24話~宿泊~
眠くて0時更新に間に合いませんでした^^;
とりあえずようやく、主要キャラ(予定)も出せそうかな?
「はい。テオ・ウィステリア様のお部屋は203号室ですのでそこの角を曲がった通路にあります。そしてこれがそこの鍵がこれになるので外出する時には私、マリアに声を掛けてください」
宿屋に着いた俺は一人カウンターの前に立っていた。父さんは一か月分の料金を支払ってから「後でまた戻ってくる」と言ってどこかに行ってしまったのだ。何をしているのかは分からんが後の事は勝手に俺が進めておくのだろう。部屋に辿り着くだけだけどね。
「はい。ありがとうございます」
俺はカウンターの前に立っている女性から鍵を受け取ってから軽くお辞儀をした。
「あら? 子供なのによくできてるわね。えらいえらい」
そう言って少し驚いた様子になりつつもにこにこと俺の頭を撫でてきた。確かに8歳だからやることなすこと1つ1つに微笑ましい視線を送ってくるのも分かる。話し方も事務的なもの以外なんか子供相手に話すものになっているのも分かる。
それでもだ。生きてきた年月なら20は超えているのだからこういうのは恥ずかしい。……まあ、元々人に撫でられたことも無かったから特に生きてきた年数は関係が無いとは思うが。
「一人で宿を借りるのでこれくらいは出来て当然です」
「はいはい。それでも寂しくなったらいつでも呼んでよ? まだ子供なんだから」
俺は憮然とした様子で返答をした。が、全くマリアには効果なし。寧ろ反撃された。仕方なく203号室目指して退散。退散する途中で周囲の人達も同じような視線を送っていたことに気づいて赤面と同時に涙目。皆子供扱いするとか……。
「203…は……っと。あったあった」
先程の指示通りに角を曲がると扉がいくつか並んであり、扉の上に部屋番号が書かれてああった。
そして入ってみると、とりあえず寛ぐことは出来るだろう。と思われる最低限の家具が置いてあり、部屋は掃除の手が行き届いているのか清潔な状態だった。
「さてと。ここに着いたとは言ってもやることがいまいち思いつかないし、今考えてみれば金を一円も握らせて貰ってないな、俺」
確かに思い返してみればあの村の生活の中で俺がお金を使った記憶などない。偶に父さんが長い間出かけていって、帰ってくるときにお金を持ってくる時くらいしか見たことがないぞ。商人から欲しい本があった時も父さんにおねだりをして買ってもらったし、…そもそも普段の生活がほとんど自給自足だからあまりお金を使う要素が見当たらない。
「……まあいいや。そんなことより新しい精霊石も貰ったことだし、2つ同時に魔力を流しこんでみるか」
これから必要になるだろうと思い少しお金について考えてみようと思ったのだが、俺自身お金に触れ合う機会があまり――というかほとんど無かったことを今更ながら思い出して、半ば現実逃避気味に首に掛けられて、最近は何故かはずれない不思議なネックレスを右手に、そして宝石みたいな石ころがはめられた腕輪を左手に握って同時に魔力を流しこんでみた。
俺もキアーラ程ではないが精霊には興味を持っている。それに精霊魔法……。前世からファンタジー小説ばかりを読んでいた俺にとって何度使ってみたいと思ったことか…!
そんな単純な気持ちで毎日とは言わないまでもかなり高頻度で闇の魔力を微量ながら流し続けていた。
「っていうか、魔力を使うのって全部精神的にくるものがあるな~」
気の抜けた声を出している間にも魔力は減少し続け、俺に直接疲労感が溜まっていく。単純に疲れる度合いは2倍だと勝手に思っていたのだが、土の精霊石の方には魔力が多く流れているため普段の数倍疲れやすい。恐らく3分もしたら枯渇間近だろう。
「…未だ闇の魔力の勢いは変わらず…か。石の方には変化があるからちゃんと流れていっているのは分かるんだけどねえ」
……実は魔力を流し続けていくことで判明したことだが、この闇の精霊石は魔力をたくさん篭められるほど石の艶が良くなり、時折何か喜ぶかのように点滅するのだ。最初それを自室で見た時は思わず悲鳴を上げそうになった。まあ、冷静に考えたら精霊がこの中にいるはずという考えに至り、当然といえば当然なのだろうと思い込むことにした。
だが、その反応を見られることで何とか気を紛らわそうと思ってもこの闇の魔力の少なさには多少違和感を覚えたくなる。こんな量だから魔法の発動すら出来ないのだ。
――もしかしたら俺の闇の魔力が単純に弱いというのではなく、俺が闇のイメージを上手く出来損ねているためにこのような事態を招いているのではないか
こんな思想が俺の頭の中からぽろっとこぼれてくる。何度そんなことがこぼれたか数えるのは途中から止めた。
そして3分流し続けて今回はこれ以上変化が見られないのを確認してから俺は室内で父さんから借りた予備の剣(貸してと言ったら貸してくれた)を使って、熟練度上げに励むことにした。少なくとも父さんから基本の動きは一通り習ったため、全く違う動きを知らず知らずの内に身につけてしまったという嫌な事態陥らずに済んでいる。
俺が剣を振ることを止めた時には既に夕方になっていた。
「うはあ…。ちょっとやり過ぎちゃったかな? いや、でもお金が無いから特に店に行っても出来ることは少ないからこれでもいいか」
事実俺の体からは汗が吹き出ており、振り続けていた右手の筋肉も初めて父さんと組み手をしてボロ雑巾のようにされた時のような疲労感に襲われており、右腕は現在動かすことは出来なかった。
不意に扉の向こうからノックする音が聞こえた。
「テオ。いるか?」
「うんいるよ。父さん。どうしたの?」
どこかから戻ってきた父さんは特訓をした後の部屋を見ると少しだけ顔を顰めた。
「修行に精を出すのは良いが、出来るだけ場所を選んでしなさい。それとそんなことより、ほれ」
「うわっとと……お金? しかもこんなに大量にどうしたの?」
父さんから乱雑に投げ渡された袋をお手玉をするようにして何とかキャッチしてすぐに中身を確認すると金、銀、銅貨で袋が満たされていた。
「それはお前の一ヶ月の生活費だ。さすがに街中で無一文じゃ生活出来んだろう。後、それを使って本なんかを買っておくといい」
「分かった」
「それと、ソルリス学院への入学試験への申込はしておいたぞ。一ヵ月後の本番にこの紙を持っていくと会場に入れるからな」
そう言うと俺に申込用紙を受け取った。恐らくどこかに行っていたのはこのためだったのだろう。
「よし。これで俺は村に戻る。後は自由にこの街で過ごすといいだろう」
「うん。それじゃ、父さん。今度会う時は卒業した時。かな?」
俺が笑顔でそう言うと父さんも同じく笑ってから手を振って出て行った。
――よし、この一ヶ月は有意義に過ごそう。




