変わりましたのね、この場所
昼休憩、支部の裏手にある小さな休憩スペース。
ミーナは、ベンチに腰かけて、カミーユと簡単な軽食をとっていた。
二人の膝の上には、リリア特製の手作りサンドイッチ。
「……これ、すごくおいしいですわ!」
カミーユが目を輝かせながらかぶりつく。
「リリアさん、料理も上手なんですよね。何気に支部の裏エースなんです」
ミーナも笑いながらサンドイッチをかじった。
昼間の柔らかな陽射しの下、ようやく少しだけ力を抜ける時間だった。
カミーユは嬉しそうにサンドイッチを頬張ったあと、ふと遠くを見つめた。
「……それにしても」
「はい?」
「ギルドって、なんだか……以前とは少し、空気が違いますのね」
ミーナは一瞬、手を止めた。
「以前、インターンでお世話になったときよりも、なんと申しますか……きちんとしていて、でも、少しだけ、さみしい感じがいたします」
カミーユは、素直な目でこちらを見た。
(……やっぱり、わかるんだ)
ミーナは、胸の奥がチクリと痛むのを感じた。
たしかに、支部は整備された。
業務フローは効率化され、報告ルールも標準化され、朝礼では数字が飛び交うようになった。
一見、きちんと機能している。
でも、どこか、何かが置いてきぼりになっている気がしてならなかった。
「そ、そうかもしれませんね。……支部長も代わって、いろいろ変わったので」
ミーナは笑顔を作って答えた。
カミーユは、サンドイッチを大事そうに手に持ちながら、小さく頷いた。
「でも……わたくし、支部の皆さまが好きですわ。ミーナ先輩も、リリアさんも、ベイルさんも、皆さん素敵ですもの」
その言葉に、ミーナは思わず顔を伏せた。
(……ありがとう)
ふいに吹いた春風が、カミーユの巻き髪をそっと揺らした。
支部は変わった。
けれど、変わらないものも、きっとここにある。
ミーナは、そっと心の中でそう呟いた。
(だから、私も……ちゃんと守らなきゃ)
笑顔を取り戻すために。
もう一度、支部を“居場所”にするために。
「カミーユさん。……午後からも、頑張りましょうね」
「はいっ!」
元気いっぱいに返事をするカミーユに、ミーナも自然と笑顔になった。




