第16話 地区大会⑤
――要塞内部――
敵の視界に広がるのは――
通路。
壁。
階層。
分岐。
行き止まり。
設計者の性格の悪さが滲み出た、悪意100%構造。
完全に、完全に――“帰らせる気ゼロの迷宮”であった。
「ふざけるなああああああああああああああああああ!!」
リーダー、絶叫。
「さっきまで砂漠だっただろうが!!
どうなってんだこれ!! 建築許可どこで取った!!」
ピンポンパンポ~ン♪
場違いな、間延びしたチャイムが響く。
「……あ?」
『館内放送です』
「テーマパークかここは!!」
『ただいま、「砂砲殲牢」リフォームキャンペーン実施中です』
「やってる場合か!!」
『施工担当、俺です』
「業者かテメェは!!」
『なお費用は無料です』
「ありがたくねぇよ!! 返品させろ!!」
『返品不可となっております』
「クーリングオフ!! クーリングオフだ!!」
『適用外です』
「クソがああああああああ!!」
次の瞬間、
――ゴゴゴゴゴゴ。
そして出てくる、
――ミニガン。
「……」
「……が、ガトリングガン?」
『訂正します。“やりすぎた兵器”です』
「自己申告でアウト認めんな!!」
さらに。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。
壁。
天井。
床。
斜め。
なんなら後ろの壁からも。
砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、
砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、
砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、
砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、
砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門、砲門。
ガトリングガン以外の銃もある。
「待て待て待て待て待て!!」
「数!! 数がおかしい!! 数学やり直せ!!」
『安心してください』
「何が!?」
『まだ増えます』
「絶望を追加するな!!」
『当施設は超火力至上主義で運営しております』
「経営理念が終わってる!!」
『全砲門――開門』
「だから待てって!! 一回話そう!! 交渉の余地あるだろ!!」
『射撃開始』
「ねぇよなああああああああああああああああ!!」
――ドドドドドドドドドドドドドドド!!
光弾の嵐。
これはもう――災害指定レベル。
「散開!! 散開しろおおおお!!」
判断は正しい。
判断“だけ”は。
――ズンッ!!
「……は?」
通路閉鎖。
「え?」
「ちょ、待っ……今さっきまであった道が……」
「消えたああああああああああああああああああああ!?」
『地形制御も同時運用しております』
「聞いてねぇよ!! 説明書どこだよ!!」
『存在しません』
「クソゲーかよ!! バグ報告どこに出せばいいんだよ!!」
――ガガガガガガガガガガガ!!!
直撃。
相手が吹き飛ぶ。
壁にめり込む。
「多い多い多い多い多い多い!!」
「なんで360度から撃ってくんだよ!!」
『全方位対応型です』
「やめろ!! その親切設計!!」
爆発。
閃光。
衝撃。
ここはリアルの戦場であった。
「これ競技じゃねぇ!! 戦争だろ!! 規約読め!!」
『仕様です』
「仕様で片付けんな!!」
『残り三人です』
「減るの早すぎるだろおおおおおおおおおおお!!」
リーダー、まだ折れない。
すごい。
ほんとにすごい。
精神力だけSランクかもしれない。
「落ち着け!! 結界張れ!! 出口を探せ!! まだ勝てるかもしれない!!」
『出口はありません』
「は?」
『完全密閉構造です』
「はあああああああああああああああああああああ!?」
希望、粉砕。
その瞬間。
――ズドォン!!
上から砲撃。
「上もあんのかよ!! 聞いてねぇぞ!! 天井裏どうなってんだよ!!」
『フルセットプランです』
「フルコース料理みたいに言うな!!」
『残り二人』
「もう帰りたい!! 帰らせて!! 泣くぞ!!」
「まだ試合中だろうがあああ!!」
最後の抵抗。
「壁ごと吹き飛ばすぞ!! これで――」
――ビシィッ!!
「え?」
天井にひび。
そこから、ぬるっと鎖。
「うわああああなんか出てきたああああ!! キモいいいいい!!」
足首を拘束し、巻き付く。
吊り上げる。
ぶらーん。
「え、ちょ、これ何!? 搬送!? 搬送されてる!?」
『上にまいりまーす』
「エレベーターじゃねぇんだよ!!」
その周囲に――
ニュッ。
ニュニュッ。
ニュニュニュニュニュッ。
ニュニュニュニュニュニュニュニュニュニュッ
ニュニュニュニュニュニュニュニュニュニュニュニュニュニュニュッ。
砲口、増殖。
「増えたあああああああああああああああああああ!!」
「さっきより明らかに増えてる!! 増加してる!!」
『超増量キャンペーン中です』
「やめろそのセール!!」
「誰が頼んだああああああああああああああ!!」
『全砲門――』
「え、ちょ待」
「や、無理」
『発射』
「「いやあああああああああああああああああああああああああああ――!!」」
――ドゴォォォォォォォォォォォン!!
………静寂と煙だけが残された。
他は、何も残っていない。
ピーッ!!
『……優勝、第二魔導学園』
「……」
「……」
「……」
数秒の沈黙。
澪、震え声。
「……さ、慧先輩」
「ん?」
「今の、何ですか?」
「要塞作っただけだけど」
「「「「「「だけじゃねぇよ!!」」」」」」
斗真、腹抱えて大爆笑。
「無理無理無理!! あれは無理!! 完全に戦争!! というか災害!!」
伊藤、冷静にトドメを刺す。
「後半、倫理および人道ラインを複数回突破していました」
「ライン何本あったの!?」
「すべて越えました」
「全部!?」
優里先輩、苦笑どころじゃない。
「これは……敵チームがかわいそうね」
柳先輩、遠い目。
「敵チーム、今夜夢に出るだろうな……」
凛、くくっと笑う。
楽しそうに。
いや、完全に楽しんでる。
「でも――」
一拍。
「これで優勝ね」
俺は肩をすくめる。
「まあな」
視線を、空中のウィンドウから外す。
(――決勝。完全勝利)
そして、ぼそっと、
「……やりすぎたか?」
「「「「「「やりすぎだよ!!」」」」」」
即答だった。
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