0031
Side:黒金
よく分からない人達の名前は横に置いておき、僕達は色々と話を聞きながら移動していく。
聞いていて分かったけど、妖怪の出やすい場所があるらしい、なのでそこへと行く事にした。
「この辺りのはずなんだけど、今日は居ないのかな?
毎日居る訳じゃないみたいだから、居なかったなら次の場所に行った方がいいね」
「そうだな。
同じ場所でウロウロしていても出てくるとは限らんし、多少の知恵があるなら逃げるだろう。
逃げぬならば、そこまで強い妖怪ではあるまい」
「とりあえずは探すのですが、日中では見つけ難いので難しいかもしれません。
逢魔が時が一番可能性がありますが、それもまた分かりませんしね」
「別に逢魔が時でなくても居るわよ。
ただし貴方達が霊力を感知できないから分からないだけ。
たとえば……」
そう言うと、葛葉は地面の石を拾って、近くに座っていたお爺さんに投げつけた。
ちょっと! 何やってるんだよ!
「大丈夫よ、ほら?」
葛葉がそう言った時、お爺さんの首が体から抜けて空を飛びだした。
なにあれ?
「あれは飛首。ああやって首から上だけの妖怪も居るのよ。
ほら、腕と足が見えなくなったでしょう? あれは飛首が見せていた幻よ。
斯明、さっさと倒してしまいなさい」
「えっ!? お、【鬼火】!!」
斯明が【鬼火】を使ったけど、小さくて青白い炎が飛んだだけだった。
「ぎゅぉぉぉ!!!」
「ちょっと碌に効いてないじゃないの、勿体ない。
ほらほら、もっと集中して使いなさい!」
「すぅ………【鬼火】!」
斯明が今回放った【鬼火】は、結構大きな炎で、それが一直線に飛首へと飛んでいく。
ボォウ!!!
「ぎゅあぁぁぁ!!?!」
「あっ、倒せた」
「飛首はそもそも大して強くない妖怪よ。
ただし力が無い間は人間のフリが上手くてね、なかなか見つけられないの。
わたしみたいに霊力を感じられるなら簡単に分かるんだけど、駄目なら難しいかしらね」
「霊力って普通の人も持ってるよね? 何で人間か妖怪か分かるの?」
「人間と妖怪の霊力は微妙に違うのよ。
分かるようになれば簡単に分かるんだけど、分からない間は無理でしょうね。
ちなみに晴明は妖怪の霊力を<妖力>と呼んでいたわ。
区別する為でしょうけど、根っこは同じものよ」
「成る程ね。とはいえ私もサッパリだし、苦労しそう。
妖怪の霊力が分かれば確かに楽に判別出来るでしょうけど、そんなに簡単なら誰もが出来るわよね?」
「ええ。何度も何度も霊力そのものを感じようと修練するしかないわね。
修験者の中にも出来る者は居るから、修練次第で可能な事よ」
「筋肉が必要………な訳はありませんな。
流石に修験者ほど必要なら諦めるところでした」
「わたしを見れば分かるでしょ。あんな筋骨隆々じゃないわよ」
「いえ、妖怪の方は違うのかなと……」
「晴明だって使えたんだから、そんな事はないわ。
そもそも晴明ってヒョロかったしね。
体の大きさなら斯明の方が明らかに大きいわよ。
晴海ちゃんだって背が低いしヒョロっとしてるでしょ。
あれが晴明だと思えばいいわ」
「そうだったのですか……。なら後は修行のみで何とかなりそうですな」
斯明が倒した妖怪の霊玉を拾ったので、僕達はまたウロウロを始めた。
すると、葛葉がまたもや見つけたようだ。
「あらら、あそこに居る鼠。あれ妖怪よ。
穢鼠というんだけど、アレ霊玉も小さいし弱いのよ。
でも穢れの名の通り、色々な物を穢れさせるから早めに退治したいところね」
「【鬼火】!」
艶が放った【鬼火】はなんだか青色の濃い炎で、それが鼠に向かって飛んで行く。
ゴォウ!!
「ぢゅぁぁぁ!?!?!」
「どのみち鼠だから燃やし尽くして問題ないでしょ」
「それはそうだけど、【鬼火】に霊力を篭めすぎでしょ。
鼠が嫌いなんでしょうけど、あそこまで篭めなくても倒せるわよ。
霊力の無駄遣いは止めなさい」
「なんだろう? まるで実家に居て稽古をつけられている気分」
「それだけ足りていないという事よ。
あんたも賀茂家の者なんだろうけど、まだまだ修行が足りないわね。
バカな男色のヤツが居たけど、ああいうのも黙らせるだけの力を持ちなさい。
なら誰も文句を言わないわよ」
「まあ、それはそうね。
斯明殿と一緒になった事で腕が鈍ったとか言われないようにしないと。
そういう舐めた口をきく奴らを、徹底的に叩き潰せるだけの力を持たなくちゃ」
何か斯明が微妙な顔をしているけど、僕は何も言わない事にした。
何か口を出さない方がいい感じがしたんだ。
それよりも妖怪を探そう。次は僕の番だしね!
「古兵を消してっと……<猛兵・剛射隼人>」
「あれ? 弓を使うのか黒金? 先程の古兵のままで良かったと思うが……」
「さっきの飛首ってヤツだと、剣が届かないかもしれないからね。
弓矢なら飛んでる相手も撃ち落せると思うんだ」
「確かに言われればそうだけど、逆に弓矢じゃ厄介な相手とかだったどうするのかしら?」
「外だから大丈夫じゃない? むしろ厄介なのは近接に強い妖怪でしょうね。
この霊兵は鉈しか持ってないし、どちらかといえば弓兵だし。
そこまで近接戦に強くない可能性があるわ」
大丈夫だと思うんだけど、そう言われると怖いなぁ。
とにかく妖怪を探して歩こう。
僕達は都の外にある家が並んでいる通りをウロウロと移動していく。
ここも都の中みたいに建物が入り組んでいて分かり難い。
だからか家の裏に人が座ってたりしてビックリする。
それと走り回ってる子も居るね。
そんな中に妖怪が居たりするんだから、恐いよ。
どうして妖怪はこんな所に居るんだろう?
「人間というか、陰陽師から隠れやすいからよ。
まだ力の弱い妖怪は積極的に人を襲うけど、反面逃げられる事も多い。
一撃で人間を殺せる訳じゃないからね。
だから駄目だった時に逃げる為、人が多い所に紛れているの」
そうなんだ。弱い妖怪は隠れるのかぁ、見つけにくそう。
霊力を感じられればいいんだけど、それは出来ないし……見つけるのは大変そうだ。
「ん? あれ、狼の妖怪よ。
人を襲おうとしてるわ。早く!」
「危ないから鉈で倒すんだ!」
「!!!」
ダダダダダダダダダダ……ズドッ!
「ギャウン!?!?」
うっ、一撃で倒せなかった。
やっぱり猛兵の持つ鉈はそこまで強くないみたい。
でも矢を放つと強すぎて、襲われそうになってた人が危なかったし……。
「グゥォァッ!!!」
「!!!」
猛兵は狼の噛みつきを鉈で払ったけど、意外な弱点が明るみに出ちゃったな。
しかたない、古兵を……
「!!!」
ドゴッ!
「グギャァッ!?!!」
「おお、何とか鉈で倒せたか。
それにしても、黒金の霊兵はハッキリと決まっている感じだな。
古兵は片手剣、猛兵は弓矢、斬兵は長剣。
それぞれで黒金が使い分けなければいけないという事か」
「うん、そうみたい。
鉈でも倒せると思ってたけど、無理をさせちゃったよ。
素直に古兵も出しておけば良かった」
「まあ、仕方がないわよ。
一度は戦わせてみないと、どれぐらい戦えるか分からないんだしね。
今回分かって良かったわ。
猛兵の弓矢は強力だけど、鉈は狼を一撃で倒せない程度。
それが分かっただけで十分よ。そもそも弓兵なんだし」
「そうね。
そもそも無理に近くで戦わせる必要も無いし、古兵の後ろで矢を射ってくれるのが一番強いわ」
だね。とりあえず霊玉を拾ってから、古兵も呼び出そう。
それが一番いい。




