これってこういうことかしら?
支部の資料室の一角。ミーナはOJTの一環として、カミーユを連れてきていた。
「今日はここで、過去の案件台帳の整理を手伝ってもらいます」
「はいっ! お任せくださいませ!」
キラキラと目を輝かせるカミーユ。
──が、彼女の視線の先には、山のように積み上がった帳簿と書類の束。
「……わあ……本当に、山ですわ!」
カミーユは素直に感嘆の声を上げた。
ミーナは思わず苦笑いする。
(うん、まあ、普通はそうなるよね……)
近くでは、ベイルが無言で机に向かい、黙々と作業していた。
「では、この分類表に従って、仕分けをお願いします。年度と案件種別ごとに分けてください」
ミーナが手渡すと、カミーユは真剣な顔で資料を受け取った。
「……ふむふむ。年度、案件種別、支払記録……なるほど」
最初こそ、ふわふわした返事だったが、資料をめくる手つきは案外しっかりしている。
(おや……?)
ミーナは、カミーユの様子をそっと見守った。
カミーユは、一冊一冊を丁寧にめくりながら、数字や案件名に目を走らせていく。
「この支払い科目、領地経営の収支管理に似てますわね……。この分類なら、年度ごとではなく、プロジェクト単位でまとめたほうが整合性が取りやすいかも……」
小声でそんなことを呟くカミーユ。
ベイルの手がぴたりと止まった。
そして──いつもよりペンの動きが妙に速くなり、ぱたぱたと軽快な音を立て始めた。
(あ……ちょっとテンション上がってる……?)
カミーユはさらに台帳をめくりながら、ふと顔を上げた。
「この分類、支払いコードでインデックス整理してますのね。領地経営でも似た方式を使っていましたわ」
ベイルがほんのわずかに目を細める。
「……理解が早いな」
短く、しかし確かに認めるような声だった。
ミーナは、そのやりとりを見て思わずほっとする。
(テンションは合わないけど……話は通じてる……?)
カミーユはまた一冊、丁寧に台帳をめくりながら、嬉しそうに言った。
「ミーナ先輩! これって、こういうことかしら?」
ミーナは微笑みながら頷く。
「うん、完璧です!」
カミーユは、誇らしげに笑顔を浮かべた。
──が、次の瞬間、ぱらぱらと台帳をめくりながら、何気なく口にする。
「この表紙、もっと華やかに装飾できますかしら? 例えば、金色の縁取りとか、リボンをつけて……」
ベイルの手が、再びぴたりと止まった。
ミーナは慌てて口を挟む。
「あ、あの、実用性重視なんで……!」
ベイルは無言のまま、静かに立ち上がると、書庫の奥へと消えていった。
(……やっぱり合わないのかも)
ミーナは、そっと肩をすくめながら、心の中でため息をついた。




