0076
Side:黒金
巨大な骸骨も時間が掛かったけど倒せたよ。落ちた霊玉は甲一級だった。
あれだけ大きな骸骨なら分からなくもない。
何故か敦盛の首も僕の功になってるんだけど、僕は武士じゃないよ。
「君が首を落としたのは事実なんだから、ちゃんと受け取らないと駄目さ。
それに君の霊兵とやらが首桶を持ってるんだから大丈夫だろう。酒にも漬けてあるし」
「なぜそんな事をしてるのかは知らないけど、とりあえず古兵に持たせれば済むからいいけどね。
それより首で褒賞とかどうなんだろう?
僕が殺したのは事実だけど、なんか微妙?
有名な武士でもないし」
「それはそうだが、お前が受け取らねばならぬ。
功は功。他の者が受け取ってはいかんし、他の者が受け取れば恥にしかならん。
しかも相手はまだ小さな若武者でしかない。
そのような首を獲ったなど、普通の武士にとっては恥にしかならんわ」
「そうだの。お主はそれよりも下の歳だ、首をとっても功となる。
というより、その首を功と出来るのはお主だけ。他の者では無理なのだ。
それに殺されておるのだからして、せめて功にせねば草葉の陰で怒り狂おうぞ」
「そっかー……討った以上は功にしないといけないんだね」
「ああ。そうだ」
なるほど。功にする為に討ったとなれば、仕方ないって事になるんだろうね。
ただ無為に殺された訳じゃない、戦って相手の功となった。という事か。
なかなか厄介な考え方だと思うけど、それでも分かる事は分かるし理解も出来る。
「さて、平氏も打倒した以上、後は京の都に帰るだけだな。それで我らの勝ちだと言えよう。
宗盛めは逃がしたが、最も大きいのは三種の神器を奪還できなんだ事だ。
これは必ず後で言われるぞ」
「それでも平氏の多くは討ち取ったんです、相当の痛手を与えられたでしょう。
さらには、もう一つの拠点である屋島まで下がらせる事が出来ました。
今はこれ以上は無理です」
「それは分かっている。とはいえ、確実に上から文句が言われると思うとな……。面倒なのだ」
「まあ、分かりますが、それは総大将が受けなければならんものですからな。仕方ありませんぞ」
「はぁ………。まあ、とりあえず休んだ後で調べ、それが終わったら京の都に戻る!!」
「「「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」」」
僕はゆっくりと休んでおこうっと。
そこまで時間も掛からず帰る事になるだろうし、これでやっと終わるよ。
面倒くさかったなぁ、もう。
とはいえ神様が言ってたのは何だったんだろう? あの巨大骸骨だったのかな?
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京の都に帰って来れたのでやれやれと思っていたのも束の間、何故か褒美が頼朝名義で送られたりした。
いちいち受け取りに行かなきゃいけなかったので面倒だったけど、ようやく解放されたよ。
それ以外にも甲一級だった霊玉を売って、銭を家に入れたりしてもいる。
正直に言って、僕って金銭があってもあんまり使わないんだよね。
最近はお肉も自分で狩ってくるし、子供達もそっちの方が喜んでくれるんだ。
買ってきたお肉はあまり美味しくなかったらしく、五月蝿かったみたい。
とはいえ僕が居ないと気軽に山にも行けないしね。
子供達を連れて山には行けないから、そこは諦めてもらったけどさ。
斯明と一緒に狩りに行くのも久しぶりだったけど、源氏の人達と一緒より気楽だよ。いや、本当。
源氏の人達についていった時の事は話したけど、色々と思うところもあったみたい。
特に頼朝が京に来たがらない理由とか。
葛葉も気持ちは分からなくもないって言ってたぐらいだしね。
そうやって過ごしていると、再び改元があった。
また? って思ったけど、今度は元暦っていうんだってさ。
もういい加減にしてほしいよ。いったい何度ころころ変えたら気が済むのさ。
ちなみに源範頼はじめ、数人が国司の官位を貰ったんだって。
何故か義経は貰えてないらしいけど、何かしたのかな? それとも、あいつの性格がバレてて信用されてないとか?
よく分からないけど、あの時の戦の人達は今分かれているみたいだ。
土肥と梶原って人は山陽道に、大内と大井って人がそれぞれ伊賀と伊勢に配置されたんだって。
そして義経は京の都に居る。
何だか色々としてるらしいけど、僕は知らないし興味も無い。
そもそもあいつに関わりたくないし、あの笑ってない目を見る気も無い。
それと、あいつを神様の眼で視たら、未だに成すべき事が終わってないのが分かった。
だからおそらく何かがあるんだろうと思う。
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今日は元暦元年、文月の一日。この日は宗之助が訪れた。
何でも山陽道に行った土肥実平が平氏側に随分と負けているらしく、都の上の人達は動揺しているんだって。
「平氏を追討しろって言ってたけど、予想外に平氏がしぶといからだよ。
まさかここまで粘られるとは思ってなかったんだろうね。
これで平氏が盛り返して京の都に戻ってきたら、今度こそ院を始末するかもしれない。
そこまで考えているみたいだよ」
「そうなのか? 幾らなんでもそこまで……」
「いや、どうも源氏が一ノ谷に攻め込む前、後白河院が「源平に戦をするなという指示をした」。
という文を平氏にだけ送ってたらしいんだ。それで平氏側は油断していたんだってさ。
だから大敗したのであって、これは騙し討ちだと怒り心頭なんだよ。平氏側は」
「そんな事を? それは流石に……」
「それがさぁ、よくよく聞くと、後白河院が源氏を勝たせる為に勝手にやったらしいんだよね。
だから源氏も知らない、平氏は騙された。どっちからも「ふざけるな」って事みたいだよ」
「もしかして源行家みたいな人なの? 後白河院って」
「「「………」」」
どうやら誰も何も言えないみたい。という事は間違ってないんだね?
院が人とか場を引っ掻き回す人って駄目な気がするんだけど、気のせいかな?
「まあ、それはともかくとして、だから各地の平氏にかなり苦戦してるみたいだよ。源氏は」
「そうそうに平氏も落ちたりはしないのね。それでも大きな流れは変わらない気がするわ。
何と言っても東は全く荒れていないんだもの。
ようするに頼朝の本拠は無傷なのよ。平氏の本拠は荒れてるのに」
「そこは大きいでしょうね。
東は完全に頼朝の勢力下になっている以上、これでは平氏が反抗しても難しいでしょう。
そもそも東は反朝廷が根強いのに」
「かつて土蜘蛛と称された屈辱もあるのでしょうね。
東はそう簡単に屈したりはしないわよ。
怨みと憎しみは忘れない。
それは源氏だけじゃない、東国の連中も同じよ」
なんか本当に怨みと憎しみで動いてるって感じだなぁ。
だからこそ、こんな大きな争いが起きてるんだろうけどね。
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今日は文月の八日。
いきなり宗之助がウチに来て慌てて喋り始めた。
義経が京の都を出て西に行くって話が正式に決まったのかな?
「それどころじゃないよ! 伊賀で平氏の残党が叛乱を起こした。首謀者は平田家継ってヤツ。
それだけじゃなく、伊勢でも平信兼が鈴鹿山で謀反を起こしたんだってさ。
この事に源氏まで大慌てだよ」
「源氏に下っていた平氏が叛乱を起こしたってわけね。
ここ最近は西で連勝しているもの、やはり平氏に勢いありと思ったのでしょう。
それで蜂起したんでしょうけど………果たして上手くいくのかしら?」
「それは分からないけど、流れが変わってきたって感じはするよ」
確かにそんな感じはしなくもないけど、一ノ谷で多くの平氏が討ち死にしている。
源氏と戦えるだけの人が居るのかな? 戦は人が居ないと難しいよ?




