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没落ギルドの仕事斡旋人2~辺境支部を支える、小さな物語~  作者: ほたてといか
第四章 観察記録、それは定性的な冒険
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椅子の並びが、戻ってきてるな

支部の談話室。


アルフォード=グレインは、静かに扉を押し開けた。


静かな午前中の空気の中、椅子と机がきれいに並んでいるのが目に入る。


──かつては、少しずつ乱れていた。


誰かが急ぎ足で通りすぎ、椅子を適当に引きずった跡。


書類や荷物が無造作に置かれ、通路が狭くなっていたこともあった。


だが今は、椅子はきちんとテーブルに収まり、通路もすっきりと開いている。


(……微かな変化だが)


アルフォードは、心の中で小さく頷いた。


その時、談話室の奥で、静かに椅子を直している男の姿を見つけた。


マルコ。


支部の施設管理を担う、無口なドワーフの老職人。


彼は、誰に頼まれるでもなく、ひとつひとつ、椅子の向きを揃え、脚を揃え、微妙な位置調整までしていた。


無駄な動きは一切ない。


気づかれない場所でも、当たり前のように整えている。


アルフォードは、しばらく黙ってその様子を見ていた。


やがて、マルコは椅子の高さをわずかに直しながら、ぽつりと呟いた。


「……椅子の並びが、戻ってきてるな」


その言葉に、アルフォードの胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。


数字には現れない。


報告書にも書かれない。


けれど、たしかに支部には、少しずつ、前とは違う空気が流れ始めている。


誰かが気づき、誰かが動き、誰かが守ろうとしている──


そんな微かな連鎖が、ここにはあった。


アルフォードは、静かに談話室を後にした。


胸の内には、わずかな手応えと、これまでにない確かな希望が宿っていた。

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