表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/66

“資格”があるだけじゃ

朝、ラストリーフ支部。


カウンターには、やや伏し目がちに立つ青年がいた。


「えっと、資格は……あります。けど、働いたことは、なくて……」


ミーナは資料を手に、緊張した面持ちの青年に向き合っていた。


依頼人──ルーク=ネヴァス。

二十歳を少し過ぎたばかりの、細身の若者だった。


その手には立派な資格証明書。

それなのに、声には自信がまるで感じられない。


(ルーク=ネヴァスさん。すごい資格持ってるけど……)


履歴書に記されていたのは──『土地管理士資格取得』。


土地開発や小規模な開拓地の管理を行うための専門資格だ。

取得には相応の努力が必要だったはずだ。


(すごく頑張ってきたんだろうな……でも、怖いんだ)


ミーナは、そっと微笑んだ。


「大丈夫ですよ、ルークさん。まずは、お話から聞かせてくださいね」


「……はい」


「立派な資格をお持ちですね、ルークさん」


ミーナが微笑みかけると、ルークは小さく頷いた。


「はい。でも……現場で働く自信が、まだなくて……」


土地開発の現場。泥臭い交渉、天候との戦い、さまざまな人々との折衝──


机上の資格では測れない現実が、そこにはある。


「大丈夫ですよ」


そっと、隣から声をかけたのはリリアだった。


「最初は誰でも怖いっす☆ でも、動いてみないとわからないこともあるから」


ルークは、まだ不安そうな顔をしている。


──休憩スペース。

リリアとハナミも同席し、サラも無言で湯気の立つカップを差し出した。


「緊張、ほぐしていこっか☆」


リリアが軽く笑う


「……俺、失敗したら、って思うと、怖くて……」


ルークは、ぽつりぽつりと語り始めた。


親から「とにかく資格を取れ」と言われ、必死に勉強したこと。

でも、いざ働こうとすると、自信がないこと。

周りがどんどん先に進んでいくようで、焦ってしまったこと。


ミーナは、静かに耳を傾けた。

リリアも、ハナミも、黙って寄り添う。


「まあ、無理に飛び込む必要はないわよ。でも、立ち止まったままじゃ、景色は変わらないからね」


ハナミの言葉に、ミーナも小さく頷いた。


(資格は、確かに力だ。でも、働くって、それだけじゃない)

(誰かに「大丈夫だよ」って言ってもらえるだけで、踏み出せることもある)


ミーナは、そっとペンを取った。


「ルークさん。あなたが頑張ってきた証は、ちゃんとここにあります」


そう言って、ルークの資格や特技を整理した簡単なプロフィールシートを作る。


「これをベースに、いくつか“働きやすい環境”をご紹介しますね。最初から完璧にやろうとしなくていいんです。一歩一歩、慣れていけば大丈夫ですから」


ルークは、少しだけ顔を上げた。


「……本当に、いいんですか」


「はい。ここは、そういう場所ですから」


(ルークさんに、最初の一歩を踏み出してほしい)


ミーナがにっこり笑うと、ルークも小さく、笑った気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ