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式神と霊兵  作者: 田中始め
第一章 平安編
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 Side:黒金(くろかね)



 今日は文月の十四日。

 何故か元号というのが治承から養和っていうのに変わった。

 今年は養和元年なんだそうだ。

 意味が分からないけど、そういうものなんだってさ。


 何でも改元って言うらしいんだけど、何か駄目な事とか嫌な事があったり、院や帝が亡くなったりすると変えるみたい。

 何度聞いても理解できないけど、そうやってきたらしい。なんなんだろうね?


 「黒金(くろかね)が訳の分からないという顔をしているが、そういうものだと思うしかない。

 改元したところで何か変わるのか? というのは昔から言われているさ、でもお上の方がそういうのに五月蝿いのだ」


 「そうなのよねえ。

 平気でおかしな命令を下したり、大相国みたいな事をする癖に吉凶を貴ぶのよ。

 まず、おかしな事をするのを止めなさいよ、としか思わないわ」


 「あの方々はねえ……本当にどうかしてると思う。改元しただけで良くなるなら誰も苦労はしないわ。

 飢饉だって改元したりするのよ。無駄に銭も掛かったりなどするのに……」


 「本当に意味が分からないね。なんで、そんな事をするんだろう?」


 そうものだって言われたけど、納得できないってところはあるんだよね。

 色々と日の本で起こっている時に、そんな暢気(のんき)な事をして何になるのさ。

 本当に分からないよ。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 今日は葉月の一日だ。つまり八月。

 暑い時季だけど、子供達は元気だなぁ。といっても僕も元気だけどね。

 それはともかく宗之助(そうのすけ)が来たから話があるんだと思う。

 今度は頼朝かな?


 「今日来たのは北陸の話だよ。源義仲が越後の城氏を破った話。

 城氏は逃亡したけど、逃げ帰った越後でも離反が相次いで、奥州は会津まで逃げたんだってさ」


 「奥州ねえ。また随分と遠くまで逃げたものだけど、奥州は奥州藤原氏のお膝元でしょ。

 平氏方なら匿ってもらえると思ったのかしら?」


 「残念だけど奥州藤原氏からも攻撃を受けて、また別の場所へ逃げてったらしいよ。

 それがどこかは分からないけど、再起の目は無いだろうってさ」


 「あらら……一度落ちると、とことんまで落ちていくわねえ。

 本当に気の毒と思うけれど、今までが今までだもの、あまり同情も出来ない人物なのだと思うわ。

 平氏方だし」


 「義仲は越後に入って在地の者達を味方につけたみたいだね。

 それで北陸の連中が反平家に名乗りを上げてるよ。

 今までの不満が北陸で火を噴いてる。

 あっちでも止まらなくなったみたいだ」


 「北陸もか……。もはや、どこへ行こうと止まらんな。

 ここまで反平家になったら早々に鎮圧など無理であろう。

 そもそも大相国が亡くなった時点で鎮圧など無理であろうが」


 「だろうね。なんたって加賀の国や能登の国でも蜂起したらしいし、それは越前にまで伝わったみたい。

 まだ動きにはなってないけど、既に不穏な状況にはなってるんだってさ」


 「そういえば少し前に城とかいうヤツに<越後守>の官職を与えたとか言ってたわね?

 それって何かの効果があったのかしら?」


 「多分だが、何も無かったのであろうな。

 既に城氏がほぼ没落してしまっておる今、平氏が官職でお墨付きを与えても……」


 「意味ないよねー。だって負けて逃げて、逃げた先でまた負けたんだし。

 その人って今も戦えるのかな? もう無理じゃない?」


 「無理でしょうね。

 負けて逃亡、離反が相次いで逃亡、逃げた先で負けて逃亡よ?

 付き従う者が居ても、残念ながら極僅かでしょう。

 勝ちの目の無い者についていく物好きは多くないわ」


 「だろうね。まだ生きてるのか死んでるのかは知らないけど、浮き上がるのは無理だと思うよ」


 負けたら終わりかぁ。とはいえ仮に勝っても攻められるだけだろうし、結局は駄目だったんじゃないかな?



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ここ最近は平氏に呼ばれる事が増えた。

 僕一人で行って依頼を受ける事も増えたけど、理由は呪いを解く事だ。

 僕は平氏や源氏に限らず、呪いを解く仕事は受けている。

 理由は呪いというのを使うのは良くないと思っているからだ。


 でも世には呪術師が居て、そいつらが誰かを呪って殺したり体を悪くしたりしている。

 そんな事をするぐらいなら戦をするなり一騎打ちで戦えばいいのに、どうして呪いを使うんだろうか?


 今日も平氏の家に行って呪いを返し、謝礼を受け取ったので家に帰る。

 そんな時、僕は賊に襲われた。けど、相手にならなかったね。


 「ゆ、許してくれ……。オレたちゃ、あんたを襲えって言われただけなんだ。頼む、許してくれ」


 「どうせ源氏の人でしょ。

 昔は助けてあげたら喜んでた癖に、今は呪いを使って悪さをしてる。

 いい加減にしてほしいよね。やってる事は平氏と同じじゃないか。

 まあ、それはともかく、殺せ」


 「!!!」


 ザシュッ!!


 「さてと、影兵を出して死体を外に捨てて来ないといけないな。

 賊が多いから、影兵一体で二人持ってもらおう」


 僕は影兵を熊のような姿にし、両腕で死体を一体ずつ抱えさせて歩かせる。

 こんな姿も京の都の人達にとっては当たり前になっていて、誰も驚かなくなった。

 また稀人(まれびと)を襲った賊が殺されたと思われてるだけだ。


 都の人も分かってる。

 平氏が落ちてようやくマシになるかと思ったら、源氏のやる事も変わらないって。

 結局、自分達が強くなったら同じ事をするんだよ。

 だからか源氏の名前も良くは思われてないんだよね。


 なんでそんな事をするのか知らないけど、平氏と同じ事をしたら嫌われるに決まってるじゃん。

 何故分からないんだろう、不思議で仕方がない。僕には理解できないよ。


 そのまま移動していると僕の後ろをつけてくる者達が居た。

 僕は霊力を感じているから気付いているけど、まずは死体を都の外に捨てるのが先だ。


 都の外まで来て歩いていくと、後ろからつけて来ていた奴等が襲ってきた。

 その瞬間、影兵は死体を下ろし、新たに襲ってきた奴らを殺す。

 腕の一振りで首が千切れ飛んでったよ。流石は熊型だと思うも、それが元々の影兵なんだよね。


 「くそっ! 我ら源氏の邪魔をする餓鬼めが!! さっさと殺せ!!」


 「霊兵、皆殺しにしろ」


 「「「「「「「「!!!」」」」」」」」


 ズドォッ! ゴシャッ! ドゴォッ! ザシュッ!


 古兵と影兵があっと言う間に皆殺しにしたけど、源氏に襲われるのも一度や二度じゃない。

 今までにも何度かあるんだよね。本当に自分勝手な連中だよ。

 かつては虐げられていたから同情もあったけど、平氏と同じ奴らでしかない。


 平氏を怨むのは好きにすればいいけど、それとこれとは別だろうに。呪いを使うなって言ってるんだよ。

 にも関わらず呪術師を使ってなんとかしようとする。

 源氏はいつから武士じゃなく呪術師になったんだろうね?


 「おのれ、クソ餓鬼がぁっ!!!」


 「お止めくだされ! これ以上はいけませぬ!! お止めくだされ!!!」


 僕は誰かがまだ残っていると分かってたから、あえてブツブツと文句を言ってたんだよ。聞こえるようにしてね。

 あいつが賊とかに襲わせていたヤツなんだろうけど、やってる事は平氏ソックリのヤツだ。話にならない。


 僕は影兵に更なる死体を持たせて都の外に行き、全ての死体を穴を掘って埋めた。

 その際に影兵に吸わせていた血も捨てている。

 血を吸って溜めておける事が分かってから、片付けも綺麗に出来る様になったんだよ。


 おかげで本当に楽になったんだよねー。さて、終わった、終わった。

 平氏と同じヤツなんてどうでもいいから、さっさと帰ろうっと。

 むしろ、ああいう事をしているから源氏の名も落ちてるのにね。

 その事すら分かってない。


 既に京の都の多くの人から呆れられてるのに、それすら目に入らないみたいなんだよ、あいつら。

 本当の意味で平氏と変わらないと思う。


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