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没落ギルドの仕事斡旋人2~辺境支部を支える、小さな物語~  作者: ほたてといか
第四章 観察記録、それは定性的な冒険
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出典不明、それでも正確

書庫の一角、過去案件履歴室。


アルフォード=グレインは、山積みになった古い台帳を前に、ため息をついていた。


そこへ、紙束を抱えたヨハン=ブリッジスが、だるそうな足取りで現れた。


「んー……この依頼人、見たことあるな。二年前、改名して職探しに来たやつだろ」


あくびまじりに、さらりと口にする。


アルフォードは、思わず身を乗り出した。


「出典は?」


即座に問う。


ヨハンは、涼しい顔で肩をすくめた。


「俺の脳内ログだけど? まあ、間違いないよ」


(……根拠なし、か)


アルフォードは、眉間に皺を寄せた。


だが、念のため台帳をめくり、過去の記録を確認する。


──そこには、確かにヨハンの言った通りの履歴が残っていた。


前の支部で懲戒三件、改名後に再就職を試みた記録。


(……本当に、正確だ)


アルフォードは、内心で軽く頭を抱えた。


ヨハンの脳内には、膨大な“支部の過去”が蓄積されている。


だが、それはどこにも正式な形で残されていない。


あくまで、彼個人の記憶頼み。


(……こんな状態では、組織としての再現性がない)


無言で台帳を閉じながら、アルフォードは静かに考えた。


この情報を、個人の脳内に閉じ込めたままにしておくべきではない。


──いつか、外に出す必要がある。


ヨハンは、特別な自覚もなく、再び紙束を抱えて歩き出した。


「んじゃ、俺、履歴更新しとくから。急ぎなら……ま、言ってよ」


手をひらひらと振りながら、適当な調子で去っていく。


その背中を見つめながら、アルフォードは小さく息を吐いた。


(必要な情報は、正しく記録され、共有されるべきだ──)


そんな、当然のはずなのに、これまで気づかなかった常識が、静かに胸に刻まれた。

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