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煙屋のジャン 〜異世界の塹壕で、僕は今日もタバコを配る〜  作者: mickmick893
第一章 もう一本くれよ
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幕間 煙屋の手帳

次回「直った乗り物と、言えなかった一言」 明日19時10分更新です。

続きが気になったら、ブックマークや下の★で応援していただけると、とても励みになります。

――この世界のこと

ここはフローリア王国。花の国と呼ばれているらしい。

向こうはシュタール帝国。鋼の国。砲弾がやたらと多いのは、たぶんそのせい。

前線はネーベル戦線。霧と煙の区別がつかない。火は手で隠すこと。

魔法がある。戦に使えるほどのものは、貴族だけ。街の人のは、火を少し強くしたり、風を少し起こしたりする程度。

どんな魔法も、心は治せないらしい。

 

――葉

何十枚目かで見つけた。土の匂いの奥に、ほのかに甘い。

乾かしは、鍛冶屋さんに頼む。代金は一本。

 

――鍛冶屋さん

無口。腕が太い。掌から熱い風を出す。本人いわく、魔法のうちに入らない。

来るたびに一本置いていく。黙って吸って、それで終わり。

名前を発音できなかった人。だから、ジャンになった。

 

――ロドリゴ

この世界で、最初に煙を吸った人。

最初の夜、命を拾ってくれた。火は手で隠せ、と教わった。

最近、本数が多い。咳も。

 

――ニコル

はじめての一本で、盛大にむせた。涙目で、もう一本くれと言った。

村に、母さんと、弟と妹が三人。

乗り物を作ってくれと、何度も言う。考えときます、と答えている。

 

――トマ

初めての一本で、煙の輪を浮かべた。上手い。

禁令のあと、一本も吸わなくなった。戦争が終わったら、また吸うと言った。

 

――上官

煙を禁じた人。寡黙。怒鳴ると、雷。

テントの隅に、酒瓶。

タバコは、不味いそうだ。でも、捨てなかった。

夜目が利かない、らしい。

 

――高瀬

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