとしても腕、足が無かったり、いたるところに穴が開いている状態で生き返ったとしても五体満足の状態でないのでしたら意味が無いでしょうし……むしろこっちの方が重要なのですがあいつはテオのことを殺したと確信しているでしょうし実際に死んでいます。それなのに元気な姿で街中を走り回っているのを見てしまえばもう1度殺しにくるか、少なくとも警戒されることは間違いないというのが理由です」
彼女はそこで一旦言葉を切った。確かに生き返ってからのことを全く考えていなかった俺でも今聞いたことは吟味などしなくても有り得る事態というか俺なら確実にそうするという考えに至るから俺の体を作り変えることに関しては納得出来た。まあ、痛いことだったら出来るだけ避けたいものだが、未だに俺の体の作り変え方については全く説明されてないためなんとも判断し辛い。
ここまで考えた辺りでもう少し話しますよと彼女は前置きをして、また口を開いた。
「これでテオが体を作り変える必要性は理解して頂いたと思います。それで、次は体を作り変えることに対する説明ですが、ボクがそれをする場合はテオ限定で更に環境も整えないと出来ないのでまずはその場所へ向かいます」
「うん。つまりそれほど生き返らせるのは難しいことなんだね。それとさっきから気になってたけど素の状態で喋ってくれないか? ちょっと違和感があるんだが」
そう、この子説明口調になった辺りから慣れていないのか敬語を途中途中間違えたり興奮すると急にクネクネしだしたりと見ていて非常に気になるのだ。
だから俺に敬語を使われる筋合いもないので思ったとおり言ってみたのだが、
「え!? 良いの? ありがとー! なんか説明は真面目にしないといけないかなあとか思いながら話してたらいつのまにかあんな風になっちゃってね」
にへら、と笑ってすんなりと遠慮なく素に戻ってくれたようである。まあ続きを話そうじゃないか。
「あ、そういえばまだ続きを話してなかったね。それでその場所に着いたらそこは足場が無いからボクがあらかじめ描いておいた魔方陣の上に横になっておいて。後はボクとテオが合体して魔方陣を発動させれば新生テオの完成なんだけど、ここまでで何か質問はあるー?」
「うん、色々とある。まず俺はどうやって足場がない所を移動すればいいんだ? 魔法で浮く方法なんて知らんぞ俺は。それと体を合わせるってなんか卑猥なイメージがあるんだけど実際の所詳細に話すとどうなの?」
ここは重要だ。ここがアニメみたいな世界だが現実ということを考えてまずそんな主人公が意図せずにやっちゃうラッキースケベみたいなものは起きない、確実に起きない。それにこの子は少し話していて分かったが俺をからかうつもりなのかちょいちょいセクハラ紛いの発言をしてくる。だからこの発言も何か重要な所を隠したりしているはずだ。
うん、今日の俺は地味に冴えてるぞ。
「あはは……、さすがに何回もやると疑っちゃうかあ。うん、まあ詳細に話すとテオのバラバラになった死体にボクの肉体を大体5割くらい混ぜてからテオの体を少し人の体と精霊の体を掛け合わせた感じの人になってもらうんだよ」
……俺は人を辞めるのか。
「ふーん、まあいいや。その姿になった時に分かる限りでいいからスペックとか教えてくれよ。後、もう質問はいいからここから目的地に着くまで君の名前を考えないか」
さっきから名前が無いためどう呼べばいいか分からず、話しにくいのだ。
「んー、ボクはテオが考えた名前が欲しいかな。あ! でもその名前にするかどうかはボクが判断するからね?」
すると彼女は少し考えるように自由な左手を顎に当てているとゆっくりと顔をこちらに向けてにっこりと笑いながら言った。
「分かった。えっと、そうだな…カレンは?」
「やだ、なんか軽そう」
「それじゃフォン」
「それもなんかやだ」
い…一蹴されただと……!? さり気なく会話している時に頑張って出した候補だったのに。
「他に何か無いのー?」
「うーん……ちょっと待って」
ここから俺は全力で脳を駆使して名前を考えに考えた。ここまで考えたのは前世も今世も入れても一番に入るかもしれない。それほど考えたがどれもかすりもせずに一蹴された。
何でそんなに一瞬で蹴るのか聞いてみたところ名前を聞いた時にクルものがないらしい。
そして名前の弾幕を張り続けること1時間。とうとう足場が無くなる直前でちょっとヤケになって安易な名前を出してみた。これ以上は名前は出らんだろう。
「なら、ナナはどうだ!」
唐突に思い出したが俺の名前は某狩りゲームのテオ・テス〇トルに酷似している。だからその対のナナ・テス〇トリのナナで良いだろう。
「うん! いいよ!!」
「即決かよ!!」
この子、もといナナは一体どれほど直感に頼って行動しているのか少し心配になった。




