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Side:黒金
今日は睦月の二十二日。
義仲は近江の国の粟津という所まで逃げたらしいけど、そこで頼朝軍の源範頼に討たれて死んだらしい。
最後は顔に矢を受けたそうだ。
結局、最後まで何がしたかったかよく分からない人だったなぁ。
平氏を追討しろって言われたのに負けただけだし、治安を良くするのだって、最後にちょっとしただけ。
なんと言うか、あまりにも残念な人だったと思う。
そんなこの日、家にはどう考えても関わりの無い人が来ている。
っていうか、なんでこの人が居るんだろうね、意味が分からない。
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源 義経 男 二十五歳
体力・二十六
霊力・九
術技・二
知恵・二十八
知識・二十七
運勢・普
こやつは腹の中と顔が違うヤツじゃ、なので気をつけろ。ただしこの者はそなたを連れていくじゃろう。それには従え。そなたが成すべき事は、その先にある
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神様が言ってきてるけど、こいつに従うの?
ニコニコしてるけど、やたらに笑顔が怪しいんだけどなぁ……。
なんか嫌な感じ。
「それで、私のような平民の家に何か御用でしょうか?」
「いやいや。そのように謙られても困る。
私は源義経。宇治にて兄上の敵であった志田義広を打ち破り、何とか京の都に来た坂東武者でしかありませぬよ。
それより………そこな黒と金の目の者が稀人ですかな?」
「はあ、そうですが……」
斯明は物凄く警戒してるね。
僕も警戒するのはよく分かるけど、そもそも神様が連れて行くと言っている以上、僕は連れて行かれるんだろう。
神様もついていけって言ってる以上、ついていくんだけどね。
「実はですね。このままだとおそらく、我々は平氏の追討を任じられると思うのです。
そこで、平氏からの呪いを防ぐ為に稀人に合力していただきたいと思いましてな」
「そもそも見ての通り、黒金はまだ幼子のような歳。
戦に連れて行くなど……」
「大丈夫でしょう。
なんでも黒い馬を出せるそうではありませぬか、聞いておりまするぞ?」
その言葉に斯明は渋面をした。
といっても黒馬が出せる事は、多くの町の人も知っているから隠せないよ?
斯明は行かせたくないみたいだけど、ここで揉めるのは子供達にとってよくない。
ここは僕から言い出すべきだね。
「そちらの軍についてこいって事でしょ。別にいいけど条件がある」
「ふーん、それは何かな?」
こいつ笑顔だけど目が笑ってない。
神様の言う通り、腹の中で考えてる事と顔が一致しないヤツだ。
こいつの顔は信用に値しないね。
「それは僕だけだってこと。つまり家の人達には何もするな。これが条件」
「はっはっはっはっはっ! そんな事をする訳がないだろう。
では快く引き受けてもらえたようなので、私はこれで失礼」
僕を連れて行けると思ったからか、あっさりと帰って行った。
やれやれ、これで斯明達に話せるよ。
「黒金、正気か!? お前は間違いなく戦をさせられるんだぞ」
「それは分かってる。むしろ子供達や皆に手を出される方が問題だよ。
それに神様の眼で視たから連れて行かれるのは分かってた。
神様はあいつと一緒に行けってさ。僕の成すべき事はその先にあるみたい」
「神様がか?」
「なるほど。大相国に憑いていた妖怪を退治するのではなくて、まだこの先にあったのね。
黒金の本当の使命は。
斯明、神がその為に遣わすのが稀人である以上、私達がそれを妨げる事は許されていないわ」
「それは……そうだが………」
「仕方ありません。
その為に黒金が来た以上、私達が止めるのは筋違いという者です。
黒金、立派に成すべき事を成し、そして帰ってきなさい」
「もちろん。それと銭のほとんどは置いていくから使ってよ。
将門の短刀は置いていけないけどね」
「何を言ってるんだ。黒金の銭なんだから、戻ってくるまで置いておくに決まってるだろう。
いつ出発する事になるか分からないが、それまではゆっくりしているといい」
「それにしても黒金の使命とは何なのかしら?
平家を追討する奴らと一緒に行くって事は、そこに関わっているんだと思うのよねえ……」
「おそらくそうだと思うのだが、私も分からないな。
もしかしたら何かしらの大妖怪が出てくるのかもしれん」
「ま、今はまだ居られるのですから、居られる間にたくさん話しましょう。
……そういえば神様の眼で見たって言ってたけど、どうだったの?」
艶が聞いてきたので、僕は神様の眼で視たままを伝えた。
すると、葛葉が思案顔になる。
「神様が気をつけろというくらいだから、あの男は間違いなく相当に性格が悪いわ。
そもそも目が笑っていないのは最初からだったし、碌でもないヤツなのは分かってたけどね。
それでも神様の眼でハッキリ分かるのとは違うわ」
「そのように性格の悪い者に、何故神様はついて行けと申されるのか……。
たとえ使命であったとしても、納得はできんな」
「もう。神様が仰られている以上、何かしらの理由はあります。
おそらくは私達に伝えるものではないのでしょう。
あの男が言っていたように、確かに平氏追討の任が下るのは間違いありません」
「後白河院は平氏の持つ三種の神器を奪還しなくちゃいけないし、公卿や公家もそれを求めてる。
確実に取り戻さないと大きな問題になるからね」
「言っている事は分かるのだが、どこに黒金の関わるところがあるのかというのがなぁ……」
「まあまあ、案外とすぐに終わるかもしれませんし、そこまで悩まれる必要はありませんよ」
そうそう。少なくとも僕は帰ってくるからね。
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今日は睦月の三十日。
予想していた通りに平氏の追討を命じられた義経は、家に来て僕についてくるように言った。
僕は家の外に出ると頼朝軍の人に来るように言われたので行く。どうやら都の外のようだ。
そして、そこに居る人達と待つように言われたので待つ事に。
都の中で顔見せとか色々としなきゃいけないらしく時間が掛かるようだ。
面倒くさいなぁ。
「面倒だな。なんで都のヤツは吉日だとか云々言うんだ? さっさと追っかけて攻めりゃいいだろうに」
「そう言うな。面倒くさい色々は褒賞の為だと思えばいい。
オレちゃ賊じゃねえんだ、だったらこういうのも必要なんだろうさ。
鎌倉におられる方に恥を掻かせるわけにもいくめえ」
「そりゃそうだがよ……。おっと、やっと出てきたか。
それはそうと、このガキはどうすんだ? 歩かせるのか?」
「僕は馬に乗っていくよ。だから気にしないで」
「いや、馬っておめえ……」
僕は影兵を呼び出し、小さな馬にした後に乗って大きくする。
それを見た頼朝軍の人達は一斉に僕から遠ざかる。
むしろ馬がビックリしたらしい。
「な、なんだ!? おめえは! 妖怪か!?」
「違うよ、これは霊兵。ついでに僕は稀人だから、神様の加護があるの。
っていうか都の中では割と知られてるんだけどね?」
「そ、そうか……。いや、まあ、馬があるなら良いんだがな」
「それはそうだが、何でこのガキを連れて行く事になったんだ?」
「知らねえ。九朗様が連れてけって言われたんだから、連れてくしかないだろ。
馬を呼び出して突撃でもさせるんじゃねえの?」
「おっ、それって便利だな。
生きてる馬じゃねえみてえだから、何度でも突撃させられるんじゃねえのか?」
「霊力がもたないから無理だよ。
あくまでも霊力の分しか呼び出せないし、戻るまで時間も掛かるからね。
だからそんな使い方は出来ません」
「そうか。残念だが、そう上手くはいかねえようだな。おっと、オレ達もついていかなきゃいけねえ。行くぞ!」
どうやら、やっと出発するみたいだ。それにしても成すべき事ってなんだろう?




