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式神と霊兵  作者: 田中始め
第一章 平安編
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 Side:黒金(くろかね)



 巨大な骸骨も時間が掛かったけど倒せたよ。落ちた霊玉は甲一級だった。

 あれだけ大きな骸骨なら分からなくもない。

 何故か敦盛(あつもり)の首も僕の功になってるんだけど、僕は武士じゃないよ。


 「君が首を落としたのは事実なんだから、ちゃんと受け取らないと駄目さ。

 それに君の霊兵とやらが首桶を持ってるんだから大丈夫だろう。酒にも漬けてあるし」


 「なぜそんな事をしてるのかは知らないけど、とりあえず古兵に持たせれば済むからいいけどね。

 それより首で褒賞とかどうなんだろう?

 僕が殺したのは事実だけど、なんか微妙?

 有名な武士でもないし」


 「それはそうだが、お前が受け取らねばならぬ。

 功は功。他の者が受け取ってはいかんし、他の者が受け取れば恥にしかならん。

 しかも相手はまだ小さな若武者でしかない。

 そのような首を獲ったなど、普通の武士にとっては恥にしかならんわ」


 「そうだの。お主はそれよりも下の歳だ、首をとっても功となる。

 というより、その首を功と出来るのはお主だけ。他の者では無理なのだ。

 それに殺されておるのだからして、せめて功にせねば草葉の陰で怒り狂おうぞ」


 「そっかー……討った以上は功にしないといけないんだね」


 「ああ。そうだ」


 なるほど。功にする為に討ったとなれば、仕方ないって事になるんだろうね。

 ただ無為に殺された訳じゃない、戦って相手の功となった。という事か。

 なかなか厄介な考え方だと思うけど、それでも分かる事は分かるし理解も出来る。


 「さて、平氏も打倒した以上、後は京の都に帰るだけだな。それで我らの勝ちだと言えよう。

 宗盛(むねもり)めは逃がしたが、最も大きいのは三種の神器を奪還できなんだ事だ。

 これは必ず後で言われるぞ」


 「それでも平氏の多くは討ち取ったんです、相当の痛手を与えられたでしょう。

 さらには、もう一つの拠点である屋島まで下がらせる事が出来ました。

 今はこれ以上は無理です」


 「それは分かっている。とはいえ、確実に上から文句が言われると思うとな……。面倒なのだ」


 「まあ、分かりますが、それは総大将が受けなければならんものですからな。仕方ありませんぞ」


 「はぁ………。まあ、とりあえず休んだ後で調べ、それが終わったら京の都に戻る!!」


 「「「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」」」


 僕はゆっくりと休んでおこうっと。

 そこまで時間も掛からず帰る事になるだろうし、これでやっと終わるよ。

 面倒くさかったなぁ、もう。

 とはいえ神様が言ってたのは何だったんだろう? あの巨大骸骨だったのかな?



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 京の都に帰って来れたのでやれやれと思っていたのも束の間、何故か褒美が頼朝名義で送られたりした。

 いちいち受け取りに行かなきゃいけなかったので面倒だったけど、ようやく解放されたよ。


 それ以外にも甲一級だった霊玉を売って、銭を家に入れたりしてもいる。

 正直に言って、僕って金銭があってもあんまり使わないんだよね。

 最近はお肉も自分で狩ってくるし、子供達もそっちの方が喜んでくれるんだ。


 買ってきたお肉はあまり美味しくなかったらしく、五月蝿かったみたい。

 とはいえ僕が居ないと気軽に山にも行けないしね。

 子供達を連れて山には行けないから、そこは諦めてもらったけどさ。


 斯明(かくめい)と一緒に狩りに行くのも久しぶりだったけど、源氏の人達と一緒より気楽だよ。いや、本当。


 源氏の人達についていった時の事は話したけど、色々と思うところもあったみたい。

 特に頼朝が京に来たがらない理由とか。

 葛葉(くずは)も気持ちは分からなくもないって言ってたぐらいだしね。


 そうやって過ごしていると、再び改元があった。

 また? って思ったけど、今度は元暦(げんりゃく)っていうんだってさ。

 もういい加減にしてほしいよ。いったい何度ころころ変えたら気が済むのさ。


 ちなみに源範頼(のりより)はじめ、数人が国司の官位を貰ったんだって。

 何故か義経は貰えてないらしいけど、何かしたのかな? それとも、あいつの性格がバレてて信用されてないとか?


 よく分からないけど、あの時の戦の人達は今分かれているみたいだ。

 土肥と梶原って人は山陽道に、大内と大井って人がそれぞれ伊賀と伊勢に配置されたんだって。

 そして義経は京の都に居る。


 何だか色々としてるらしいけど、僕は知らないし興味も無い。

 そもそもあいつに関わりたくないし、あの笑ってない目を見る気も無い。

 それと、あいつを神様の眼で()たら、未だに成すべき事が終わってないのが分かった。


 だからおそらく何かがあるんだろうと思う。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 今日は元暦(げんりゃく)元年、文月の一日。この日は宗之助(そうのすけ)が訪れた。

 何でも山陽道に行った土肥実平(さねひら)が平氏側に随分と負けているらしく、都の上の人達は動揺しているんだって。


 「平氏を追討しろって言ってたけど、予想外に平氏がしぶといからだよ。

 まさかここまで粘られるとは思ってなかったんだろうね。

 これで平氏が盛り返して京の都に戻ってきたら、今度こそ院を始末するかもしれない。

 そこまで考えているみたいだよ」


 「そうなのか? 幾らなんでもそこまで……」


 「いや、どうも源氏が一ノ谷に攻め込む前、後白河院が「源平に戦をするなという指示をした」。

 という文を平氏にだけ送ってたらしいんだ。それで平氏側は油断していたんだってさ。

 だから大敗したのであって、これは騙し討ちだと怒り心頭なんだよ。平氏側は」


 「そんな事を? それは流石に……」


 「それがさぁ、よくよく聞くと、後白河院が源氏を勝たせる為に勝手にやったらしいんだよね。

 だから源氏も知らない、平氏は騙された。どっちからも「ふざけるな」って事みたいだよ」


 「もしかして源行家みたいな人なの? 後白河院って」


 「「「………」」」


 どうやら誰も何も言えないみたい。という事は間違ってないんだね?

 院が人とか場を引っ掻き回す人って駄目な気がするんだけど、気のせいかな?


 「まあ、それはともかくとして、だから各地の平氏にかなり苦戦してるみたいだよ。源氏は」


 「そうそうに平氏も落ちたりはしないのね。それでも大きな流れは変わらない気がするわ。

 何と言っても東は全く荒れていないんだもの。

 ようするに頼朝の本拠は無傷なのよ。平氏の本拠は荒れてるのに」


 「そこは大きいでしょうね。

 東は完全に頼朝の勢力下になっている以上、これでは平氏が反抗しても難しいでしょう。

 そもそも東は反朝廷が根強いのに」


 「かつて土蜘蛛と称された屈辱もあるのでしょうね。

 東はそう簡単に屈したりはしないわよ。

 怨みと憎しみは忘れない。

 それは源氏だけじゃない、東国の連中も同じよ」


 なんか本当に怨みと憎しみで動いてるって感じだなぁ。

 だからこそ、こんな大きな争いが起きてるんだろうけどね。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 今日は文月の八日。

 いきなり宗之助(そうのすけ)がウチに来て慌てて喋り始めた。

 義経が京の都を出て西に行くって話が正式に決まったのかな?


 「それどころじゃないよ! 伊賀で平氏の残党が叛乱を起こした。首謀者は平田家継ってヤツ。

 それだけじゃなく、伊勢でも平信兼(のぶかね)が鈴鹿山で謀反を起こしたんだってさ。

 この事に源氏まで大慌てだよ」


 「源氏に下っていた平氏が叛乱を起こしたってわけね。

 ここ最近は西で連勝しているもの、やはり平氏に勢いありと思ったのでしょう。

 それで蜂起したんでしょうけど………果たして上手くいくのかしら?」


 「それは分からないけど、流れが変わってきたって感じはするよ」


 確かにそんな感じはしなくもないけど、一ノ谷で多くの平氏が討ち死にしている。

 源氏と戦えるだけの人が居るのかな? 戦は人が居ないと難しいよ?


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