表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/66

だから、一度だけでいいんです

夕方、支部の執務室。


ミーナは、デスクに山積みになった依頼ファイルを見つめながら、深いため息をついた。


アルフォードが導入した新しい斡旋手順。


たしかに、数字上の効率は上がっている。


けれど、どこかで引っかかる感覚が、どうしても消えなかった。


(これで、本当にいいのかな……)


迷っている自分に、苛立ちすら覚える。


そのとき、そっと背中に声がかかった。


「ミーナ先輩」


振り向けば、カミーユが真剣な顔で立っていた。


「先輩なら、大丈夫ですわ」


それだけ言うと、カミーユはぺこりと頭を下げ、また自分の持ち場に戻っていった。


(……カミーユさん)


小さな背中を見送りながら、ミーナは心を決めた。


そして、ファイルを抱えて、支部長室の扉をノックした。


「失礼します」


中にいたアルフォードが、顔を上げる。


「どうかしましたか、副支部長」


ミーナは一歩踏み出し、きゅっとファイルを胸に抱きしめた。


「一度だけ、自分のやり方で、対応させていただきたいんです」


アルフォードは、わずかに眉をひそめた。


「理由は?」


「……数字だけじゃ、見えないこともあると思うからです」


一瞬の沈黙。


アルフォードは目を伏せ、指先で机を軽く叩いた。


「──いいでしょう。ただし、結果はきちんと数字で報告してください」


ミーナは、胸の奥でぱっと光が灯るのを感じた。


「はい!」


元気よく頭を下げて、部屋を出る。


(たった一度でも、いい)


(自分の目で、自分の手で、確かめたい)


支部の廊下を歩きながら、ミーナは心の中で小さく拳を握った。


カウンターでは、リリアとサラが雑談している。


その向こうに、談話室で待つ依頼人たちの姿が見えた。


よし、やろう。


私は、私だから。


人と人を、ちゃんとつなぐために。


ミーナは、まっすぐカウンターへと向かっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ