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式神と霊兵  作者: 田中始め
第一章 平安編
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0075




 Side:黒金(くろかね)



 「ならば私もこの短刀で勝負してやる! 貴様も馬を降りて勝負せい!!」


 「えー、やだよ。そもそも僕はこの短刀を血で汚す気ないし。

 だいたい綺麗に手入れしてる短刀を、なんで血で汚さなきゃいけないのさ。

 さっさと舟に乗って逃げなよ」


 「なにを言う!? 武士として左様な恥を晒せるか!! 正々堂々と勝負いたせっ!?」


 ズドッ!!


 その時、目の前の人の右足に矢が刺さった。誰かと思ったら、義経の従者だ。

 義経もこっちを見ているけど、いったい何なんだろう? そのままこっちに来るね。


 「おのれー! 一騎打ちの最中だというのに邪魔をするとは、何と恥知らずなのだ! これが源氏どもか!」


 「一騎打ちの作法は武士同士だからこそだ。

 そもそもその子は平民の陰陽師でしかない。その時点で一騎打ちは成立しないね?」


 「なに!? 陰陽師だと!? なぜそのような者がこんな所におるのだ!!」


 「単にどっかの誰かさんに連れて来られたからだよ。僕が来たくて来たわけじゃない」


 「はははははは、確かにそうだね。

 ……さて、申し訳ないんだけど、君には死んでもらおう。平家の者である以上はね?」


 「くそぉ、ならば貴様が私の首を取れ! 横からやってきた者に首を渡すなど御免だ!」


 「だ、そうだよ?」


 「えー、やだ。僕は短刀を汚したくないって言ってるじゃん。

 これ将門から貰った短刀だから、汚したくないんだよ」


 「まさかど……!? もしや平将門様か!?

 なぜお前のような者が、将門様の短刀を持っている!!」


 「京の都に怨霊として出た時に、僕の古兵と戦って成仏したからだよ。

 その時に僕に持って行けって言ってくれたんだ。

 ちなみに他の人が触ると祟られるから気をつけてよ。一度盗もうとしたヤツが呪い殺されたから」


 「そんな危険な事をするか! ならば将門様に勝ったこへいというヤツが、私の首を獲れ!!」


 「仕方ないね。<古兵・勇壮猛夫>!」


 僕は猛兵と影兵を消し、かわりに古兵を呼び出した。

 今はちょうど十体呼んでたから空きが無かったんだよね。

 だから已む無く消したんだけど、ここまで来てたら影兵はもう要らないかな?


 僕が呼び出した古兵を見てビックリする平氏のあつもり。

 でもその後は何かを感じ取ったのか、素直に頭を下げた。

 その瞬間、古兵は首を一閃。その首は下に落ち、首から(おびただ)しい血を噴出する。


 「さて、首を獲ったのだから、勝ち名乗りを挙げないとね」


 「平敦盛(あつもり)の首、獲ったりー?」


 「なぜ疑問に思うような声を出しているのか知らないけど、勝ち名乗りは作法として挙げないといけない」


 「言いたい事は分からなくもないんだけど、そもそも僕は武士じゃないんだよね。

 合戦とかの作法を言われても困るよ」


 「それはそうなん「ドガァァァァァァン!!!」だけど、なんだ!?」


 「大変でございます! あれを!!」


 義経の小物が言うのでそっちをみると、巨大な骸骨が立ち上がっていた。

 そいつは腕を振りながら源氏の軍を吹き飛ばしている。

 腕の一振りで多くの人がやられたみたいだ。


 僕は影兵を全て消し、さらに三体の猛兵を呼び出す。そして一斉に矢を射らせた。

 猛兵の矢は巨大な骸骨に当たるものの、大して傷ついていないというか、骨が壊れても別の骨がくっついて治る。


 「厄介だなぁ。矢が当たっても骨が壊れるだけで、死体から骨を奪ってくっ付けてるよ。

 あいつの周りで人が死ぬと、あいつの骨にされちゃうなぁ……。

 どうやって戦えば勝てるのやら」


 「骨を狙って撃ち続けるしかないんじゃないかい?」


 「それでもいいけど、相当の時間が掛かるよ?

 しかも源氏の人が殺されたら、その人の骨もあいつの物になる。

 逃げるしかないけど、あいつ大き過ぎるんだよねー……。

 あ、そうか、足下を崩せばいいんだ」


 僕は猛兵を一体消し、代わりに斬兵を呼び出す。

 そして将門の短刀を抜くと、斬兵に足を斬るように心で指示を出した。


 「!!!」


 即座に走り出した斬兵は、その大きな剣で巨大な骸骨の足を斬る。

 その結果、巨大骸骨は後ろに倒れる事に。

 多くの味方を巻き込まずに済んだけど、倒れるのを考えてなかった。

 もし前に倒れてたら、多くの人が死んでたよ。危ない、危ない。


 斬兵には引き続き骸骨を斬らせ、僕は猛兵に巨大骸骨への攻撃を続けさせる。

 巨大骸骨は暴れるものの、倒れているのでそこまで危なくは無い。

 しかも倒れたのを機に、多くの源氏は巨大骸骨から離れた。


 平氏は既に舟で逃げたので、残っているのは大半が源氏だ。

 一部の平氏は捕縛されたらしいけど、戦そのものは終わっているみたいだね。

 なら後は巨大骸骨を倒すだけだ。


 「オォォォォォォォォォ!!!」


 「うわぁ! 平氏の怨念か!!!」


 「小さい骸骨が出てきたぞ。陰陽師! 陰陽師はどこだ!?」


 巨大骸骨は自分の周りに小さい骸骨を生み出して、それに源氏の人を襲わせようとしてる。

 僕は猛兵を消して全て斬兵に切り替えた。後は斬兵八体に任せるしかない。

 僕の乗る黒馬と、背中を守る影兵は外せないんだ。

 何をされるか分からないからね。義経が居るし。


 「!!!」


 ドガン!


 「!!!」


 ズドン!


 「!!!」


 ガァン!!


 「「「「「!!!」」」」」


 ドドドドドン!!


 「オォォォォォォォォォ!!!!」


 巨大骸骨に振り下ろされる斬兵の大きな剣。それに拍手喝采な源氏の人達。

 なんというか既に観戦しているだけな気がするんだけど、何をしてるんだろうね?

 まだ残党とか残ってるかもしれないんだから、真面目にしたら?


 「このような所に居ましたか。鵯越(ひよどりごえ)を越えるのは上手くいったようですな。

 今はそれどころではないようですが」


 「実平(さねひら)か、上手くやれたよ。これで兄上に恥ずかしくない報告が出来る。

 流石に色々と手柄を挙げないといけなかったからね。やっとさ」


 「ふむ、それはおめでとうと言っておきましょうか。それはともかく、あれはなんですかな?」


 「分からないよ、急に現れたからね。それよりも小さな骸骨達も出てきた。

 おそらくは妖怪だろうから陰陽師達を集めてくれるかい?

 彼が戦ってくれているが、一人に任せる訳にもいかないだろう」


 「そうですな。しかし……とんでもない力で。

 これが分かっておったから、(わらし)を連れて行くと言われたので?」


 「それはね。後白河院から、京の都にはとても力のある稀人(まれびと)が居るとお聞きしたんだよ。

 平氏の追討があるのは分かっていた、そしてどんな呪術師達が居るか分からない。

 なら頼むのは当然だろう?」


 「ではそのように皆に(しら)せれば良かったのでは?」


 「それで皆が(わらし)を連れて行く事に納得するとでも?」


 「それはないな」


 誰か来たと思ったら、この人は源範頼(のりより)って人だ。

 実はこの人も頼朝の弟らしいんだよね。

 っていうか頼朝の兄弟って九人も居るらしいんだよ、初めて聞いた時にはビックリしたけど。


 そのうち次男は怪我が元で死んでいて、長男は京の都で処刑されたんだってさ。

 ちなみに父親の義朝(よしとも)は誰かに殺されたらしい。

 なんか、表では軽い罪で済ませながら、裏で密かに殺すっていうのが当時あったみたい。


 もしかしたら頼朝はそういう事があったから、京の都が嫌いなんだろうか?

 何故か(かたく)ななまでに京の都に行かないよね、頼朝って。

 不思議に思ってたんだけど、話を聞くと分からなくもないかな?


 っていうか、なかなか終わらないなー。

 それでも骨の数が減ってきたから、頑張れば終わりそうだね。

 ところで源氏の人達はいつまで見てるんだろう? 暇な人多いね。


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