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没落ギルドの仕事斡旋人2~辺境支部を支える、小さな物語~  作者: ほたてといか
第四章 観察記録、それは定性的な冒険
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受付は戦場でしてよ?

支部のカウンターは、朝からにぎわっていた。


リリア=カスカータが冒険者相手に、陽気に笑いながら応対している。


「了解っす☆ あとはこの用紙、サクッと記入お願いしまーす♪」


テンポよく、しかし砕けすぎない絶妙な距離感。


一方、サラ=メルトは無言で隣に立ち、リリアの指示を聞きながら、必要書類を滑らかに手渡していく。


まるで言葉を交わさずとも通じ合っているかのような、完璧な連携だった。


(……回っている)


アルフォード=グレインは、支部の片隅からその様子を観察していた。


リリアは、相手によって器用に口調を変えている。


貴族らしき依頼人には、深々と頭を下げながら、


「いつもお世話になっておりますぅ〜」


と、語尾を柔らかく引き伸ばす。


そして、話している間にサラが無言でペンを差し出し、必要箇所に付箋を貼った書類を手渡す。


冒険者には、逆にフレンドリーな調子で押し切る。


「っすっす、サインだけお願いしまーす☆ 次、番号札もらってね〜」


サラはその間も無言でスタンプを押し、整理券を手渡す。


(この無秩序……いや、違う。これは、秩序だ)


アルフォードは、わずかに目を細めた。


たしかに個々の対応は統一されていない。


だが、客も依頼も滞ることなく流れていく。


誰も戸惑わず、誰も苛立たず。


そこには、言葉にできない“現場の温度”があった。


──そんな時だった。


新しく来た若い依頼人が、ふと感嘆したように言った。


「わあ……ギルドの受付って、すごいんですね」


それに反応したのは、たまたま通りかかったカミーユ=フロリネッタだった。


ぴしっと胸を張り、きらきらした目で力強く言い切る。


「受付は戦場でしてよ! 速さと正確さ、それに優雅さも必要なんですの!」


──なぜか誇らしげだった。


(……優雅さ?)


アルフォードは、密かにツッコミを入れたが、黙っておいた。


リリアがくすっと笑い、サラが隣で小さく、しかし確かに呟いた。


「……うん」


それだけだった。


けれど、その一言が、この支部の受付を支える静かな矜持のように響いた。


(……戦場、か)


アルフォードは、密かに心の中で呟いた。


ここには、書類には載らない秩序が、たしかに存在している。

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