「呪われた人形」の物語
狂人となり果てた人形師ティルグ・ベルヴェルグが遺作につけた名は「クオレマ」。
死を意味する名を与えられたこの人形は、持ち主の三つの願いを叶えた後、その者に必ず呪いをもたらす。
それは安らかなるものか、それとも激しい苦痛を与えるものか、クオレマ自身にもわからない死の呪い。
三つ目を願った強欲な者は必ず死に追いやられる。
その呪いを与えた後、クオレマはしばらくすれば動くことも話すことも意識も魂もないただの人形として眠りにつく。
次の呪いを振りまくためだろうか、この作者もわからない精巧なドールは、欲深き人間の手を渡り歩く。
クオレマが三つ目の願いを聞かず、成就させなければ呪いも降りかからない。
二つまでなら呪いをかけずに願いを叶えることが出来ることをクオレマ自身も知っており、そして死を与えることがなければ人形状態へ戻ることはなく、 自らの意思で動ける時にはあてもない旅をしている。
しかし呪い人形の性か、願いを持つ者の前にクオレマは導かれる。
人形状態のクオレマは、その精巧さから愛好家の間では伝説のような存在として、作者不明にして至上の芸術作品、高価なビスクドールとして扱われている。
やがて持ち主の願いの力で、見知らぬ屋敷で目を覚ましたクオレマは自ら動き、話し、持ち主を驚かす。
願いを持った者にクオレマは必ず忠告をする。
「あなたの願いを二つまで叶えましょう、三つ目は決して願わないでください」
しかし欲深き者は三つ目まで願ってしまい、逃れられない死の力に取り憑かれる。
願われた時点で呪いは成立し、クオレマにはどうすることもできない。
そして願いはどんな形であっても成就するのだった。
こうして長きにわたって著名な富豪や貴族達を死に至らしめ、旅をしてきたクオレマは
その伝説に尾ひれがつき、持っているだけで呪わるという人形として知られることとなる。
大切にされることがなくなった呪い人形は、精巧で美しかった体にも醜い傷がつき、ドールとしての価値をも失う事となった。
それでもティルグ・ベルヴェルグのかけた願いの力によってクオレマは死の化身として、
呪いを振りまく存在としてあり続けなければならなかった。
クオレマが人間と同じ心で悲観や拒絶をしてもその力はそれよりも強い力でクオレマを動かし続け、欲深き人間を探しては死を与えた。




