0232
Side:神守黒金
山から離れた僕達は一路津島の町まで移動。
町の外で馬は下りたけど、吉法師と三四郎は乗せたままだ。
なぜならそれが一番安全だからだね。
そして弾正の息子なら乗っていても咎められないとのこと。
それは助かるなと思いつつ、僕達は町中の人に聞いて陰陽師の建物へ。
陰陽所の扉を開けて僕だけが入り、中で霊玉を売る。
じつは古兵と猛兵の一部は山の中をウロウロさせ、妖怪を退治させて霊玉を回収させていたんだ。
それもあって、それなりの数の霊玉を売って儲ける事が出来た。
そして陰陽所を出た後、鍛冶屋の所へ行く最中に前を塞ぐ連中が現れた。
脇差とか持ってるから、町中の賊かな?
「君達は賊なのかい? 賊じゃないなら、すぐに離れてほしい。
それ以上こちらに近づくなら、問答無用で殺す」
「ほう! 童如きが随分と偉そうじゃねえか!
将来は美人になるだろうが、そんな態度をとってると大人になるまでに死ぬぞ?」
「僕は男なんだけど、その目は節穴かい? だったら今すぐ抉ってやろうか?」
そんなやり合いをしていると、後ろに居た柴田が太刀を抜き、平手が槍を構えた。
どうやらこいつらは本当に殺していい連中みたいだね。
だったら始末するか。
「太刀を抜いたり、槍を向けたりか。
津島でそんな事をするって事は、てめえらが賊ってこった!
おい皆、やっちまえ!!!」
「「「「「「「「「「おうっ!!」」」」」」」」」」
「待てぇ!!!」
なんだか慌てた感じで走ってくる人が見えるけど、あの人はいったい誰なんだろう?
随分と必死になって走って来てるし、そのうえ護衛も連れてるね?
「はぁ!、はぁ!、はぁ! ………ふぅ、やっと落ち着いた。
そなたら下らぬ事は止めよ。
こちらの後ろに居る方は織田弾正忠家の家臣で柴田権六朗殿、そしてもう御一方は平手五郎左衛門殿だ。
お主らが喧嘩を売って良い相手ではない」
「これは大橋殿、しかし織田弾正忠家といえば……」
「そなたらがまだ服部党の事を思うておるのは分からぬでもないが、武士の戦であろう。
是非もあるまいに」
「しかしだな。大橋殿は織田弾正忠家に近いからよいであろうが、我らは……」
「遠いから得るものが少なくて気に入らない?
だったら襲ってきなよ、皆殺しにしてやるからさ」
「なにぃ!?」
「そもそもここで相手を襲うって事は、完全にこっちを舐めてるよねえ?
武士を舐めるってどういう事なのか、もしかして知らないの?」
「ハッ! 餓鬼が舐められたからなんだ?
舐められたくなきゃ、さっさと大人になるんだな。
ぎゃはははははははははははは!!!」
「<爆兵・白輝拳者>。あいつら全員殺せ」
「「「「「「「「「「!!!」」」」」」」」」」
ドドドドドドドドドドゴォォォォォン!!!!
爆兵が殴った奴らは全員木っ端になって吹き飛んだ。
細かい肉片になって飛び散ったけど、僕にとってはどうでもいい。
舐めて来た以上は死ね。
「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」
「流石に愚か過ぎて呆れるわ。
もちろん津島の全ての者が愚かとは思わんが、幾らなんでもな。
喧嘩を売ってはいかん相手に喧嘩を売るからこうなるのだ。
武士は舐められたら負け。
それを間違いなく今でも持っておるのが神守卿ぞ」
「神守卿は従三位の官位を持っておられる。
つまりは公卿であるという事だ。
言葉は悪いが、織田弾正忠家を敵に回すよりも危険なのだぞ………」
「そも神守卿は様々な霊兵を使う、伝説の陰陽師。
たった御一人でも津島を壊滅させられる力をお持ちだ。
そして今は織田弾正忠家の若君、嫡子である吉法師様の前に御出でになった。
伝説の陰陽師である稀人がだ。
大橋殿、その意味が分かろう?」
「な、なんと……稀人の方が若君の前にですか……。
もしかしてそこな黒馬に乗られているのは!?」
「そう、織田吉法師様だ。
だからこそ神守卿は容赦なく先程の者どもを始末した。
何をしてくるか分からぬでな」
「これは申し訳ありませぬ。
まさか織田弾正忠家の御嫡男がおられるとは知らず、ご無礼を致してしまいました」
「とはいえ大橋殿が無礼をされた訳ではなく、むしろ止めようとされておられた。
そこを申せば殿も御怒りにはなられぬと思う。
神守卿がおられる故に、我らだけで外に出されたとも言えるでな」
「そ、そうですか……。ありがとうございまする」
「いやいや。正直に申して、先程の轟音は我らも驚いた次第。
というか神守卿、先程の霊兵が門を破れるという霊兵で?」
「そうだね。とはいえ僕もまさかあそこまでの威力だとは思ってなかったよ。
神様が何を考えて、あんな威力の霊兵を授けてくれたんだろうね?
今までに授けてもらった霊兵はもっと大人しめなんだけど、なぜかアレだけやたらに派手なんだよ。
あの神様の性格なのかな?」
「派手好きな神様という事ですかな?
まあ、数多の神様がおられるのですし、中には派手が好きな傾奇者のような神様もおられるのでしょうな」
「かぶきもの?」
「あー、何と申せばよいのか………。
派手な格好をして見せびらかしておる者ですかな?
昔はバサラなどと呼ばれておったそうですが、今は傾奇者と申すのですよ」
「ああ、バサラみたいなものか。
後醍醐帝が禁止したけど、それでもバサラ者はいたからね。
そもそもバサラ大名と言われるような武士も居たし」
「ほう、昔は傾奇者みたいな大名がおったのですな。
今は武士としてはおりますが、大名の方は左様な事はされぬでしょう。
とんと聞いた事がありませぬからな」
「それよりも神守卿は何をしに行かれていたので?」
さっきから柴田と平手が僕を「神守卿」と呼んでくるけど、これは仕方ないと諦めた方がいいね。
鬱陶しい奴らも名前では黙るみたいだからさ。
「いや、単に鍋が欲しかったんだよ。
さっき山で獲ってきた鹿とか熊とかを煮込む為のね。
特に腸から脂を抜くから、専用の鍋を使わないと臭いが付いて取れなくなるんだ」
「ああ、それで鍋を買いに行かれようとしておったわけですな。
あの轟音と爆発が凄すぎて、何をしようとしておられたのか忘れるところでした」
「な、鍋でしたらこちらへどうぞ。私が案内いたします!」
「ああ、舐めて来ないなら普通にしてていいよ。
舐めてさえ来なければ、あんな事はしないからね。
一応名乗っておくと、僕は神守君従三位右衛門権佐検非違使黒金というんだ」
「ははっ! 神守卿、それではこちらへ」
なぜかこの大橋って人は名乗らなかったね?
まあ大橋という名前を憶えてればそれでいいか。
なんか武士じゃなくて商人みたいだし。
その後は大橋に案内されて、そこで適当な鍋を購入。
そして僕達は勝幡城へと戻る。
その最中に柴田と平手が思い出したように喋り始めた。
「あの爆発であらば、城の門など木っ端にできよう」
「そうですな。
あんな者が突撃してきて門を壊されたら、如何にもなりませぬぞ。
もちろん味方なので何も問題はありませぬが、敵からすれば堪ったものではありますまい。
それと……津島では未だに服部党が力を持っておるようで」
「そうじゃな。殿に報告は致すが、厄介な事よ……。
そも服部党も元々は津島の商人でもある。
そして織田弾正忠家と対立して追い出された。が、服部左京進の裏には願証寺がおる。
服部と願証寺の縁は大きいからの」
「むしろ願証寺が己らの盾に使うておるだけでは?」
「それが正しいのだが、津島を追い出された事もあり、服部左京進は露骨にこちらを恨んでおる」
「なら出て来た時に殺そうか? それで終わるでしょ。
駄目なら、そいつの領地まで攻め込めば済むし」
「敵は輪中と呼ばれる、川や海に囲まれた市江島という所に本拠を持っておるのだ」
「なら水兵を使って、敵の船に穴を開ければいいよ。それで全て沈む。
水兵は陸の上だと遅いけど、海や水の中では恐ろしい強さを発揮するからね。
授けてくれた神様が神様だし」
「「………」」
八俣遠呂智だって思い出したからか、完全に黙っちゃったね。




