0032
Side:黒金
僕が古兵を呼び出すと、再び皆で移動しながら妖怪を探す。
飛首は分からないけど、狼や穢鼠は分かりやすい。
更には屍鳥という妖怪も居た。
これは動物の食べ残しなどを貪るんだそうだ。
「こういうヤツが食べているから、屍骸が残ってなくて綺麗だとも言えるの。
唯その反面、こいつらが力を持つと厄介なのよね。大きくなるか、それとも速くなるか。
どちらでも倒すのが難しくなるわ」
「あんな感じ?」
「そうそうあんな……って、巨屍鳥じゃないの!
何で京の都にあんなのが居るのよ!
黒金、さっさと倒してしまいなさい!!」
「分かった。猛兵、撃ち殺せ!」
「!!!」
猛兵が大きな腐った肉の鳥に矢を放つ。
それなりに離れた所を飛んでたんだけど、猛兵の矢はきょしちょうってヤツに突き刺さった。
でもそれだけで倒す事は出来ていない。くそぅ、一人じゃ駄目かも。
僕はすぐに猛兵を三人出して、四人に矢を撃たせる。これならあの大きな鳥を倒せるはずだ。
「「「「!!!」」」」
トトトトッ!!!
「ぎやぁぁ!!!」
「さすがは巨屍鳥、嫌な声を出すわね。
聞いているだけで気持ち悪くなりそうよ。
これが風骨鳥なら、骨だけだから五月蝿く無いんだけど……」
「すまないが黒金、頑張ってくれ。
あそこまで大きな妖怪だと、烏の式神では対抗できん。
おまけに符術は遠すぎて届かん」
「そもそも大きさで言えば縦に三メートル近くないかしら?
そして横の幅は八メートルぐらいあるわね。
尋常じゃないけど、本当に巨屍鳥の名前は正しいと思うわ。
あんなに大きいなんて」
ドドドドッ!
「がぁぁぁぁ!!?!」
「私も初めて見ましたな。幾らなんでも、あんなに大きな鳥の妖怪が居るとは……」
「あの巨屍鳥は滅多に人里には出て来ないんだけどね?
何故なら山でも敵なんてほぼ無いから。
それにあそこまでの大きさになると、人間を食う必要もなくなるはず」
「山に居るのが普通なら、そう簡単に見ないはずよ。
修験者なら見るでしょうけど、私達は京の都の見回りが主だもの。
……それにしても大きいわねえ。って、近付いてきた!」
ドスドスドスドスッ!
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」
「こっちに突っ込んで来る!?」
「流石にマズい気がするわ。あれだけ大きいからか、簡単に死んでくれない!」
「あの巨屍鳥、普通のヤツより随分と大きいわ!
近付いてきて見ればハッキリと分かるけど!」
「横幅は十メートルを超えてるでしょ! あまりに大きすぎるわ!」
「確実に仕留めろ!!」
「「「「!!!」」」」
ズドドドドォッ!!!
「ぎいゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!!?」
どうやらようやく倒せたようで、大きな鳥が落ちてきた。
僕達は左右に逃げていたから無事だけど、猛兵は矢を射った後なので少し遅れた。
それでも落ちてきた巨屍鳥に当たる事は無いけどね。
ドスーーーーン!!
落ちてきて少し経った後、巨屍鳥は消えて、その場には霊玉が落ちていた。
今まで見た霊玉より大きいな?
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霊玉 等級・甲八級
妖、または妖怪と言われる者の核となっているもの。格が厳密に分かれており、中には霊力が篭もっている。この霊力が強くなり形になったものが妖怪である。ちなみに妖怪に善も悪も無い
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「おおーーーー! この霊玉、甲八級だよ。やったね!」
「甲八級!! 凄いじゃない、なかなか手に入らない級よ、それは!
あれだけ大きいから強いと思ってたけど、まさか甲級の妖怪だったなんてね」
「実際、黒金の猛兵の攻撃をアレだけ耐えてたんだし、むしろ甲級じゃなければおかしいでしょ。
幾ら離れていたといっても、乙級ならもっと簡単に倒せるはずだもの」
「甲が一番良い級なの? その上は無し?」
僕は霊玉を拾いながら訪ねる。すると艶が答えてくれた。
「いいえ、妖怪の格は下から丙級、乙級、甲級、大級となっているわ。
それでも甲級なんて、なかなか出て来ない大物よ。
ちなみに大級は大妖怪とも言われる連中よ。
例えば天狗とか鵺とか土蜘蛛など」
「他にも上の方になると紅葉や大天狗、大嶽丸に仙狸などもそうよ。
後は私もその中に入るかしら。
基本的に大妖怪と言われる者は自分を持っているから、関わると色々と大変になるわ」
「まあ、貴女を見ていたら面倒な人達だというのは分かるわね。
いきなり側室だとか言い出すんだから」
「それは関係ないでしょ。
ともかく、甲級の妖怪の霊玉なんて晴海ちゃんが買い取ってくれるぐらいよ?
早々手に入ったりしないから当然だけど、良い式神が作れるもの」
「そうなんだ。斯明要る? 良い式神が作れるらしいけど」
「いやいや。悪いが私が扱える物を超えているよ。
無理に良い物を使っても強い式神は作れないさ。
まずは身の丈に合った式神作りの練習をしないとな」
「そっか。じゃあ、売ろうっと」
「ええ、そうした方がいいわ。
流石に甲八級ともなれば、結構な額で売れるわよ。
金貨まではいかないけど、金板には届くんじゃない?
妖怪一体で金板はなかなかだけど、それだけ出会う事も多くないからねえ。
運が良かったと思った方が良いわ」
「そうね。あんな大きな妖怪なんて、早々出会えるとは思えないし」
「山に行ったら会えるんじゃないの?」
「どうかしら? 可能性としてはそんなに高くないと思うわよ。
何だかかんだといって修験者達も戦うしね。
まあ、飛んでいる妖怪は厄介だから残っているとは思うけど……山って面倒よ?」
「そうだな。目的地があるならいいが、ただ妖怪を探して入るだけなら止めた方がいい。
迷って出られなくなる」
「食べる物も取れなくなったら飢え死にするしかないからね。
山は恐ろしい所よ。寺とか神社とかあるけど……」
「そう考えれば古い時代の方は、よくあんな所に寺や神社を建てたと思うわ。
まず行くのも嫌なのに、あんな大変な場所に建立するとか……」
「そうねえ。人間の、っと居たわよ」
「臨・兵・闘・者・皆・陳・列・在・前!」
斯明が白い狼を出して黒い狼と戦わせる。
すぐに黒い狼を倒したけど、やっぱり強くなってるね?
短縮で呼び出してないって言っても、前よりも強くなってると思う。
「でないと修行をしてる意味が無いでしょ。
とはいえ斯明の修行はおかしな事になってるのを正したと言うべきだけども」
「それでも強くなっているのは間違い無いですから、如何に今までのやり方が間違っていたか分かるわ。
本当に面倒な事をしてくれたものよ」
僕達は歩きながらも色々と喋りながら移動する。
葛葉が霊力を調べてくれるからいいけど、僕達じゃ一つも見つけられてないよ。
このままだと駄目だから、しっかりと自分で見つけたいなぁ
パッと霊力が分かったりする……わけないね。
僕も修行! なんだけど、霊力については全く分からない。
いったいどうすれば良いんだろうか?
「あのねえ……何度も言っているけれど、そんな簡単に出来る様になったら誰も苦労はしないわよ。
大事なのは、何度も感じようとする事よ。
長く感覚を磨けば分かる様になるわ」
うーん……言ってる事は分かるんだけど、早く出来るようになりたい。
でもやっぱり簡単じゃないみたいだ。
「そうだな。こういう事は焦ってやっても上手くいかないものだ。
修行を続けて、気付いたら出来ていた。というのが一番いい。
誰でも時間が掛かるんだから、出来る人は皆そうしてきたのだろうしな」
成る程、気付いたら出来てたっていうのは楽でいいね。
出来ないと、ずっと「まだかな、まだかな」って思っちゃうし。




