32話~日常的訓練~
最近コメントされたものが削除されたのは少し気になりますが、ちょっと返信したい内容だったのでここに書いておきますね。
文字と言語が違うことに関してですが、聞かれて考えてみれば意外とご都合主義に頼らないと可笑しな感じになってしまうのでもしかしたら文字も日本語じゃなくするかもしれません。
「っそこだ!!」
甲高い掛け声のもと、俺の鳩尾へ木刀が高速で突き出される。どちらも一瞬で攻撃が当てられる位置にあり避けることが出来ないそれを、自分の木刀で上手く方向をずらし相手の体勢を崩した。
「これで終わり!」
相手が防御する体勢に移るより速く相手の首元へと木刀を突き出し、当たる寸前で止めた。そこで相手は観念して「まいった」と悔しげに言った。
そして俺はその悔しげな表情をする相手、秋風さんに向けている木刀をどかして、したり顔を向けた。
「ふふん。これでまた俺の勝ちだね」
「んにゃーー!! 悔しい! テオ君私より背も小さいし、力も無いのにどうして勝てるのかな!? 私の方が負け越してるじゃん!」
「っま、それも経験の差だよ。単純な力だけでいったんじゃ全く歯が立たないからね」
俺とイルマの暴露大会が済んでから1週間が経っていたが、基本同じことの繰り返しをしていた。
朝飯前、魔力が枯渇するまで俺とイルマはコントロールの上達を図る(秋風さんは魔法を使えるようにする)。朝飯中、秋風さんに言語を教える。朝飯後魔力を使わずに適当な場所で2時間木刀を使い稽古。昼飯まで自由時間(イルマは図書館へ。俺と秋風さんは言語の勉強)。昼飯後、2度目の魔法の訓練。夕飯まで街中をひたすら走り回って体力作り。夕飯後、秋風さんに言語を教えてイルマは何かを開発しようとしている。寝る1時間前に2度目の剣の稽古。寝る。
このようなサイクルを秋風さんが来てから繰り返した。書いてみれば村にいた頃よりもきついような気がしなくもないが、ここに来て間もない秋風さんは弱音は吐くが諦めるような言葉は発していない。どうやらゴロツキに襲われた時の二の舞にならないように鍛えておきたいんだそうだ。そして勇者補正のお陰かもしれないが言葉を理解するのも速く、俺が入試を受ける頃には問題なくこの世界の人達と話せるレベルにはなると思う。
俺自身にもこのスケジュールは中々効果的であり、普段していなかった魔法のコントロールや剣のスキル上げが良い感じに上達していっている。その剣でイルマと秋風さんと稽古をした時の過程で判明したことなのだが俺はこの3人の中で最も素の腕力が無いようだ。それ故に俺は剣を相手に押し付けて吹き飛ばすようなパワー型ではなく攻撃の勢いを分散させたり、体勢を崩したりして攻撃するチャンスを狙うあまり力のいらないテクニック型になることを余儀なくされた。
だが、最初はスキルの低さで扱いの拙さの為、秋風さんやイルマに3日程連敗し続けていたが、4日目からは剣の扱いや立ち回り方にも慣れていき完全なパワー型である秋風さん相手ではほぼ必勝と言えるまでになっていた。中々連勝とは爽快なものだ。
ちなみにイルマが夕飯後、何を開発しているのかと言われても説明のしようがなく、ただ何かを開発しているとしか言えない。
あの日、「ん? 創造だよ」とドヤ顔で言われた為に魔力でスピードを強化して張っ倒した後に創造という属性がどのようなものなのか聞いてみるとイルマ曰く、
自分の他に創造の属性はいなかったためどんなものだとは断言出来ないが。創造属性の魔力を溜めながらこんな物を造りたいとか思ったら魔力量に応じて造れるらしい。しかも、多少の無理は利くらしく、あのメガネのように対象のステータスを見れることを付与したり、只の入れ物を四次元型にしたり色々と便利なものを所持しているとのこと。
これを聞いた時にはこれ完璧にチートじゃね? って思った俺は何も悪くない。何この理不尽。しかもこれを使えば地球に帰れる物も造れるんじゃないかとも思い、聞いてみたが実際にそれを持ってるとのこと。ならなんで使わないんだとも問い詰めてみたが。その地球に帰れる鍵を振り回しながら
「いやー、これまさかの魔力を溜めないと発動しないタイプらしくてしかも、僕の魔力を半年くらい毎日注ぎ込んでもまだ5分すら溜まってないんでよねーあはは」
若干疲れた笑みを浮かべていた。俺の5倍魔力量あってもそんなにかかるのかよ。
俺はそれを聞いた瞬間に膝から崩れ落ちた。
まあなんやかんやしながら色々と今後の目的が見えたような気がしたのだが、目下の目標はソルリス学院に飛び級入学、これだろうな。イルマの言う鍵が満たされるまでには確実に何年もかかるだろうから俺は俺で冒険者になって世界中飛び回って帰る方法を探さないと。探し回る時間を取る為には出来るだけ早い段階で冒険者にならないとな。
「ねえ、テオ君」
ひたすら考え続けていると隣で座禅を組んでいる秋風さんが声を掛けていたが気のせいか普段より声のトーンが低い。
「どうしたの? 秋風さん。何か閃いた?」
「むしろ何も閃かないけど。私って魔法の才能あるの? 体ばっかり強くなってたけど」
「うーん」
秋風さんが涙目で言ってきたあたりで分かると思うが1週間が過ぎた今になっても未だ秋風さんは魔力を感じることが出来ずに魔力を練習することすら出来ていない。
だからそろそろ魔法に対してかなり後ろ向きな気持ちになっているだろうからなんとかしてあげたいんだけどどうしたら……っあ、これはどうだろうか。
「秋風さん。ちょっと手握って」
「え? うん」
急に言われた要望に戸惑いながらも俺の手を握った。まだ木刀を握り始めたばかりだからなのかプニプニして柔らかい。指でつついてみたいな。って何考えてんだ俺、正気に戻れ。
首を横に大きく振って先ほど現れた邪な気持ちを振り払って、秋風さんの手を通じて体内に俺の魔力を血管に流すイメージをしながら流した。
すると流し始めてすぐ秋風さんに変化が出始めた。
「ッ!? 体が熱い……!」
「え!? ごめん!」
俺は急いで魔力を流すことを止めた。本当はこれで体内にある自分の魔力を理解して扱えるようになったよー的な展開があったら嬉しかったんだが、悪い方向に変化が表れたのならこれはすぐに止めるべきなのだろう。残念だけど地道に魔力を扱えるように精進してもらうしか他に方法が無いのかな。
俺がそう決め込んでそれを告げようと顔を上げた時、ふと俺の秋風さんと手を繋いでいた右手がプニプニした感触で包まれている感じがしているのに気づいた。秋風さんが目を輝かせながら両手で俺の右手を握ってきたのだ。
「ありがとうテオ君! さっき何かをしてくれたお陰で私の中の魔力が意識出来るようになったよ!」
「あ、どういたしまして…? とりあえず魔力が出せるかちょっと試してみて。こう周りに見えないけどふわふわ浮かんでいる魔力、粒子みたいなものを体の中に集める感じのイメージをすれば結構簡単に多く魔力を扱うことが出来るから」
「うん! じゃあやってみるよ」
結局その日秋風さんは魔法を使えるようになった。




