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Side:黒金
何故か女性に連れられて、僕と斯明は京の都の上京に来ている。
場所は右京の上辺で、冷泉小路の少し北だ。
大内裏という所には無いらしい。
言われてもサッパリ分からないけど。
そんな中央の陰陽寮は大きく、斯明の家が六つくらい入りそうな見た目だ。
そして奥にも広いみたい。
斯明の家何個分なんだろう?
「ぷくくくくくく………」
「いや、私の家はあばら家だが、そういう言い方は止めてくれんか?」
「?」
「童は理解しておらぬようですよ。
斯明がわざとあばら家に住んでいる事を」
「いえ、私は別にわざと済んでいる「隠せるとお思いで?」訳では………」
「賀茂家が調べれば京の都の事などあっさりと分かる。
斯明がわざとあばら家に住んでいる事も、派手にわざと散財している事も知っていますよ。
銭を持っているとなれば、どんなやっかみを受けるか分かりませんからね」
「………」
斯明は実は銭を沢山持っているらしい。でもそれを隠している。
危ないからだそうだけど、本当にそれだけかな? 何か違う気がする。
「そこの童も、ただ隠しているだけだとは思って「黒金」おらぬ様子」
「僕の名前は黒金。わらしという名前じゃない」
「あらら、伝わってない? まあ、いいけれど、黒金ね?
童というのは子供という意味の言葉よ。
貴方の名前も知らなかったから、そう呼んでいただけ」
「成る程。わらしは子供の意味……」
「不思議な子ね?」
「ちょっと縁がありましてな。今は我が家で共に暮らしておりまする」
「そう……」
何か気になる話だったのかな? 急に黙って陰陽寮の扉を開けたけど。
というか大きな木の門扉があるのに、それは開けずに横の壁に付いている小さな扉から入った。
あの大きな木の門扉に意味はあるのかな?
中に入るとさっきまで居た陰陽寮と変わらない感じだね。
とりあえず石の上にある板の所に腰を下ろして、サンダルを脱ぐみたい。
僕も脱いで斯明のサンダルの横に置いておき、一緒に奥へと進んで行く。
奥に進んで行くと人が沢山居るのか、色々な話し声が聞こえてきた。
よく分からないまま進んでいると、何やら廊下をこちらに来る人が居て、女性や斯明が端に寄ったので僕も寄る。
すると先頭のヤツが立ち止まって話しかけてきた。
「いったいここに何をしに来たのだ? お前のような浅薄な者が来る所ではないぞ」
「斯明殿は我が賀茂家の御当主様の命により呼ばれましたの? 芦屋如きが賀茂家に口を出すと?」
「い、いや、そういう訳ではない。
修行も半端にしかしておらぬ者が、なぜ中央に来たのか気になっただけじゃ」
「修行が中途半端になったのは、何処かの者が実力に嫉妬して放逐したからでは?
そうでしたよねえ、芦屋道丹殿?」
「………」 「「「………」」」
あしやどうたんって言われた醜い顔のヤツが女性を睨んでいるし、その後ろに居る怪しい奴らも睨んでいる。
でも女性は涼しい顔をしてるね。
どうやら沢山の男に睨まれても効いていないらしい。凄い人だ。
それはともかく、またもや目が五月蝿い。
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道丹 男 五十五歳
体力・十二
霊力・二十八
術技・二十一
知恵・八
知識・十六
運勢・悪
芦屋姓を名乗っているものの、芦屋の一族とは血縁が一切無い。父親が芦屋一族から陰陽術を習い、それを自らも習っただけなので然したる実力も持っていない愚物。下っ端を従えて悪行をするので注意
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……芦屋という家の者じゃないらしい。
勝手に名乗ってるんだろうけど、それって良いのかな?
「なんだこのガキ、ワシを睨んできおって!
目上の者に対する礼儀も知らんのか!!」
ドカッ!!
「あうっ!」
「黒金! 師よ、何故このような事をするのです! 黒金は関係ないでしょう!」
「ふん! たかが平民の分際でワシに楯突く気か? 陰陽師として働けなくしてやってもいいのだぞ?」
「その前に賀茂家が貴方を潰しますが宜しいので? いったい誰の前で物を言っているのやら」
「ふんっ! 行くぞ!!」
いたたたたた、腹が立つからって僕を蹴らなくてもいいだろうに。
何なんだよ、あいつ。嫌なヤツだなー、本当。
後ろの奴らも目つきが悪かったし、ああいうヤツが悪さをするヤツなんだなぁ。
「大丈夫か、黒金?」
「うん、大丈夫」
「まったく、腹いせに童を蹴るなど、野蛮に過ぎる。
本当に芦屋の者かすら怪しい癖に、銭で取り入ったヤツらしいわね」
「流石に黒金に当たるなど、もう許せん。
今までは師という事で我慢してきたが、流石に今度の事で縁を切らせてもらおう。
それにおかしな奴らを侍らせておるし」
「斯明を放逐してから、自分より弱い者達を集めて扱き使っているらしいわね。
だから中央に登録されているけれど、陰陽師の強さとしては下の下でしかないのよ。
っと、それより御当主様がお待ちだから向かいましょうか」
僕は立ち上がり、そして二人についていく。
お腹を蹴られたからかちょっと痛いけど、そんな事を言っていられない。
ちゃんとついていかないと……。
奥にある小さな家? みたいな所に廊下は繋がっていた。
さっきの家から右と左に廊下があって、こっちは左の方だ。
右の方にも家が見えるけど、あそこにも誰か居るのかな?
今進んでいる先にある家に、賀茂家のごとうしゅさまって人が居るらしい。
何故か家の外で座ったので、僕も同じように座る。
家っていうか、離れた部屋かな?
「御当主様。艶でございます。
下命により、斯明殿をお連れ致しました」
「うむ。入るがよい」
「失礼致します」
扉を開けて入ると、その部屋には数人の人達がこっちを見ていた。
奥の方の一段高いところに居るのがごとうしゅさまって人だろう。
渋い感じの男前な人だ。
宗之助とは違う感じだね。
何故か座りながら中に入って行って、その後で頭を下げたね?
僕も真似をするけど、何の意味があるんだろう?
「うむ、頭を上げよ。
斯明、よく来てくれた。
そなたには我が賀茂家から、とある依頼をしたい」
「ハハッ!」
「そこまで固くならずともよい。
そなたに依頼をしたい事は一つ、昨今は上京ですら妖怪が出るようになった。
ここは我らが鎮静しているので問題は無い。
されど下京やその外は荒れ放題となっておる。
その事に主上が大変御心を痛めておられるのだ」
「ハッ!」
「うむ。それでな、そなたには許しを与える故、下京の全域を見回らせたい。
もちろん無理をせよと言っておる訳ではないので、早とちりはせぬようにな。
そなたの出来る範囲で構わぬ」
「かしこまりました」
「うむ。言葉は良くないが、公卿や公家の方々も色々と言って来られる。
それに実際、下京の左京や右京でも妖怪退治はあまり上手くいっておらん。
そなたも知っておるであろうが、ここ最近の様々な事で都も荒れておる所為であろう。
その影響であろうが、妖怪そのものが強くなってしまっておるのだ」
「昨日鬼門の方角より着た餓鬼が、乙一級でございました。
私めも餓鬼の見た目に騙されてしまい、後の事を考えて力を抜いたのが悪く、危うく取り逃がすところでございました」
「餓鬼の見た目で乙一級とは………。
鬼門から来ておるとはいえ、やはり結界が弱まっておる証か。
今一度、結界を強化せねばならんな」
「しかし、御当主様。結界の維持にも霊玉にも銭が掛かりまする。
早々簡単には参りませぬぞ?」
「分かっておる。霊玉は戦にも使われるでな。
あまり売りたくは無いが、平氏と源氏の双方に売って稼ぐしかなかろう。
特に妖怪は京の都を狙っておる。霊玉には事欠かぬからな。
それで何とかするしかあるまい」
「呪術師どもが、また跳梁跋扈しそうですな。
しかし京の都を守る為には致し方ありませぬか……」
「ああ。参内してお許しが出ればだが、すぐに取り掛かる。
安倍家にも根回しをしておかねばならぬし、少々忙しくなるな」
どうやら話は終わりっぽいね。
ずっと座ってるのも大変だったから良かったよ。




