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没落ギルドの仕事斡旋人2~辺境支部を支える、小さな物語~  作者: ほたてといか
第四章 観察記録、それは定性的な冒険
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書類で決まれば楽でした

支部案件管理室の一角。


アルフォード=グレインは、静かにその様子を観察していた。


担当しているのは、若手職員のエドリック=トーン。


小柄な体を懸命に伸ばしながら、山積みの案件ファイルを分類し、対応状況を次々とチェックしている。


「ええと……マニュアル第十二条、案件進捗確認は三日ごとに記録……よし!」


小さく頷き、ペンを走らせるエドリック。


(……規則通りだ。正確ではある)


アルフォードは、手元の帳簿と付き合わせながら、彼の作業を評価していた。


書類処理はきっちりしている。

ミスもない。


だが──


応対している依頼人たちの表情は、どこか微妙だった。


「ここにサインをお願いします。それから、次回の来訪はこの日時で」


エドリックの声は堅苦しく、マニュアル通り。


依頼人は、戸惑いながら署名し、無言で帰っていった。


(……温度がない)


アルフォードは、胸の奥にわずかな違和感を覚えた。


書類の上では完璧。

けれど、現場で求められているものは、それだけではない。


──その時だった。


近くの棚で、カミーユ=フロリネッタが帳簿の整理をしていた。


彼女は書類を抱えながら、ふとエドリックの背中をちらりと見た。


エドリックも気づいたらしく、一瞬だけそわそわと落ち着かない様子を見せる。


誰にも聞かれないような小声で、ぼそりと呟いた。


「……僕、カミーユさんよりは……先輩なんですが……」


誰に言うでもない、自己確認のような呟き。


しかしカミーユはそれに気づく様子もなく、嬉しそうに新しい案件ファイルを抱えて受付へと戻っていった。


エドリックは、そっとため息をつき、またマニュアルに目を落とす。


(……書類の上では、完璧だが)


アルフォードは、静かに目を閉じた。


現場には、マニュアルには載らない“やりとり”が、確かに存在している。


それを知らなければ、本当の意味で現場を回すことはできない──


そんな予感が、静かに胸を満たしていった。

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