0048
Side:黒金
ここ最近、京の近くの山に出かけているからか、山の妖怪が減った気がする。
もしかしたら山の妖怪が減ったおかげで、京の都でおかしな事は起こらないかもしれない。
僕達は山に行くのを止め、最近は京の都の中で妖怪退治をしている。
「ここも妖怪は減ったね?
何だか京の都の中の妖怪も減ってるし、このままだと儲からないようになるかもしれない。
大丈夫かな?」
「分からんな。
陰陽師の中にも京の都を出た者が居る。
京の都を守るには多くの陰陽師が要るが、彼らも生きていくのに妖怪退治をせねばならんからな。
それにしても急激に減ったのは、私達が山の妖怪を退治し過ぎたからかもしれん」
「そうだね、減らしすぎたかもしれない。
でも僕達が退治したのって山の奴らだけなのに、ここまで減るのかな?」
「他のところから来ていた妖怪が来なくなったのかもしれん。
私達があまりに退治するので、あそこは危険だ……と思って逃げたとしても、おかしくはないだろう?」
「まあ、そうだね。確かに逃げても仕方ないと思う。
妖怪だって勝てない相手からは逃げるからさ。
でも、弱いのは関わりなく襲って来てたのにね。
それも無いって変な話」
「さてな。他のところの方がいいと、そっちに移ったのかもしれん。
どのみち京の周りの山に住む妖怪が減ったのはいい事ではある。
ここ最近、随分と色々な事が言われておるからな」
「なんだか平家の悪口を言う人が増えたよね。
平氏の人が居ると絶対に言わないけど、居なくなると途端に言い出してる。
以仁王って人の首が晒されてから凄く増えた」
「あれはな、当然だと思うぞ。
幾らなんでも皇族の方の首を晒すのは明らかに失敗だ。
批判が増えるのは当然だろう、っと、黒金」
「うん」
僕達は平氏っぽい人達が見えたので口を閉じる、いちいち面倒な揉め事とか要らないからね。
そう思っているにも関わらず、何故か話しかけられた。
「貴様らここでいったい何をしている!!」
「私達は陰陽師で、この辺りを見回っております。
妖怪が出ていないか、襲われた者はいないかなど、陰陽師のするべき事を致しておるだけで」
「ほう、そんなガキを連れて陰陽師の真似事な。そんな嘘が通じると思っておるのか!!!」
キンッ!!
男がいきなり太刀を抜いたので、僕はすぐに霊兵を呼ぶ。
最近はこういう平氏が増えたけど、こんな事をするから余計に嫌われるんだよ。
「<古兵・勇壮猛夫>! <斬兵・豪壮武辺>!」
僕は古兵を四体、斬兵を四体呼ぶ。そうして出てきた霊兵を見て、途端に及び腰になる平家の人達。
「あ、あー……この子供はもしかして稀人の?」
「そうでございます」
「そ、そうか………。陰陽師の努め、ご苦労である。ではな」
カチャッ! スタスタスタスタスタスタスタ………
太刀を鞘に納めて足早に去っていった平氏の男達。
それに対して周りの人達が馬鹿にするような顔をしている。
何故か僕の顔も知られていて、神様の加護がある稀人だってバレてるんだよね。
それに平氏や源氏だけじゃなく、公卿や公家という人達まで僕を知ってるんだ。
その所為でたまに面倒くさい事をさせられる。
何かといえば、呪いをどうにかしてくれという事なんだよね。
最初は源氏の家臣だったんだけど、その人が言うには稀人なら治してくれるだろうって事だったみたい。
本当になんとか出来るか分からないけど、とりあえず呼べって話だった。
で、その家に行った僕と斯明は、その家の人の呪いを吸ってたんだけど止まらなかったんだ。
で、僕が黒い眼で見たら、呪いの濃いところが分かったんだよね。
そこに霊力を放つと、その濃いところが外れてどっかに飛んでったんだ。
そしたら呪いが無くなって元気になったのか、その源氏の家臣の人はお礼を言って喜んでくれたよ。
あとでお金も貰えたしね。
呪いを返しただけで、結構貰えたからありがたかった。
その後も呪い返しを頼まれたからしたけど、何故か全部が源氏の人だった。
平氏の人は呪われてないから、平氏が自分達を呪わせてるんだって怒ってたよ、凄く。
僕もそう思うけど、証がないと駄目なんだって。
で、呪いを掛けた呪術師は酷い目に遭ったみたいだって話があった。
なんでも体が真っ黒になったとか、目が片方見えなくなったとか色々。
それでも呪いで死んじゃった人もいるから、生きているだけマシだと思うよ。
だっておかしな死に方をした人もいたらしいんだ。
笑い死にした人とか、全身が痒くなって掻くと痛い人とか、しゃっくりが止まらなくなった人とかね。
他にも悪い夢を見続ける人とか、真っ直ぐ歩けなくなった人とかもいるんだ。
一番面白かったのは、おならが止まらない人かな? すぐに「ブーブー」してたから、誰が呪ったかすぐに分かったよ。
もの凄く恥ずかしそうにしてたけど。
「あれはな。呪術師が悪いにしても、とんでもない呪い返しだと思う。
本来の呪い返しはそのまま返すだけなのだが、黒金の呪い返しは普通とは違うのだろう。
おそらくだが、罪の軽重によって返る呪いが変わっているんじゃないか?」
「うん、僕もそう思う。
なんか色々とおかしいし、呪いってもっとおどろおどろしいものだと思うんだ。
おならが止まらない呪いって、絶対におかしいよ」
「ある意味では破滅するのと変わらん、恐ろしい呪いだと思うがな。
おならが止まらぬなど、まともに生きてはいけまい。
とはいえ、呪いなどを扱うからそうなるのだと言えばそれまでだが」
「僕の方にも呪いが来たけど、神様が降りてからは簡単に返せるようになったよ。
それに呪いを見る事もできるようになったし。
後は蒼いっていう眼だけど、これが何かは分からないままだね」
「そうだな。それに、それだけとは限っていない。
そもそも眼だけとは考えられないと葛葉殿も言っておられたし、私もそうだと思う。
どこに出てくるのかは分からないが、それだけと考えない方がいい」
「そういえば葛葉が言ってたね。
それだけの加護で現人神一歩手前になる事は無いって。
もっと加護を与えている神は多いはずって言ってた。ちょっと恐そうに」
「まあ、恐いだろう。葛葉殿は特に神々の恐ろしさを知っておられるだろうしな。
おっと、そろそろ夕餉の時間だ。家に戻って支度をせねば」
「今日は艶も葛葉もお休みだったね」
「正しくは賀茂家と安倍家で色々とあるらしく、そちらの手伝いだそうだ。
おそらく結界に関わる事だと思うが、私達では何の役にも立てぬからな。
だからこそせめて都の中を見回っておるのだが……」
僕と斯明は家に戻るんだけど、艶と葛葉は大丈夫かな?
でも僕が何かを考えなくても、二人の事だからしっかりやるよね。
家に戻った僕は、少し前に狩っていた熊の肉を取り出して確認する。
最近は影兵の使い方も分かってきて、臭いのの元を吸わせる事も出来るようになった。
影兵は霊兵だから臭いのとか付かないし、消せば無くなるからね。
だからこそ臭いのを山で吸わせて捨ててきてるんだ。
葛葉いわく、本来の熊肉はすっごく臭いんだって。
でも僕が綺麗にした熊肉はそんなに臭くなくて美味しいみたい。
昨日もたっぷり食べてたし。
最近は艶と葛葉が夕餉を食べていくので、意外にお肉の減りが早い。
前は鹿肉だったけど、これも思っている以上に食べられた。
というか、あの二人は多分お肉好きだと思う。
僕が獲ってきて綺麗にしたのだけなんだろうけどさ。
おっと、そんな事を考えてないで、今日は熊肉の味噌鍋だ。
前もこれだったけど、これ美味しいから何度食べても飽きない。
斯明も好きだし。
そろそろお肉を焼いてから煮込もう。楽しみだな。




