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式神と霊兵  作者: 田中始め
第一章 平安編
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0036




 Side:黒金くろかね



 「結構な金銭を持ってたんだねえ……予想以上で驚いた。

 これちょっと数えるのに時間が掛かるから、ゆっくり待っててよ。

 適当にその辺りでくつろいでて」


 陰陽寮の出張所は入ってすぐの所が土で、少し進むと横に大きな石がある。

 そこでサンダルなどを脱ぐんだけど、その向こうが高い床なんだ。

 そして床の少し向こうに戸があって、それを開けた奥が部屋。

 その部屋の中に小さな机があって、今そこで宗之助そうのすけがお金を数えてる。


 机は正座か胡坐を掻かないと足が当たるくらい低い。

 僕なら座るのにちょうど良いくらいの高さかな?

 そして宗之助そうのすけは何かに座っている。

 背中の所に板があるけど、あれは何だろう?


 「宗之助そうのすけが座ってる、それってなに?

 斯明かくめいの家には無いけど」


 「ああ、あれは座椅子だ。

 稀人まれびと炬燵こたつと共に伝えた物だったと思う。

 背もたれにもたれながら座れる物でな、なかなか便利なのだ」


 「へー……。じゃあ、こたつってどんなの?」


 「それは第六天魔王・波旬はじゅんみたいなものよ。

 人々を堕落させると言われてるけど、冬の炬燵は格別でね。

 冬にアレに入っていると出たく無くなるの。

 そういう意味では第六天魔王なのよねえ」


 「だらく……」


 「まあ、炬燵に関しては冬になれば分かる。

 春から秋までは多くの家で机としか使っておらんからな。

 私の家には小さい部屋の方にある」


 「あの字を練習する時に使ってる机?」


 「そうだ。あれが炬燵の一部だな。

 本来はあれに炬燵布団といわれる物を間に挟むように被せるのだが、今は外してある。

 分かりにくいかもしれんが、あの炬燵の中に火鉢を入れて炭団を燃やすのだよ。

 そうすると中が温かいのだ」


 「うーん………何となく分かるかも」


 「数え終わったよ。

 全部で大銀貨が十二枚、小銀貨が二十八枚、大銅貨が五十五枚、小銅貨が三十一枚、大銅板が十二枚、小銅版が二十二枚。

 後、何故かビタ銭が九枚に悪銭が十八枚あったんだけど?」


 「実は私の銭と、私の銭を盗んでいったヤツの銭が混ざってしまっておるのだ。

 私はビタ銭や悪銭など持っていなかったので、そやつの物だろうな」


 「なるほどねえ。

 とりあえず小金板三枚、大銀貨二枚、小銀貨三枚、大銀板二枚、小銀板二枚、大銅貨一枚、小銅貨四枚、大銅板一枚、小銅板二枚だね。

 流石にここではビタ銭と悪銭の交換は出来ないよ」


 そんな事を話している隙に、僕は宗之助そうのすけを確認してみる事にした。

 実は調べた事が無かったんだよね。


 ―――――――――――――――


 賀茂 宗之助 男 二十一歳


 体力・十九

 霊力・四十八

 術技・三十一

 知恵・五十二

 知識・五十四

 運勢・普


 思っておるよりも頭が良いのう、こやつ。なかなか優秀じゃが、ちょいと性格が軽いのは玉に瑕じゃな


 ―――――――――――――――


 「うえっ!? 知恵と知識が高い!!

 しかも葛葉くずは以外で一番知恵が高いよ!!」


 「えっ? ……ああ、宗之助そうのすけの能力か。

 確かに黒金くろかねから聞いた事は無かったな。

 そうか、宗之助そうのすけは知恵が高いのか。

 頭が良いんだな」


 「実際の能力はどうなってるの? 詳しく聞かせてくれる?」


 つやがそう言うので、僕は宗之助そうのすけの能力を説明した。

 すると宗之助そうのすけは呆れた声を出してガックリとしたみたいだ。

 いったい何だろう?


 「こう、今までずっと黙ってきたのに、あっさりとバレるって何だろうね?

 まあ、神様の加護の眼だから仕方ないんだけどさ。

 それにしても……」


 「知恵と知識が私よりも高い………。

 つまり宗之助そうのすけ、貴方やれば出来るんじゃないの!!」


 「いや、兄上がいるじゃないか。私がしゃしゃり出ても誰も得をしないよ。

 そもそも兄上が後継ぎだって決まってるし、私は波風を立てる気は無いんだ。

 それに御当主様はご存知だし」


 「えっ!? 父上は知ってる? ………なるほど、本当に兄上が継承する為なのね。

 言葉は悪いけれど、弟が優秀だとこじれるわ。それは何処の家でも変わらない。

 だからこそワザとやる気の無いフリをしてたのか」


 「仕方がないし、そもそも私は陰陽師としても生きられるからね。

 兄上は私に比べたら陰陽師としての能力は低い。

 ただし陰陽寮で働くには兄上の方が優秀なんだよ。

 だって私はああいう所が嫌いだから」


 「ああ、宗之助そうのすけには合わないだろうな。

 陰陽寮は基本的に陰陽師ではなく、それ以外の職掌が主だ。

 むしろ妖怪退治は安倍あべの晴明はるあき公の活躍から、陰陽寮に一任されるようになったと聞く」


 「そうね。それまでは各所の戦える者が戦っていたわ。

 でも協力関係が無かったからバラバラに戦っていただけだった。

 それが変化したのが百鬼夜行だと聞いたわ。

 もちろん晴明はるあきから」


 「若き安倍あべの晴明はるあき公が活躍なされ、京の百鬼夜行は治まった。

 その功績と強さから、陰陽寮に正式に妖怪退治の職掌が加わったと聞きますからな」


 「実際にそれ以前からも、それ以降も妖怪はいなくならないからねえ。

 私としては儲かるからいいけどさ、バカみたいなヤツも多いから大変だよ。

 っと、とりあえず金銭を取ってくるから待ってて」


 そう言うと宗之助そうのすけは奥に行ったので、僕達はゆっくりと待たせてもらう。

 適当に喋ってたら宗之助そうのすけが戻ってきて、机の上にお金を置いた。

 これが両替かー、確かに随分と少なくなった。これなら持ち運べるね。


 「家に大量の銭を置いておくっていうのは、確かに危ないからねえ。

 なるべく少なくして持ち歩くっていうのは分かるよ。

 一番取られにくいのが、その方法だからさ。

 とはいえウチなんかは金庫を使ってるけど」


 「きんこ?」


 「金属で出来た、大きくて重い箱だよ。

 稀人まれびとが伝えた物で、重くて動かすのが大変なうえに壊せない箱なんだ。

 その御蔭で中に金銭を入れていても盗まれない。

 だって動かせないからね」


 「でも開けたら盗まれるんじゃないの?」


 「金庫には鍵が掛かるようになっていてね、鍵の開け方を知らないと開けられないんだよ。

 これが難しいんだ。覚えるのも大変だし、だから盗人も金庫は狙わないんだ。

 何たって火事になったって中の金銭は無事なぐらいだし」


 「金庫なんて高い物をよく出張所に許したわね? そんな金銭が陰陽寮にあった事が驚きよ」


 「流石に支払いとかをよくするからね。

 誰が持って行くか分からないから、中の者も信用出来ないし。

 だからこそ金庫が必要なんだよ。

 金銭が集まる所に悪党は集まるって言うし」


 「それはね。

 でもそうなると金庫の開け方を知っていると狙われそうじゃない?

 つやの弟なら大丈夫そうだけど」


 「何かあったら助けてくれる人がいるよ。

 斯明かくめいさんもその一人だけどね。

 そうやって信頼を作って、それで助けてもらえるようにする。

 それも出張所を預かる者に必要な事なんだよ」


 「へえ、なるほどねえ。それより霊玉はどうなったの?」


 「そうだ。霊玉を売らなければいけなかったんだ。

 今日はそこまで強い妖怪を倒して……いや、黒金くろかねだけは強い妖怪を倒したんだった」


 「黒金くろかねが?」


 「ええ、ビックリするほど大きな鳥よ。

 葛葉くずは巨屍鳥きょしちょうと言っていたけど、甲八級の鳥だったわ」


 「甲八級!?」


 「そう。僕の眼でたら甲八級って出たから間違いないよ」


 「そ、そりゃ便利な眼だなぁ。

 見ただけで等級が分かるのかぁ……。まあ、いいや。

 一つ一つ等級を調べるから」


 そう言って宗之助そうのすけが取り出したのは、前も使っていたお椀だった。

 あれに水を入れてるけど、いったいあれで何が分かるんだろう?

 あの中に霊玉を入れてるけど……。


 「これは丙八級………次は丙七級……こっちは乙九級。

 なんだか大した事のないヤツばっかりだね?」


 「今日退治したのは飛首ひしゅとか穢鼠えそとかよ?

 私が狼を倒したぐらいかしら?

 それ以外は黒金くろかね巨屍鳥きょしちょうね」


 「ああ、それで大した事がないのか」


 そういえば、あんまり強いのと戦ってないね。


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