彼は見ていた
ラストリーフ支部、夕刻。
カウンターの奥で、リリアがバタバタと走ってきた。
「ミーナちゃん! 支部長! 来客来客ー!」
ミーナ=ルクトリアとアルフォード=グレインが顔を上げると──
カララン、と扉の鈴が鳴いた。
現れたのは、一人の男。
無造作な茶髪、年季の入ったギルド制服。かつてこの支部を支えた、元支部長──
ミーナは思わず駆け寄った。
「ゴルザンさん!」
ゴルザンは、くしゃりと笑った。
「おう。ちょっと有給取れたからな。顔見に来た」
「えっ、有給……!?」
「俺だってたまには休むんだよ」
笑いながら肩をすくめるゴルザン。
アルフォードも歩み寄り、軽く頭を下げた。
「お久しぶりです。……よければ、支部の様子、見ていってください」
ゴルザンは片眉を上げた。
「見たさ。どれだけ荒れてるか、な」
冗談めかして言いながら、支部を一周、ぐるりと見渡す。
職員たちの自然な動き。
受付のリリアとサラも、テンポよく来訪者をさばいている。
ハナミは相変わらず帳簿に目を光らせ、ベイルは端正な記録作業をこなしている。
そして──
ミーナが、仲間たちと自然に言葉を交わしていた。
その光景を、ゴルザンは静かに、静かに見つめた。
「……悪くねぇな」
ぼそりと、呟く。
ミーナが近づき、照れたように笑った。
「まだ、完璧には程遠いですけど」
ゴルザンは、ミーナの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
「上出来だ。よくやったな」
短く、それだけ。
でも、その言葉に、ミーナの胸は熱くなった。
(……認めてもらえたんだ)
その様子を、少し離れた場所からアルフォードも見ていた。
(ラストリーフ支部は──ちゃんと、息を吹き返した)
ただ数字を並べるだけではない。
誰かが誰かを支え、受け止め、歩みを進める場所。
アルフォードは静かに目を閉じ、そして、心の中で小さく呟いた。
(ここを、もっといい場所にしていこう)
窓の外、夕陽が支部全体をやわらかく染め上げていた。




