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式神と霊兵  作者: 田中始め
第二章 南北朝編
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 Side:黒金(くろかね)



 「これほどであれば、義経公が味方につけようと思うはずだ。

 というか、霊兵というのは弓を射る者も居るのだな? あの剣を持った者だけかと思っていた」


 「今は全部で五種だね。古兵、猛兵、斬兵、影兵、水兵。

 この五つが使えるけど、水兵が使える様になったのは壇ノ浦からだよ。

 だからつい最近だね」


 「黒金(くろかね)にとってはそうなのだろうが、オレ達からすれば百三十年も前の話だ。

 とはいえ、都には数百年生き続けているという、伝説の大妖怪が居るらしいが……」


 「それって多分だけど葛葉(くずは)の事じゃないかな? 斯明(かくめい)の妻の一人だよ。

 安倍家からの輿入れになってるけど、実は大妖怪だからね。

 もう一人の(つや)は普通に賀茂家の人だけど」


 「という事は、斯明(かくめい)という平民の陰陽師は、公家の家から嫁をもらったという事か?

 そんなバカな事があるか。公家が平民に娘をやるなどあり得まい」


 側仕えの一人がそんな事を言い出したけど、知らないからそう思うんだろうね。


 「それは知らないからそう思うんだよ。

 斯明(かくめい)は平民って事になってるけど、実は有名な陰陽師である芦屋道満(どうまん)の子孫なんだ。

 だから非常に高い霊力を持っているのさ。

 実際、賀茂家や安倍家の御当主様より霊力は上だったからね」


 「それは凄い事なのか?」


 「そうだよ。斯明(かくめい)の霊力は七十八、これは人間の中では一番高かったんだ。

 僕は人間の中で斯明(かくめい)以上の霊力を持っている人を見た事が無い。

 ちなみに最高値は葛葉(くずは)で、霊力は百四十四あったよ」


 「七十八で人間では最高、片や大妖怪は百四十四か。相手にもならんな。

 それでも公家の家から二人も嫁をもらうとは凄いと思うが……」


 「そうなの? 特に公家がどうこうとは無かったよ、そんな付き合いも無かったし。

 ただ安倍家の御当主様が、どこの家も芦屋道満(どうまん)の血筋とは関わりを持ちたいと言ってたっけ?」


 「つまり、それほどに芦屋道満(どうまん)という者は陰陽師として優秀だったという事だな。

 ところで、なぜ霊力というのが数字で分かるのだ?」


 「それは神様の加護の眼を持ってるからだよ。

 僕に加護を与えている神様の一柱は、八意思金神やごころおもいかねのかみ様になる。

 金の眼がそれに当たるんだけど、これで見たら色々と分かるんだ」


 「ほう。だったらオレを見てくれんか? どういう風に見えるのか楽しみだ」


 「兄上! おかしな事になったらどうするのです!!」


 「どうもなるまい。

 そもそも神様が与えられた加護であろう? おかしな事になる方があり得ん。

 それより頼む」


 「はいはい。霊玉も拾ったからいいよ」


 ―――――――――――――――


 足利 又太郎 男 十三歳


 体力・十八

 霊力・十二

 術技・一

 知恵・二十四

 知識・十九

 運勢・普


 今はまだまだじゃのう。とはいえ時はある故に色々と教えてやるとよい。本人が学びたいのであれば符術や式神でも教えてやればどうだ?


 ―――――――――――――――


 僕は神様の眼で()た通りの事を伝える。

 すると又太郎はなぜか喜び始めた。


 「そうだ! 黒金(くろかね)に教えてもらえばいいではないか。

 はははははは、オレも陰陽師の真似事が出来るぞ」


 「兄上、父上がお許しになりませんよ」


 「何を言うておるのだ。

 普段の勉学の間に教えてもらえばよかろう、ならば父上も文句は言われぬ。

 オレも陰陽師のように太刀で妖怪を斬って捨ててくれようぞ!」


 「仮にそれをするにしたって、まずは【霊波】を覚えなきゃ駄目だけどね。

 そこまでは練習、練習、練習だよ。それでいいなら教えてもいい」


 「はははははは、望むところだ!

 妖怪を自ら倒せるようになれば、霊玉を売って適当な物が買えるしな。

 さて、何を買うかな……?」


 「ぬぅ……ズルい! 私も見てくれ! 私だって陰陽師のやっておる程度の事など出来るはずだ!」


 「いや、符術も式神も練習しなきゃ上達しないし、結構大変なんだけどね」


 「いいから、見ろ!!」


 「はいはい」


 ―――――――――――――――


 足利 仙太郎 男 十歳


 体力・十一

 霊力・三

 術技・一

 知恵・三十一

 知識・十

 運勢・普


 知恵が優秀な子供じゃの。しかしこの者、ちょいと考え方が内向きなのだ。おそらくそれは今後も変わるまい


 ―――――――――――――――


 「たった三……。私の霊力はたった三なのか……」


 「仕方ないんじゃない? 大して何かをした訳でもないんだし、鍛えてもいないんじゃこんなものでしょ。

 そもそも体力や霊力なんて鍛えないと強くならないよ」


 「………では黒金(くろかね)を保護した斯明(かくめい)とやらも、単に鍛えて七十八にまでなっただけではないのか?」


 「どんな人でも限界はあるんだ。鍛えても五十までしかいかない人や、三十で止まる人も居る。

 そんな中で斯明(かくめい)は七十八まで上がってたってわけ。

 その後も修練を重ねてたから、最後はどこまで上がったか分からないけどね」


 「なるほど。つまり七十まで上がること自体が、芦屋道満(どうまん)の血筋というわけか」


 「そうだね。京の都には芦屋道満(どうまん)の血筋の女の子も居たけど、その子も十一歳で霊力は五十もあったよ」


 「十一歳でそれか、とんでもないな。

 やはり血筋というのは大きく出るらしい。

 それならば公家の方が芦屋の血筋と関わりを持ちたいと言われるのも納得だ」


 「それより、又太郎達を連れてると動き難くてしょうがない。

 僕一人で動き回っていいかな?」


 「流石にそれは駄目だ。

 黒金(くろかね)が強いのは知っているが、それでも足利家のオレ達が居るからこそ揉め事に巻き込まれていないのだからな」


 「仕方ないな。こうなったら出して確かめるしかないか。

 とりあえず消してっと………<水兵・偽神大蛇>!」


 僕は使った事が無かった新しい霊兵を出してみた。

 その結果、大蛇が全部で十六体も出てきて驚く。

 そして驚いたのは僕だけじゃなかったようで……


 「うわぁ!! だ、だ、だ、大蛇だーーーっ!!!」


 「五月蝿いなぁ、少し静かにしてくれない?

 これも立派な霊兵だから噛みついたりなんてしないよ。

 それより、合身!!」


 水兵を一つに纏める事が出来るのは知っている。頭に浮かんだからね。

 首が一本から八本の大蛇に纏める事が出来るんだけど、十六体も居たらどうなるんだろうと思ったんだ。

 とはいえ結果は予想通りか。


 「や、八つの首の大蛇……。ヤマタノオロチだーーーっ!!」


 「違うって。しかも八俣遠呂智(やまたのおろち)は僕に加護をくれてる神様だよ。

 水神だって事を忘れてない?」


 「そういえばそうだったか。なら何も問題は無いな。

 ところで仙太郎、お前は騒ぎすぎだ。

 ここは人がおらぬからいいが、お前の大きな声では人が寄ってくる。

 見られたら面倒になるのだから、大きな声を出すな」


 「し、しかしですね兄上! こんな大蛇が出てき……消えた」


 「霊兵なんだから出したり消したり出来るに決まってるじゃん。

 又太郎の言う通り騒ぎすぎだよ。少しは落ち着いたら?」


 「………」


 なんだか不機嫌になったみたいだけど、わーわー大きな声を出してたのは自分だろうに。

 それより影兵を全員分出して、と。これで六体。

 残り十体出せる事を考えたら、かなり楽になってるね。


 「とりあえず影兵、小さい馬になって」


 僕がそう指示したので小さい馬になった影兵。

 そしてそこに乗った後に、大きくして完了。

 それを見た又太郎はなぜか目を輝かせ、仙太郎は怯えていた。

 兄弟なのに随分と違うなぁ……


 又太郎がせがむので僕は黒馬に乗せてやり、他の奴らも全員乗せた。

 仙太郎も恐々と乗り、僕は山の方へと黒馬を走らせる。理由は肉を獲る為だ。

 朝餉を食べた時に気付いたんだけど、肉が無かったんだよね。

 


 なので自分で獲ろうと思ったわけだ。

 もう慣れっこだし、子供達の為に獲ってたから。


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