幕間 煙屋の手帳
次回「直った乗り物と、言えなかった一言」 明日19時10分更新です。
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――この世界のこと
ここはフローリア王国。花の国と呼ばれているらしい。
向こうはシュタール帝国。鋼の国。砲弾がやたらと多いのは、たぶんそのせい。
前線はネーベル戦線。霧と煙の区別がつかない。火は手で隠すこと。
魔法がある。戦に使えるほどのものは、貴族だけ。街の人のは、火を少し強くしたり、風を少し起こしたりする程度。
どんな魔法も、心は治せないらしい。
――葉
何十枚目かで見つけた。土の匂いの奥に、ほのかに甘い。
乾かしは、鍛冶屋さんに頼む。代金は一本。
――鍛冶屋さん
無口。腕が太い。掌から熱い風を出す。本人いわく、魔法のうちに入らない。
来るたびに一本置いていく。黙って吸って、それで終わり。
名前を発音できなかった人。だから、ジャンになった。
――ロドリゴ
この世界で、最初に煙を吸った人。
最初の夜、命を拾ってくれた。火は手で隠せ、と教わった。
最近、本数が多い。咳も。
――ニコル
はじめての一本で、盛大にむせた。涙目で、もう一本くれと言った。
村に、母さんと、弟と妹が三人。
乗り物を作ってくれと、何度も言う。考えときます、と答えている。
――トマ
初めての一本で、煙の輪を浮かべた。上手い。
禁令のあと、一本も吸わなくなった。戦争が終わったら、また吸うと言った。
――上官
煙を禁じた人。寡黙。怒鳴ると、雷。
テントの隅に、酒瓶。
タバコは、不味いそうだ。でも、捨てなかった。
夜目が利かない、らしい。
――高瀬




