すれ違いの向こうに
ギルド・ラストリーフ支部、穏やかな朝。
ミーナ=ルクトリアは、職員作業室で資料を整理しながら、ふと支部長室の扉をちらりと見た。
(……そろそろ、ちゃんと向き合わなきゃ)
アルフォード=グレインとの間に流れる、微妙なわだかまり。
支部の空気が変わりつつある今だからこそ、もう一歩、踏み出すべきだとミーナは思っていた。
意を決して、資料を持ったまま支部長室へ向かう。
コンコン、とノックをすると、すぐに「どうぞ」と冷静な声が返った。
扉を開けると、アルフォードはデスクで書類に目を通していた。
「失礼します。こちら、昨日分の案件整理資料です」
「……ありがとう。助かる」
視線が、一瞬だけ交わる。
ぎこちない──けれど、どこか柔らかい空気がそこにあった。
(……ちゃんと、受け取ってくれた)
ミーナは心の中で小さく息をついた。
軽く会釈して退室すると──
カウンター裏で待機していたリリアとサラが、こそこそと顔を寄せ合っていた。
「ねえねえ、ミーナちゃん、支部長と……」
「……うん」
「なんか……仲良くなった?」
リリアがにやにやしながら肘で小突く。
サラは無言で頷きながら、そっとミーナに温かい視線を向けた。
「べ、別に……普通ですよ、普通!」
ミーナは顔を赤らめながら、資料を抱えて逃げるように作業室へ戻った。
──でも、その背中はどこか、軽やかだった。
ほんの少しずつ。
すれ違いの向こうに、確かな光が見えはじめていた。




