“もっといい場所”を探して
ラストリーフ支部、面談室。
ミーナは、前に座る若い女性を見つめていた。
──ニナ=フレア。
クリエイティブ系職種──資料デザイン補助、イラスト作成サポートなど、柔らかな感性を活かす仕事を続けてきた。
「……でも、どこも待遇が悪くて。もっと、ちゃんと評価してくれる職場が、あるはずなんです」
ニナはきゅっと手を握りしめた。
ミーナは、そっとリストを広げた。
「こちらが、ニナさんのご経歴に合う求人票です」
いずれも、現実的な条件。
飛び抜けて高待遇ではないが、安定した職場だった。
「うーん……。もっと、いいところないんでしょうか」
ニナが不満げに呟く。
そのとき、後ろで聞いていたベイルが、静かに資料を差し出した。
「現行市場データです。クリエイティブ系職種の平均給与、福利厚生の充実度──この地域では、これが相場です」
ぴたり、と空気が張り詰める。
ニナは資料に目を落とし、少しだけ顔を曇らせた。
「業界・業種をまたぐ場合、例えば事務職や商会管理部門なら、条件は多少良くなる可能性もあります。ただし──求められるスキルセットは異なります」
ベイルの無表情な説明に、ニナは言葉を失う。
そのタイミングで、通りかかったヨハンがぼそっと呟いた。
「条件ばっか見て転職して、結局続かなかったやつ、昔いたな。半年持たなかったっけ」
「ヨハンさん、それは……」
ミーナが慌てて制止しかけたが、ニナは静かに笑った。
「……たぶん、私も、そのままだったかもしれません」
ミーナは、そっと前に身を乗り出す。
「完璧な場所なんて、たぶん、どこにもないんです」
ニナが顔を上げる。
「でも、自分が“ここで頑張りたい”って思える場所なら……少しずつ、自分で“いい場所”にしていけると思います」
ミーナの言葉に、ニナの目がわずかに潤んだ。
「──そんなふうに、考えたことなかったです」
ミーナは、優しく微笑んだ。
「焦らなくて大丈夫です。まずは、自分が納得できる場所を、一緒に探しましょう」
ニナは深くうなずいた。
その横顔には、さっきまでの焦りとは違う、静かな決意が宿っていた。




