0025
Side:黒金
僕は雑貨屋っていう店で、色々な物を視ている。
説明が面白いのもあるけど、色々と見ていて楽しいんだよね。
何を買おうかなと困るくらいだよ。
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火鉢 質:五
陶器製の壺のような形をした物。中に灰を入れ、その上で炭を燃やしたりする用途で使う。周りが木で囲われており携帯用として移動させる事も出来る。平城京の時代からある古い道具
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平城京って何処だろう? ここは平安京だからこことは別の場所だろうか。
聞いた事が無いけど、斯明に聞けば分かるかな?
今は聞けないから次だ、次。
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布苔 質:五
海藻の一種で古くから何かをくっつける物、つまり糊として使われている。布海苔や布糊とも書くが、全て「ふのり」と読む。
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椿油 質:五
椿の実から採れる油。他の油に比べて酸化しにくく固まりにくい性質を持つ。食用油や髪油、刀の磨き油に木工製品の艶出しにも使われる。主に藪椿や山茶花から採られるが、チャノキの場合もある
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稲藁 質:四
稲の茎を乾燥させた物。布団の中に入れたり、壁の材料であったり、茅葺屋根の材料であったりと幅広く使われている。縄はともかくとして、わら半紙の製法を持ち込んだのは稀人である
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また稀人だ。
本当によく出てくるし、色々なところに出てくるって事は、それだけ沢山の物事を知ってるんだろうね。
僕は何も覚えてないのにさ。
……あれ? これ斯明が買うって言ってた布だ。
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麻布 質:三
麻の繊維を取り出して作られた布。カラムシの物とさほどの違いは無い。稀人が麻の栽培を奨励したからか、思っている以上に普及した。雌株は活用されていないので、黙っておくように
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何だか分からないけど、黙っておいた方がいいらしい。
雌株という物に関してだけみたいだけど、雌株ってなんだろう?
まあ、いいや。炭団と布を四枚買って帰ろうっと。
あ、いや。袋も買わなきゃ!
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麻袋 質:三
麻布で作られた袋。きちんと袋の口を絞る部分も作ってあるが、これも稀人が伝えた。太い紐を二つ取り付けた<リュックサック>という形の物は、現在<背嚢>として使われている。伝えた稀人の男は「昔、家庭科で作ったっけなー」と言っていた。家庭科とは何ぞや?
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何ぞや? って聞かれても、僕にも分からないよ。
とにかく唯の袋より背嚢っていうのの方が良さ気だね。
説明は大して変わらないから、背嚢の方を買おう。
「すみませーん。背嚢一つと麻布四つに、炭団を三つ下さい」
「おー、沢山買ってくれるが大丈夫か? 銭持ってるんだろうな?」
「全部で幾ら?」
「背嚢一つで小銀板一枚、麻布が四枚で大銅貨八枚、炭団が三つで大銅貨九枚だ。
しめて小銀板四枚に大銅貨二枚だな」
「小銀貨一枚で払えるよね?」
「おお、小銀貨なんか持ってるのか。
ちょっと待ってろよ。今釣りを持って来てやるから」
そう言って奥に行ったけど、お釣りが多いからかな?
全部で大銀板四枚と小銀板一枚に大銅貨三枚………うん、多いね。
「手を出してくれ。
……大銀板から行くぞ、一枚、二枚、三枚、四枚、これで大銀板四枚だ。
次に小銀板が一枚。
最後に大銅貨が一枚、二枚、三枚、これで大銀板四枚と小銀板一枚に大銅貨三枚だ。
背嚢はコレで麻布と炭団がコレだ。背嚢に詰めな」
「うん」
麻布はともかく炭団って結構大きいなぁ。
とにかく背嚢に詰め終わったので、古兵に持ってもらって店を後にする。
「それじゃあ、僕は行くよ」
「おう、買ってくれてありがとなー。
っつーか、霊兵ってのは荷物持ちか何かか?」
気にしない、気にしない。まずは一度家に戻ろう。
背嚢は良いけど、色々な物は置いてきた方がいい。
持ってウロウロするのも困るしね。
それに
「にゃーん」
「あ、また猫だ。今度は白いヤツだったけど、所々が汚れてたなぁ……。
何か勿体ない気がするから、川で洗ってくればいいのに」
そう言いながらも見送ったのに、何故か猫は反転して僕の方に来た。
しかも凄い速さで走ってくる!
「シャァァァァァァァァァ!!」
「うわっ!!」
凄い速さで来た所為か、僕は古兵に命じる事も出来ずに顔の前で腕を交差する。
出来る事はこれで精一杯だった。
けど
「ヂュァッ!?」
「ニャァッ! シャァァッ!! ガブッ!!」
「え……? 僕じゃなかったのか……。
ていうか後ろに変なのが居たんだね? もしかしてコレが鼠かな?」
僕がジッと見ていると、鼠であろう生き物を殺した猫が「グチャグチャ、バリバリ」と食べ始めた。
僕が居ても全く気にしていないって事は、それだけお腹が空いてたんだろうね。
とりあえず食事をしている猫から離れて、さっさと家に帰ろう。
それにしても、さっきのは失敗だった。
僕は何も出来ないままに顔を防ぐだけ。
むしろ前が見えなくなって、何も分からなくなっちゃったよ。
ちょっと凹みながら家に戻ると、斯明が九字とかいうのを必死に学んでいた。
どうやら強化術式の方みたい。
「おかえり黒金。何処に行ってたの?」
「色々な店に行ってたんだ。
で、背嚢とかいう背負う袋と、麻布四枚と炭団を三つ買ってきた。
朝餉と夕餉に使うからね」
「すまん、黒金。麻布を買わなければと思っていて忘れていた。ありがとう。
それにしても、まさか微妙に印が間違っていたとは思いませんでした。
それ以外もそうですが、適当な事を教えられていたとは……」
「黒金が見た能力において、やたらに知識が低いのがおかしいと思っていたんです。
道丹のヤツは斯明殿が余程に気に入らなかったのでしょう。
わざわざ微妙に間違えている事を教えるとは。性格の悪い!」
「発動はするけど微妙に間違ってるから、発動しても正式な力として伝わらない。
正に分かっていて教えないと、そうはならないわね。
そして、そのうえで放逐した、と。本当に碌でもないヤツよ」
「その所為で斯明は弱かったってこと?」
「そうね。
むしろその状態で、強引に高い霊力を使って何とかしてきたってところかしら?
むしろ今までの方が色々とおかしいのよ。
きちんと霊力が使えるようになれば、相当に腕は伸びるでしょうね」
「そうなんだ。よかったね、斯明」
「うむ。とはいえ微妙に間違っている所為で、覚え直すのが大変だ。
色々な意味で祟ってくれる」
「本当にワザとしか思えない面倒臭さですよ、まったく。
死んだ後まで迷惑を掛けてくれるとは……。
そういう意味では〝優秀〟なのだと思います。道丹というヤツは」
「そろそろ今日は終わりましょうか。
明日は朝の買い物が終わったら外ね。
今日見回ったのだから、左京も右京も見回る必要は無いでしょ。
鬱陶しいのも居るし」
「そうね。ああいう鬱陶しいのに会わない為にも、明日は朝から都の外に行きましょう。
その方が妖怪が見つかる可能性は高いですし」
そう言って斯明の勉強は終了。
昨日より早く僕達は送って行き、今日は葛葉が先で艶が後だった。
そして家に戻った僕と斯明は夕餉を作り始める。
出来たら食事をして、その後はゆっくりした後に寝る。
そろそろ本格的に妖怪退治をしないとなー。
今日も猫に何も出来なかったし、やったのは赤鬼を倒しただけだよ。
厳しい環境じゃないと強くなれないらしいし、明日から頑張ろう。




