それでも進む道
──ラストリーフ支部、応接スペース。
ニナ=フレアは、改めて提示された求人票を見つめていた。
「……この職場、待遇は、飛び抜けて良いわけじゃないんですね」
静かに、しかししっかりとした声で言う。
ミーナは、そっとうなずいた。
「はい。でも、働きやすさや人間関係は、私たちが支援した依頼人の中でも、とても評判のいい職場です」
ニナは目を伏せ、考え込む。
「いい場所を探すことも、大事です。でも──」
ミーナは、ゆっくりと言葉を選びながら続けた。
「自分が“いい場所にしていく”っていう選び方も、あるんだと思います」
カミーユが明るい声で続く。
「環境って、“誰かが変えてくれる”ものじゃありませんものね。……まずは、自分が小さな灯をともすことから、かもしれませんわ」
ニナが、ふっと笑った。
「……そうですね。まずは、自分が変わらなきゃ、ですね」
そのとき、後方で控えていたエドリックが、真面目な顔で口を開いた。
「実は僕も、最初はここに配属されたとき、戸惑ったんです。前の部署とは全然雰囲気が違って……でも、皆さんが少しずつ受け入れてくれて、いまはここが“居場所”になりました」
不器用ながら、まっすぐな言葉だった。
ニナの目が、ほんの少しだけ潤む。
「──行ってみます。私、この職場、受けてみます」
ミーナは、ほっとしたように微笑んだ。
「はい。全力でサポートします。安心して、踏み出してください」
にぎやかなギルドの喧騒の中で、
ひとつの、小さな一歩が踏み出された。




