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式神と霊兵  作者: 田中始め
第一章 平安編
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0026




 Side:黒金くろかね



 変な奴らに絡まれた次の日。

 僕と斯明かくめいは朝餉の後で買い物を済ませる。

 昨日と違って背嚢があるから楽だね。

 それに肉や魚は布に包んで入れれば良いし、古兵に持ってもらえば僕が持つ必要ないし。


 「あまり良い使い方には思えんが、神様は罪や咎でなければ問題ないとされておられるしなぁ。

 まあ、大丈夫なのだろう」


 「荷物を載せるなんて式神でも出来るんだからやればいいのに、なんでしないんだろう?」


 「それは狼などでは人間に危害を加える恐れがある、そう思われるからだ。

 噛みついたりとか色々とな。

 その点、人型であれば文句も言われぬだろう。

 ちなみに<赤鬼>は大き過ぎるから駄目だぞ?」


 成る程、人型で小さければ問題無いんだね。


 「大きさとしては二メートル以上あるからな。強力な赤鬼だと三メートル間近まであるらしい」


 「めーとる?」


 「長さの単位だ。稀人が伝えたもので、長さとか重さの単位とか色々な。

 我が国では適当というか、場所によってズレもあったのだが、全て同じ長さと纏めたのだ。

 稀人いわく、メートル原器が無いので完璧にはいかなかったとか言い残しているそうだ」


 「ふーん……確かに皆が同じ物を知ってる方が分かりやすいと思うけど、完璧じゃないんだ。

 稀人が出来ないくらいだから仕方ないんだろうけどね」


 「そうだな。だが、その御蔭で色々な事が楽になったらしい。

 書面を見ても長さとか重さとかがバラバラだったが、今は殆ど指定した通りの物が作れるようになったんだと。

 布団職人もそう言っていた。楽になったとな」


 「そうなんだー」


 本当に何処にでも稀人が関わってるなー。

 本気で凄いっていうか、稀人が元居た場所ってどんなところなんだろう?

 そこにはどんな国があるのか凄く気になる。


 「買い物も終わったし、そろそろ家に置きに戻ろう。

 今日は都の外だから、早めに家を出たいところだしな」


 「そうだね」


 そう言って家に戻ると、家の中がグチャグチャに荒らされていた。

 更に床板を外したらしく、地面の下に壺を置いていったみたい。

 荒らした奴らは何を考えているんだろう?


 「これは………やられたな。

 私が今まで稼いだ銭が隠してあったのだが、全て取られている」


 「えっ!? もしかしてこの壺を置いたのは斯明かくめい?」


 「そうだ。

 銭を沢山持っておると狙われるので、だからここに隠していたのだが……。

 まあ、本当に重要な銭は常に持ち歩いておるがな」


 そう言って斯明かくめいが袖から出したのは、金ピカの貨幣だった。

 何だか凄そうな感じの貨幣だけど、あれは何だろう?


 「これは銀貨の上の金貨だ。

 宗之助そうのすけに無理を言って両替をしてもらった事があってな。

 それで持っているのだよ。

 これは小金貨だが、小金板、大金板、小金貨、大金貨とある」


 「それが残ってるって事は、全部は取られてないって事だね?

 それなら良かったけど、誰がこんな事をやったんだろう?」


 「さあな。近所の人が見ていなかったか、聞き込みをしよう。

 この近くは家で職人仕事をしている者も多いからな」




 斯明かくめいの言う通り、僕達はまず近くの人に聞いて回った。

 すると、すぐに下手人が判明。

 それは昨日〝だんしょく〟と説明に出ていたヤツだった。

 見た目がわかりやすいので、近所の人もよく覚えてたみたい。


 「陰陽師の服を着ていて、顔が四角い感じの顔。

 そして顔が汚れて浅黒くて、背が高く、履いているのは下駄。

 それって昨日のアイツしか居ないじゃん」


 「顔が四角いのと背が高いと聞けば、おそらく間違い無いと思うがな。

 ただし本当かどうかは分からん。

 近所の聞き込みで聞いた限り、全員が同じ特徴を言った。

 だからほぼ間違い無いとは思う。

 何処へ行ったかは分からないが、とりあえず都の中を探そう」


 「そうだね。見つけて斯明かくめいの銭を取り戻さないと」




 出発した僕達は昨日の男を探して色々と動き回る。

 あいつは特徴的な陰陽師の服を着ている筈だけど、もしかしたらバレない為に服を着替えたかもしれない。

 だから顔をよく見て探そう。


 そうやってウロウロしながら探していると、すぐに見つけた。


 「昨日の〝だんしょく〟! 見つけたぞ!

 お前よくも斯明かくめいの家を荒らして銭を奪って行ったな!!

 近所の人が見ていたぞ!!」


 「何だこのクソガキは! 私が銭を奪っただと!?

 何処にそんな証がある! 勝手な事を抜かすな!!」


 「ならば私の家の近所の人に顔を見せるといい。

 多くの人が見ていたからな、顔もよく覚えていたぞ」


 「ふん! なぜ貴様如きの言う事を聞かねばならんのだ?

 お前達が勝手に言い張ってるだけであろうが!! ふざけるでないわ!!」


 むぅ………こうなったら神様の力でてやる!!


 ―――――――――――――――


 新川 正之進 男 二十九歳 ※罪人


 体力・三十八

 霊力・三十三

 術技・二十四

 知恵・十一

 知識・二十

 運勢・悪


 愚かな事にやっていないと言い張れば許されると思っておるらしい。こいつは斯明の家から銭を奪った後、己の家に持ち帰り隠しておる。その銭は部屋の床下に隠しているので調べれば分かるぞ? ちなみに家は右京の五条大路と道祖大路の交わる所じゃ


 ―――――――――――――――


 「斯明かくめい! こいつ奪った銭を自分の家に持ち帰ってる!

 場所は右京の五条大路と道祖大路の交わる所で、床下を調べれば分かるって!!」


 「よし! 黒金くろかね、すぐに行くぞ!!」


 「なんだと!? ふざけるな!!

 貴様ら如きに、勝手に私の家を調べる権限など無いわ!!」


 「お前の言う事なんて聞く必要は無いね! <古兵・勇壮猛夫>!

 そいつを足止めしろ、式神を出して来たら式神は殺せ!!」


 「「「!!!」」」


 「こ、こいつは昨日のか!? おのれ! 急急如律令!!」


 「「「!!!」」」


 背後で「ザシュッ!」って音がしたので、おそらく一撃で切られたんだと思う。

 僕達はそんな事は気にせずに、一気に走って行ってヤツの家へと向かう。

 場所はなんとなく分かるけど、完璧には分からない。


 斯明かくめいも右京にはあまり来た事が無くて少し迷ってしまった。

 だけど、僕達はやっと男の家を探し当て中に入る。

 すると、何やら優男が布団で寝ていた。

 とりあえず、この人に聞こう!


 「ここは新川正之進の家だよね? お兄さん、正之進が何処に銭を隠したか知ってる!?」


 「えっ!? な、何を……」


 「その銭はウチから奪われた物でしてね、素直に言わないと貴方も咎人となりますよ?」


 「ひぇっ! ぼ、ぼくは関わり無いよ。あいつが勝手に持って来ただけさ。

 ぼくが寝ている布団の下に隠すって、あいつが……」


 「ならちょっと退いてくれる? あいつが戻ってくると面倒だからさ」


 「わ、分かった!!」


 すぐに退いてくれたのは良いんだけど、このお兄さん何で褌一丁なんだろう?

 しかも何か、妙になよなよしてる感じ。変なの。


 ガタッ! バコッ!

 そんな音をさせて床板を剥がすと、その下には袋があり、中には銭がいっぱい入っていた。

 これが斯明かくめいの銭か。


 「これはマズいな。私の銭とあの男の銭がごちゃ混ぜにされている。

 このままではどれが誰の銭なのか分からない」


 斯明かくめいがそう言った時、男の家に誰か入ってきた。

 ………って、御当主様? しかも両方だ。


 「下京の者に聞いて回ってようやく見つけたぞ。

 物盗りにあったらしいが、それか?」


 「そうとも言えますが、私の銭とあの男の銭が混ざっているようなのです。

 少なくとも近所の人があの男を目撃していたので間違い無いのですが、どれが私の銭かは……」


 「分からんという事か。

 まあ、とにかく検非違使けびいしの所へ行かねばな。

 かつて権勢を振るったが、今は完全に北面武士にとって変わられておるのでなぁ……。

 っと、この話はどうでもよいな」


 「うむ。まずは検非違使けびいしの所に行かねばならん。

 そこの褌男。貴様も服を着てさっさと用意せい。

 何か知っておる筈だからな」


 「は、はい!」


 けびいしっていうのが分からないけど、何か面倒な事になってきた感じがする。


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