背中を押す手
数日後、ラストリーフ支部の朝。
ミーナは手に持った伝書を見て、小さく笑った。
(チットさん、今日も最速です)
そこには、土地開発支援団体からの返事が記されていた。
──「面談歓迎。初心者研修制度あり」
(これなら、きっとルークさんにも合うはず)
ミーナは早速、ルークに連絡を取った。
──ギルド応接スペース。
緊張した面持ちで現れたルークを、ミーナが迎える。
「ルークさん、良いお返事をいただきましたよ!」
「えっ……!」
ルークが目を丸くする。
そこへ、チットが翼をたたみながらひょいっと現れた。
「おーっす! 今日も空便、最速記録更新中だぜ!」
「チットさん……!」
「なーに、飛べば見える景色もあるぜ? ま、怖かったらちょっとずつでもいいんだ」
ルークは、その軽い口調に思わず笑ってしまった。
そして、もう一人。
カミーユが、優雅に微笑みながら声をかけた。
「最初の一歩は、きっと小さくてもいいんですのよ。大切なのは、進むことですわ」
ミーナはルークにそっと書類を差し出す。
「面談の日程、調整しました。緊張しても大丈夫。私たちも、ちゃんと後ろで支えていますから」
ルークは、震える手でその書類を受け取った。
──そして、小さく、深く、うなずいた。
「……行ってきます」
その声は、まだ小さかったけれど──確かに、自分の意思で発せられたものだった。
ミーナ、チット、カミーユ。
三人の視線が、静かにルークの背中を押していた。




