空を飛ぶのも、業務です
ギルド中庭、伝書用ポスト前。
アルフォード=グレインは、軽快な羽音に気づいて顔を上げた。
そこにいたのは、チット=スパン。
細身の鳥獣人──支部の伝書使い兼、ギルド間連携担当。
彼は、肩にかけた伝書ポーチを軽く叩きながら、にやりと笑った。
「今日も最速更新狙っちゃいますかね~♪ 空便はスピード命っすから!」
軽口を叩きつつ、次々と伝書を確認していく。
ぱらぱらと手際よく文書を分別し、各支部宛の便箋を素早くまとめる。
「リリア先輩からの急ぎ便、ヨハンさんの履歴更新、あとこれは……っと」
目にも留まらぬ速さで、伝書を小分けし、ポーチに収めていく。
アルフォードは、静かに感心していた。
その時だった。
チットがふいに、アルフォードに向かって声をかけた。
「あ、アルフォード支部長。最近、書類増えすぎっすよ~? 回しきれないっすマジで。……まあ、頑張りますけどね☆」
冗談めかした口調だったが、その背後にある微かな負担感は隠しきれていなかった。
(……現場には、見えない圧力がかかっている)
アルフォードは、無言で頷いた。
チットは軽く肩をすくめ、再び作業に戻る。
そして、次の瞬間──
「わっ、急ぎ便、間に合わなかったーっ!」
ポーチの底から出てきた一通の伝書を見て、顔をしかめた。
「……これ、現場負担確定っすね。先に電話連絡、入れときますわ」
慌てながらも、冷静に対応策を講じるその姿に、アルフォードは小さな驚きを覚えた。
(……即応力。これも、支部を支える力だ)
空を蹴って飛び立つチットを見上げながら、アルフォードは深く息を吐いた。
軽やかに、自由に。
だが、確実に支部の一部として機能している──
それは、彼が初めて目にする“異質な有能さ”だった。




