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没落ギルドの仕事斡旋人2~辺境支部を支える、小さな物語~  作者: ほたてといか
第四章 観察記録、それは定性的な冒険
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完璧とは、冷たくて美しい

支部の書庫、帳簿管理室。


アルフォード=グレインは、静かに扉の影から中を覗き込んだ。


そこにいたのは、ベイル=ストレイ。


長身で無表情の文書精霊──帳簿管理担当。


彼は、黙々と帳簿を整理していた。


正確無比な手つきで、書類を一枚一枚確認し、余白やインデントのズレすら許さない。


ぱらり、と帳簿をめくったベイルの指先が、ほんのわずかに止まる。


「……余白が、二ミリ広い」


誰に聞かせるでもなく、淡々と呟く。


次の瞬間、手元から定規を取り出し、正確に余白を修正し始めた。


(……二ミリ……?)


アルフォードは、無意識に額に手をやった。


普通なら気にも留めないような微差。


だが、ベイルにとっては看過できない『乱れ』なのだろう。


無言でペンを走らせ、無駄な動作は一切ない。


書類の山は、驚くべき速度で整えられていく。


ページをめくる音さえ、リズミカルで正確だった。


──それは、ある意味で理想だった。


ミスのない帳簿。

統一された記録。

揺るぎない管理体制。


(……だが)


完璧すぎるその作業に、アルフォードはなぜか、胸の奥に冷たいものを感じた。


暖かさがない。


感情の入り込む隙間すらない。


ベイルの帳簿整理は、機械的でありながら、どこか寂しかった。


(……これが、完璧な支部運営の姿なのか?)


ふと、アルフォードは自問していた。


──完璧であることと、温かみがあることは、必ずしも一致しない。


その事実が、じわりと胸に重くのしかかった。


ベイルは、こちらに一瞥もくれず、淡々と作業を続けていた。


まるで、余白一ミリの誤差さえも、世界から許さないとでも言うかのように。


アルフォードはそっと扉を閉め、静かにその場を離れた。

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