34話~好奇心はなんちゃらを殺すって言うよね~
大通りをある1人の人物が歩いているが、どこか周りを警戒するかのようにキョロキョロ辺りを見まわしながら移動している。そして場所も態々道の端を選んで移動しているように思える。それが、男なのか、女なのかはスッポリと全身を覆うフード付きの絹のローブによって不明ではあるが、背丈から見て俺と同じくらいの子供であると予想出来る。
「……あの人滅茶苦茶浮いてるよな。服装とか明らかに質の良さそうな布を使ってるし」
もしかして貴族か王族かな、いや有り得ん。と、自分で疑問を切り捨てながら俺はその妙に周りから浮いていて怪しい人を屋根の上から観察している。本当は今ランニングをするべきなのだが、そっちよりも面白そうなことを優先したい。なんだかあの人を追跡したら変な所に辿り着きそうな…そんな予感がする。っていうかこういった人に見つからないように追跡するのって結構、いやかなりテンションが上がるよね。
―――それにしても周りの人は変だとは思わないのかな。皆あの人とすれ違っても二度見すらしないけど。…ん? あれはなにかなー?
なんとなくあの怪しい人の周辺に何か変わった反応をしている人がいないか探していたのだが、その時に期待していた反応とはまた違った動きをしている人が数名いた。なんというか、この数名の人達は怪しいというより……危ない? 感じがする人が大きく分けて3種類いた。
数名が壁や障害物に隠れながらそのフードを被っているあの人に見つからないように尾行するように移動しており、それを見る目に特に敵意や悪意などのマイナスな印象を受けないことから身内か親戚がこっそりと心配でもして着いて来ているんだろう。
そして2、3人が物陰に隠れて手をわきわきしながら熱い目線を送っている人、お前らは何をしてんだよ。変態か。もしくは人攫いか。
最後に3人程、ポケットに手を突っ込んで何かを確認するような動作を繰り返す身なりが少し汚いんじゃないかと思われる男が堂々とあの人の後ろを少しずつ距離を詰めるように付いて行っており、あの人を見る目は厭らしい目、もしくは殺意、敵意を含んだ目をしていた。こいつは絶対いかん。あの人が殺されるかもしれない。
「ここは俺がこっそり行ってあの明らかに危なそうな人だけに電気を流して気絶させるべきなのかなあ。いや、でももしそれで逆に返り討ちにあって死んでしまったら本末転倒だし…。ここは妥協点として凶器を取り出した時の動きでベテランじゃないかもしれないと思ったら止めに入る。うん、これでいこう」
俺は適当に頭の中で思いつくままに作戦を立ててから少し先の方に行ってしまったあの人を追跡するために少し先の家に跳び移った。とりあえず今日は夕飯の時間までこうやって時間を潰していこうと思う。
追跡を始めて20分ぐらい経ったがようやく悪人っぽい人グループの1人がここになって初めて行動を始めた。屋台に並ぶ食べ物を物珍しそうに眺めているあの人に向かうスピードが速くなり、ポケットから出した手にはナイフが握れられていた。これは間違いなく殺人的な目的だな。急いで助けに行こう。
そう思い雷属性を流してすぐに向かおうとした瞬間、背中に激痛がはしった。だが、それでも悲鳴を上げることを堪えられるレベルの痛みだ。確認は出来ていないが、背中に未だに違和感があることから恐らく何かが突き刺さっていると思われる。そう、ぼんやりと考えて背中に刺さっている物を取ろうと――背中に伸ばした腕は動かそうとした位置のまま動かなかった。
「……は?」
何故腕が動かないのか。その疑問が解けぬまま次は体の言うことがきかなくなり、屋根の上に俺は倒れた。これは一体どういうことなのか。ズキズキと痛む背中がどうなっているかすら確認出来ずに苛立っていると視界外から近付いてくる気配を感じた。
「……獲物を監視していたお前は何者だ」
何をするのかと思えば俺に話し掛けてきた。獲物と言っているあたり、この人は暗殺者で獲物はあの人のことだろうか。そしてこの人が暗殺者だったとしても一体何故俺が刺されなければいけなかったのだろうか。そう思い疑問を口に出そうとしてみるが、顎がガクガクと震えて上手く言葉が出ない。
「い、いや。……俺はただ面白そうだったから……ここで見ていただけだ」
何とか搾り出した言葉は吟味する前に出してしまった為に何か間違いをした気がしてならない。というか俺はこの男に恐怖しているのだろうか。上手く口は動かずにガクガク震え、言葉が発せられる度に微かにだが視界が靄を張ったかのようになってしまう。
「そ、んなことより……これは一体どうい、うことなんだ」
「ただ仕事の邪魔だから消えてもらう。それだけだ」
俺の問いかけに男は冷たく言い放った後に、首に何かが貫通した感覚がしたが、そんなことよりも今までに味わったことがない激痛が体中を駆け巡る。
「―――!!!?」
あまりの痛みに悲鳴を上げようとしたがただ空気が漏れでただけで声にはならなかった。
そしてのたうち回ることが出来ず、少し痙攣している時にもう一度背中が焼けるような錯覚を覚え、そこで俺の意識は途絶えた。




