表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
式神と霊兵  作者: 田中始め
第二章 南北朝編
90/188

0090




 Side:黒金(くろかね)



 「それよりも黒金(くろかね)、お主やってくれたようじゃの?

 執権様は喜んでおられたそうじゃが、まさか護衛の者を切り殺すとは……」


 「父上、あれは護衛の者が悪い。

 あの者は黒金(くろかね)相手に太刀を抜いたのだ。抜かねば殺されておらん。

 武士にも関わらず安易に太刀を抜くのはどうかと思うわ。

 執権様も(たる)んでおると言っておられたぞ」


 「………はぁ、分からんではないがな。

 それに源平の頃と言えば、確かに舐められたら負けよ。それ故にお互いに緊張感があったと伝う。

 相手の面目を汚せば殺し合いは(まぬが)れぬ。だからこそ安易には動かなかったとも」


 「それがいつしか軽々しく争う者が増え、御成敗式目が作られた。

 そして守られるようになったが、安易に太刀を抜く者がおる。

 むしろ抜けば死ぬとなっておった方が、抜く者は少ないのかもしれん」


 「言いたい事は分からぬではない。

 相手が下っ端で己を害する事はできぬと思うから舐めるのだ。

 抜けば殺されると分かっておれば抜く事など絶対にあるまいよ。

 おそらくは黒金(くろかね)の見た目で抜いたのであろうが、愚かに過ぎるのは間違い無い」


 「そもそも黒金(くろかね)のような(わらし)の見た目の者に殺されたのだからして、恥にしかならぬと思うが?

 そう言えば良いとしか思えぬ。実際は真っ二つにされて死んだがな」


 「真っ二つ、か………とんでもないのう。

 当たり前の事だが、人が真っ二つになるなど、そうそうあり得ぬ事ぞ。

 それが出来るという事が既に尋常ではない。やはり伝説の稀人(まれびと)である事は疑いようがないな」


 「とりあえず父上、勉学の合間に黒金(くろかね)から陰陽師の技を習う事にした。

 それならば良かろう?」


 「又太郎。お主、まだそんな事を言うておるのか」


 「父上、陰陽師の技とて知っておるのと知っておらぬのでは違うぞ?

 黒金(くろかね)は霊力というのを感じる事で、相手の居場所を把握しておる。

 これが出来るようになれば不意を打たれる事は無くなるという」


 「まことか?」


 「そうだよ。霊力が感知できるようになれば、霊力のある場所が分かるようになる。

 人は誰でも霊力を持ってるからね、多いか少ないかはあるけどさ。

 でもその霊力の位置が分かれば、それが人の居る位置だから、隠れてても分かるよ」


 「なんと……」


 「という事で、オレは陰陽師の技を習う。

 まあ、実際には陰陽師の技ではなく、大妖怪の技らしいのだが」


 「大妖怪じゃと!?」


 「父上も聞いた事があろう? 京の都には数百年も生きる大妖怪が居ると。

 どうもそれは黒金(くろかね)の知り合いらしい。

 そして源平の頃に黒金(くろかね)は習ったのだそうだ」


 「そうであったか。しかし京の都の大妖怪と繋がりがあるとは思わなんだわ。

 確かじゃが、大妖怪は公家の安倍家と関わりがあったはず……今は土御門家だったかの?」


 「さて? その辺りは詳しく分からん。

 公家の家は山ほどあるからな、詳しくなど覚えてもおらんよ。

 それよりも再び執権様が我が家に来そうなのがな、なんとも言えん」


 「それか。先代様がご立派に勤めを果たされておられれば良かったのだが、晩年はな……」


 「オレ達にすら聞こえてくるほどに酒浸りであったと聞く。

 出家されておられたのに酒を飲むのはどうかと思うが、執権様に物を言えるわけも無し」


 「そうじゃの。

 それはともかくとして、先代様が(まつりごと)をされる様を見ておられぬ今代様は、如何様(いかよう)(まつりごと)をしてよいかが分かられぬのだ。

 仕方があるまいがな」


 「先代様が為されなかったので、見た事も無く分からぬか。それ故に内管領(ないかんれい)外戚(がいせき)が勝手な事を?」


 「勝手と申すな。決まっておる事を、決まっておる通りにやっておるだけじゃ。

 決まりを守っておる事そのものに間違いはない。………間違いはないのだがな」


 「それ以外が出来ぬか。決まり通りに物事を決めるしか出来んとは、これからが不安になる」


 「言うな、我が足利は支える立場じゃ。それだけは忘れてはならん」


 「うむ。それは分かっておる。

 話を戻すが、また来られた場合はどうすればよいのだろうか?」


 「それよ。執権様は(まつりごと)をされておられぬから暇なのだ。

 それ故に色々と出歩かれておられるのであろうが、困ったものよ。

 いきなり来られても歓迎も何も出来んぞ」


 「そうなのだよな。そこはどうしようもあるまい。

 いきなり来られるのだからして、出来る事をするしかないであろう。

 それに何度も来られるかどうかも分からんしな」


 「うむ………それにしても美味そうに食うておるな? 仙太郎も手を出しておるし」


 「いや、それは、その……」


 「仙太郎はこんなものだ。

 見た目とか聞いた事で否定するが、実際には己で確かめてみぬ事には分からぬ。

 にも関わらず、誰ぞから聞いた事を鵜呑(うの)みにする。

 そろそろ己で考えるという事をするべきだ」


 「しております!」


 「であるならば、頭ごなしに否定するな。

 そなたは何でもそうだが、すぐに否と言いすぎなのだ。

 食べてみて美味かったのだろう? それを食いもせずに否定しておったのだぞ」


 「………」


 「大変だねぇ……。余計な事を言わなきゃよかったのに、っていうヤツはよく居るけどさ」


 「お主はお主で好きにしとるのう。

 まあ、悪い事をしておる訳では無いから構わんが……。

 それにしても美味そうじゃな。忌明け(四十九日)まで食えんのが残念でならん」


 「当主は忌明け(四十九日)まで、血の穢れに関わる物を食うてはならんからな。

 これに関しては仕方がないのであろう」


 「そうなの? 誰も気にしないと思うけどね?

 そもそもお肉を食べたところで関係ないと思うし。

 亡くなった人がお肉が好きだったからって、盛大に食べてる人達とか居たけど」


 「それは出家しておらぬ者達であろう。出家したらば穢れは気にせねばならんのだ」


 「ふーん」


 よく分からないなぁ。そんなに気にしないと思うけど。

 だって死んだ人にとっては関わりない事だしね、誰が何を食べるかなんて。


 夕餉が終わったけど、その時には義観さん以外の全員が食べていた。

 美味しかったらしいので良かったけど、肉類はやっぱり良い物が少ないみたいだ。

 売ってるのは売ってるけど、割と高いらしくあんまり食べないとのこと。


 さらに言うと美味しくないんだそうだ。

 夕餉に出した内臓の炒め物も、普通のお肉みたいに臭味が無かったと言ってた。

 影兵みたいに綺麗にできないから当然なんだろうけど、臭いお肉は好きになれないみたいだね。


 僕は昨日と同じ部屋に案内してもらったので、そこで古兵と影兵を出して寝転がる。

 ちょっと早いかもしれないけど眠たくなってきたので、さっさと寝ようっと。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 あれから十日経った。順調に鎌倉近くの妖怪は退治し、お肉も充実してきたよ。

 一日に一度、何かは狩ってくるので途切れる事は無い。

 そして二日目からは僕一人で狩りにも行けるようになった。

 どうやら心配しなくても大丈夫だと思ったみたい。


 又太郎も仙太郎も勉学に励んでいるけど、どちらも息抜きは普通にしている。

 木刀を振ったりしながら剣の練習をするのが息抜きみたい。

 両方とも強いし筋が良いんだってさ。剣術を教えている人がそう言ってた。


 その人は何故か強さを自慢していたので、古兵と戦わせたらボコボコにされて負けてたけどね。

 とはいえ本人は気にしてなかったけど。

 どうやら霊兵で、しかも古の兵に負けたならしかたないって事らしい。


 たまに手合わせを頼まれるから、僕が居る時にはやってるよ。

 当然、古兵が持っているのも木刀だし、相手を殺すのは駄目だと言ってある。

 じゃないと木刀でも人は殺せるからね。


 それにしても戦うの好きだなぁ。

 僕は妖怪と戦ってるから、それだけで十分だよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ