13話~疑問~
「さてと…。それで、テオ。お前は今日の喧嘩はどう思った?」
オルクスを村の外まで見送り終わるとロイは側で一緒に見送っていたテオに話し掛けた。そのテオを見る目は何かを見定めるかのように見える。
「えっと。ちょっと殴りすぎたかなーって感じはしたよ?」
「そういうことを聞きたいんじゃない。今日の喧嘩相手はオルクスの息子のウェルトという11歳の騎士見習いだ。そして性格はお前が見ても分かるとおり傲慢で格下だと判断した者には容赦しない。だが、力量はあの歳にしては大したもので13歳相手でも互角に渡り合うことも出来るそうだ」
「そんなに強い人だったのあれ? 特に強そうな印象は受けなかったんだけど」
力関係が分からないままにとにかく優位な体勢を作ってから攻撃してたからそんなに強いとは予想外だったな。
「それはウェルト君が帯刀していなかったことと、お前が奇妙なスキルを持っているからだろうな」
「…スキル? それって分かるものなの?」
勿論これは全員が確認することが出来るかを聞くための嘘だ。俺自身がどんなスキルを手に入れていてどれくらい熟練しているかは知っているが、それを迂闊に話してしまえば下手したら話したくないとこまで話さなきゃいけない気がする…。
「ああ。一応そういったものを示してくれる道具は国に行けば安く売っているな。今度一緒に近くの国に行ってみるか?」
「え!? いいの?」
これは嬉しい話だ。まだ知らないことを学べるチャンスがあるのかもしれない。
父さんは少しだけ微笑みながら頷いた。
「ああ。それにもうそろそろ勇者も召喚されるだろうからそれのお披露目を楽しみにしておくといい。」
勇者を召喚? どういうことだ? いや、それよりもだ。何か附に落ちないんだよな。
「…あ」
「ん? どうしたテオ?」
俺はスキルを利用した行動はしなかったのに何で奇妙なスキルを持った前提で話されてるんだ?
「どうして僕が奇妙なスキルを持っているってことになっているの?」
「お前の腕力と素早さじゃあウェルト君に無傷で勝つことは不可能だからな。少なくとも一発くらいは攻撃を喰らうぞ? それにお前自身何か変な感覚を得たことくらいは分かっているだろう」
父さんはしてやったりとした顔でこちらを見ていた。力も俺からしたら規格外なのに、頭脳勝負もこちらの負けとは…。父さんは一体何者だ? こんな何もない村の住人にしては力も知性も半端ないじゃないか。
「まあ…スキルかどうかは分からないけど、多分これのことかな?」
俺はとうとう観念して苦笑しながら後ろ向きに宙返りした。しかし、普通の宙返りとは違う点がいくらかある。
まず、最高点が高い。逆さになったときの頭の最高点が長身のロイの頭の位置と並ぶ程高く跳んでおり、普通の人が同じことをしてもせいぜい膝の高さまでが限度だろう。
そして、滞空時間が長すぎる。最高点に到達するまでは速い。しかし、落下する速度が重力を半分にしたのではないかと思うほどゆっくりと落ちるのだ。
これが、俺のスキル”軽業”での全力の宙返りだ。だが、これは熟練度が上がったから出来るのであって滞空時間や高さなどは加減により自由にすることは出来る。
俺は体操選手のように両足を揃えて着地してふざけて決めポーズをした。
「こんな感じなんだけど…。これがスキルなの?」
「あ、ああ。変わったスキルだな。それにしても盗賊や暗殺者がしそうな動きだ。見たところ体を軽くするような効果をスキルに見えるな。いや、それとも…」
父さんはさすがにあの高さと滞空時間に驚いた顔を見せていたが、すぐに俺のスキルへの考察を始めた。最早俺が声を掛けても気づきそうにない。まあいいや。さっさと家に戻っておこう。
「それじゃ先に戻っておくよ。父さん」
「足の筋肉にはそれほど影響を受けずにあれほどの高さを跳んだということはこれはスキル自体の特性か…?」
予想通り俺の言葉には気づかなかったようだ。
「ただいまー」
そのまま俺は厨房に行き、夕食の準備をしていた母さんを見つけた。
「母さん。召喚のことについて書かれてある本はこの家にない?」
「一応あるわよ? 魔法書の上級編以上に確か書いてあったわ」
「ありがとう母さん」
「別に良いけど…。召喚に興味を持つなんてテオは学者肌かしら?」
俺は適当に苦笑で誤魔化してからはやる気持ちを押さえつけながら書斎へと向かった。
「…ふう。意外と収穫があったな」
俺は夕食を食べる前後に書斎に篭り、召喚魔法について調べていた。それによって疑問が少し解消された後は少し弾みながら自室へと戻り、ベッドに腰を掛けながら先程の情報の整理をしていた。
ロイの話を聞いた時に召喚というよりも勇者の召喚というところに引っ掛かったのだ。俺が調べた本ではほとんどが、多くの国家を脅かす魔王を打ち倒したのは勇者とその御一行。そしてその勇者の容姿や強さというものが書かれてあるのだが、そのほとんどが黒髪黒目で桁外れな力を持っていたらしい。その時は世界に黒髪黒目の人間なんぞいくらでもいるだろうと思っていたが、その勇者に焦点を絞って調べてみると調べるだけ日本人のような特徴が次々と浮き上がってくる。
つまり勇者の召喚で召喚される勇者はかなりの確立で紛れも無く地球に住む日本人ということになる。
そこで俺が単純にも考えたのはこういうことだ。
――地球の日本人を召喚できるなら俺があちら側に行くことも可能じゃね?
何故このことに気づかなかった俺。ていうか戻れないと思ってたから地球のことも失念していたのに、戻れる可能性があると判明した途端に少し寂しくなってくるって俺どんな思考してんだよ。
だが、魔方陣について調べていてからこの目標がとてつもなく遠い目標だということも分かってる。召喚に使う魔方陣は規模が大きくなればなるほど特別な魔力と特別な道具、そして膨大な魔力が必要となるのだ。だからそれを手に入れることが不可能に近いということは俺にも分かってる。分かってるけれど…
「やっぱ元の世界に帰れる可能性があるなら帰ってみたいよなー」
そう俺がぼやいた時である。俺は自室に入ったときから気づくべきだったのだ。ベッドが少しだけ盛り上がっていることに。
「元の世界って…どういうこと?」
不意に背後から声がすると同時に俺の肩をがっちりと後ろから掴まれた。
「キアーラさん……。なんでここにいるの?」
ゆっくりと振り向くとそこには少し青い顔をしたキアーラが布団の中にいた。
そろそろ書き溜めせないかんー。
テスト期間面倒くさいー(^^;)(泣)




