14話~男なら…~
えーと、2月18日まではテスト勉強のためしばらく予約掲載で投稿したいと思います。時間は7時に三日ごとで投稿するのでよかったら読んでください。
テオの部屋の空気が凍り付いている頃、居間ではファイとセリアがお茶を飲みながら楽しそうに話していた。
「それにしても今頃キアーラちゃんは楽しんでいるのかしらねえ?」
「? お母様。なんでテオの部屋にこっそりと忍び込んで独り言を聞くことが楽しみになるの? 私からしたら退屈でしょうがないと思うんだけど」
「独り言を盗み聞きすること自体は問題じゃないわ! むしろそこから繰り広げられるシーンに持ち込むことこそが私の天から与えられて使命なのよ! きっと!!」
ファイは持っていない方の手で力強く拳を掲げて熱く語っていた。
「そこから繰り広げられるシーン?」
「あら!? セリアは気づいていなかったの? キアーラちゃんはテオのことが好きだけど、いまいち積極的にアプローチすることが出来ないってことを」
「そうなの!!? キアーラはテオに対しては敬語を止めなかったからてっきり距離をとっていると思っていたわ」
「そこなのよ。何故か敬語を止めようとしないの。……それでも、異常に賢いテオのことならすぐにその気持ちに気づいても可笑しくないと思うんだけどねえ…」
「テオ…。やるなら男らしくガッ!! っといっちゃいなさいよ……!!」
「いやよセリア。テオにはまだ早すぎるわ」
セリアがぼそりと呟いた言葉にファイは苦笑するしかなかった。
…なんだろう。今何か凄く貶された感じがした。
っていうかこの状況はどうするべきよ? キアーラさん全く俺の肩から手を離してくれなさそうだし…。
「元の世界ってどういうこと?」
俺がどう返事をして誤魔化そうか考えていると待ちかねたのか同じ質問をキアーラはした。…それよりキアーラさん。手が震えてますよ。
俺は溜め息を心の中で吐いた。駄目だ。言い訳が全く思いつかん。それに手を震わせてまで尋ねてくるってことはそれほど軽い気持ちで聞いてはいないって考えていいんだろう。後、キアーラさんにはこのことは誰にも言わないようにちゃんと説明しないとな。
「分かった。俺が皆に隠していたことをキアーラにだけは教えるからこれから話すことは皆には絶対に内緒にしてね?」
俺は元の一番気楽な口調に戻した。話し方が若干変化してことにキアーラは多少驚いていたようだが、何故かすぐに嬉しそうな表情をして満面の笑みで頷いた。
「それと話す前に少しお願いしたいことがあるんだけどいい?」
「分かりました! なんでしょうか?」
「ちょっと体勢を変えてから話させて」
「へ? …っあ! すみません!!」
俺に問いかけることに必死だったのか、いつのまにか俺にすがりつくように引っ付いている状態に気づいていないキアーラは何を言っているのか分からないという顔をしていたがすぐに意味を理解すると後ろへ仰け反った。尻尾の振り方の勢いから察するに相当照れているらしい。そりゃそうだろ。普通異性に引っ付いたりなんかしたら気が動顛してしまう。
「よし、こんな感じでいいか」
「…うん」
結局どんな体勢で話すのかというと、なんとベッドの中に二人とも入った状態となったのだ!!
――おい、そこ。俺は特に何もする気はねえぞ。キアーラさんも俺の手をしっかりと握って頭から湯気を出しながら思考停止しないで下さい。
…ああ、もう。俺も緊張してくるじゃんか。
「それじゃ、今から俺が話すからちゃんと聞いてね」
その言葉を聞いて真剣な表情になるキアーラを確認して、ゆっくりと語り始めた。
前世の記憶があること。元の世界とこの世界の違い。勇者の召喚についてなど包み隠さず全てを俺は話した。
「つまり、テオさんはこの世界の人ではない。そういうわけですか?」
「いや、元の世界では死んでその魂がそのままこっちに来たって俺は思っているから。肉体はテオ・ウィステリアっていう紛れも無くこの世界で生まれたものだよ。」
「そうなんですか。それと先程までの話なら元の世界に戻りたいとテオさんは考えているのですか? あちらの世界のことを話している時はどこか楽しそうにしていましたが」
俺は内心驚いた。ここまでの話はある程度は簡潔にはしているが、それでも一回で理解するには難しい内容だと思っていたのだ。しかし、それをキアーラは瞬時に理解したのだ。
もしかして磨けば磨くだけ光るタイプだったりする…?
「うん。最終的には戻りたいとは思っているよ。でも、こっちの世界でも見たいこともやりたいこともあるからひとまず、冒険者になって全世界を探索するつもりではあるよ」
「私も一緒に行きたいです!!」
唐突に大きな声を上げて反論をしたキアーラを驚いたように見つめた。気づくと握られている手にも更に力が加わっている。普段は何をしてもその前に一旦考えてから言っていたように思えたが、今回は完璧に反射的に返していた。普段のキアーラからは考えられないな。…いや、もしかしてこっちの方が素のキアーラなのか?
「そんなこと言ったら母さんが絶対に却下すると思うよ?」
「それでも構いません。許してくれるまで頼み続けます」
「…なんでそこまでして俺に付いて来ようとするの? そんな旅に付いてくれば死なないとも限らないんだよ?」
「それは…。私も色んな景色を見たいし、精霊石を手に入れて精霊と仲良くなりたいもん」
頬を膨らませながらキアーラは言った。この行動はまだこの歳でやるからこそ破壊力があるのだと思う。少なくとも俺には大きな攻撃を与えた。
「へー。って、やっとキアーラも敬語が外れたねー」
とりあえず、別のことを考えて気を紛らわすことにした。そうか。キアーラ精霊目当てか。そういや俺の精霊石にはどうやって闇の魔力を流し込めばいいんだろうか? 魔力を流し込もうとしても土と闇が9対1の割合でしか流されないから効率悪いんだよなー。
「っあ。そういえばそうだね。って、笑わないでよ!」
「痛い! まあいいじゃん。そっちのしゃべり方のほうが俺は好きだね」
敬語はもう止めにしたのかキアーラはそのままの口調で話していた。それを俺がニヤニヤとも静かに微笑んでいるともとれない笑顔で見ていると、叩かれた。…というか性格少し変わってない?
「――ッ!!? そ、そんなことよりこれでテオの話は終わったの?」
「うん。これで俺が隠していたのは全部話し終わったよ。何か聞きたいことはある?」
「じゃあ一つだけ。テオは冒険者には何歳でなるつもりなの?」
「そうだね…。今はまだ体も成長途中だし、学院には本もたくさんあるっていう噂を聞いたから…。12歳までは修行をしたり、年齢制限が無かったらだけど出来れば学院には入学したりして、そこから冒険者になってみるよ」
「そうなんだ。それじゃもう遅いし…」
「うん。お休み」
キアーラが首肯するが、しばらくしても動く気配はない。どちらかというと布団に潜り込んでいっている。
「……?」
「どうしたのテオ?」
「いや、どうしたの? って、キアーラは元の部屋に戻らないの?」
「え? そうだけど」
「えーと…」
「? まあいいわ。お休み」
「え? あ? お休み」
そしてキアーラは当たり前のように俺の布団の中で寝始めた。なんてこったい。俺の理性が超ピンチじゃないか。ここはしょうがない。完璧に寝たのを確認してから別のところで寝よう。
結局あれからベッドからの脱出は不可能だった。
いつ脱出するかタイミングを見計らっていたら、キアーラが俺の腕に自分の腕を絡めてきて、更に頬擦りも偶にしてくるのだ。そして恥ずかしくなってそこから強引に逃げようとすると、一層絡めている力を強くして離れることができないようにされた。正に生き地獄というようなもので一睡も出来ないという体験を俺はこの日、初めてしたのであった。




