0023
Side:黒金
いきなり乱入してきたヤツが怒鳴り散らしているけど、それを無視して斯明と多田木ってヤツは<赤鬼>を仕舞った。
正直に行ってアイツが喧嘩を売ってこなきゃ、こんな事にはなっていないんだけどね。
「女だてらって随分とふざけたヤツね。
陰陽師は実力が全てなんだけど?
お前にいったいどれだけの実力があるのかしらね? 大した事はなさそうな癖に」
「はっ! これだから女の陰陽師など困るわ。話にならん!
所詮は大した腕前も力も持っておらんのだから、早々に引っ込むがいい。
そして陰陽師を止めるのだな。女など何の役にも立たん」
「なんですって!? あまりにも許せない言葉を吐くじゃない。
あんた、殺される覚悟は出来てるんでしょうね?」
「ふん! 下らん! 実力の差も理解できん女如きが、いちいち口を出すな。
これだから道理も知らん愚か者は困るわ。
もうよい、さっさと去ね」
「勝手に乱入しておいてこの言い種。
そこの無能と同じぐらいの阿呆ね?
流石に頭が悪すぎて驚くけど、こいつを助けたという事は私達の邪魔をしたという事よ。
お前も含めて覚悟をしておきなさい?」
「お、お待ちを!! 私は確かにそちらへと<赤鬼>を放ちました!
しかし賀茂家や安倍家を愚弄したりなどしておりませぬ!!
それはこの勝手に乱入してきた男がやったこと。
私は関わりなどありませぬ!」
何を言ってるんだろう?
そもそもこっちの言葉も聞かずに勝手に襲ってきたのに、今さら許してもらえるとか思ってるっておかしいよね?
自分のやった事も分かってないの?
「本当に黒金の言う通りね。
この乱入した愚か者もそうだけど、よくも私や葛葉に喧嘩を売れたものよ。
いったい何を勘違いしているのかしら」
「はっ! 貴様らが賀茂家や安倍家に関わりがあるからなんなのだ?
所詮は大家の名を出せば相手が引くと思っておるのであろう。
下らん! 実力の無い者ほど家の名を出すものよ」
「こいつ、今すぐ殺しましょうか。
なぁに、後で晴海ちゃんに言っておいてあげるわ。
そこの愚か者も含めて私に喧嘩を売ってきたとねえ。
なら殺したところで何の問題も無いもの」
「どうやら耳まで遠いようだな。
賀茂家や安倍家の名を出せば相手が引くと思っているのか、愚か者め!
貴様ら女如きが私に勝つなど百年以上早いわ!!」
百年前って、こいつ普通に生まれてないよね? いったい何を言ってるんだろう?
さっきから話が通じていない気がする。
何かおかしくない? もう一度だけ視てみようか。
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新川 正之進 男 二十九歳
体力・三十八
霊力・三十三
術技・二十四
知恵・十一
知識・二十
運勢・普
普通の陰陽師。平々凡々ではあるが、鍛えているのか体力は若干高い。己の正しさに溺れておる者であり、非常に面倒な性格をしておる。新川という家はそれなりに名のある家のようで、それを誇りにしておるからか尚のこと面倒なようじゃ。ついでに男色じゃな、コイツ……
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あれ? 説明が変わってる?
こんな事は始めてだけど、神様が調べ直してくれたのかな?
それにしても新川家っていうのは有名な家なのかな?
聞いた事ないけど……。
「ねえ、新川っていう家は陰陽師の中で有名なの?」
「新川? ……ああ、あの木っ端の家ね。
芦屋流を芦屋の一族から正当に習ったヤツの家だったと思うわよ。
だからなに? って話だけど」
「立派なのは芦屋道満であって、新川なんて教えを受けただけだしね。
それを誇ってるの、こいつ? 下らないわねぇ」
「何だと、貴様らぁ!!
所詮は実戦も碌にせん公家の家臣の分際で、実戦を熟し続けておる我が新川家に対して何様のつもりだ!!!」
「後さ、〝だんしょく〟って何?
この正之進ってヤツがそうらしいんだけど」
「「「「………」」」」
「こいつ男色なの? って事は、そこの愚か者か斯明を狙ってるってこと?
それで女如きって? ……きもちわる」
「本当に、なんなのコイツ?
勝手に乱入してきて、目的は男色の相手?
本気で気持ち悪い」
「男色は好きにされればいいが、私はその気は一切無い。
なので、そちらの御仁と好きにされるがよかろう」
「ちょっと待てぇ!!
私は葛葉様一筋なのであって、気持ちの悪い男色の相手などする気は無い!!!」
「わたし一筋とか、お前もそこの男色と同じぐらい気持ち悪いんだけど?
そもそわたしの婚姻相手ぐらい、わたしが決めるっての」
なんか〝だんしょく〟って言われ続けたからか、プルプルしてるけど……。
相手をバカにする言葉なのかな? 〝だんしょく〟って。
「…………貴様らぁ! もう許さんぞ!!
特にそこのクソガキ、貴様はいの一番に殺してくれるわ!!
やれ、<赤鬼>!!!」
「<古兵・勇壮猛夫>」
僕は三人の古兵に、あの赤鬼を殺せと心の中で命じる。
すると古兵の三人はすぐに前に向かい、一人が赤鬼の前に出た。
敵を前にした赤鬼は目の前の古兵を殴ろうとしたけど、古兵は左後ろに跳んでかわす。
他の二人の古兵は赤鬼に素早く左右から近付き、それぞれが赤鬼の右足と左足を切った。
それだけで赤鬼は両足を切り落とされて倒れる。
そして正面に居た古兵が素早く近付いて頭を剣で突き刺した。
その結果、赤鬼は消え、古兵はすぐに僕の近くに戻ってくる。
うん、完璧な勝利だね。
僕は古兵を一人残して、他の二人を消す。
「そ、そんなバカな!! 私の<赤鬼>が負けるなどあり得ん!
そこのクソガキ! 貴様、何か卑怯な事をしたな!!」
「なに言ってるの、アイツ? 意味が分からない」
「単に負けを認められないだけよ。間抜けだからああなるの。
最初から自分が負ける筈が無いなんて思い込んでるから、無様に喚き散らすだけになる。
女如きとか言ってくれたけど、新川如きが何を調子に乗ってるのかしらね?」
「ふざけるな、女如きが!
そこの卑怯なクソガキ諸共叩き潰してくれるわ!!
臨・兵・闘・者・皆・陳・列・在・前!」
また別の式神を出してきたけど、今度は狼らしい。
それを見た艶が式神の符を出して式神を呼び出す。
「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・前・行!
天・元・行・躰・神・変・神・通・力!」
あれ? 最初に唱えるヤツが違う?
その後のは強化術式とかいうヤツだけど、最初のが違うみたいだ。
何か意味があるのかな?
「あれは九字の元祖と言われるものよ。
そこまで大した違いは無いんだけど、あれだと霊力を際限なく篭められるのよね。
その危険があるから、今の九字が主流なんだけど」
「霊力が沢山篭められるって事は、それだけ強くなる?」
「そう。そもそも同じ者を呼び出しても、符の作り方や霊力の篭め方で式神の強さは変わるの。
だからどれだけ準備をしっかりしてきたかも重要になるのよ。
晴海ちゃんなんて百枚ぐらい作って、最高の出来の一枚を大事に使ってるわ」
「へー……作るのも大変なんだ。
で、艶は勝てるの? 強化術式を使ったけど」
「使ったのは勝てないからじゃなくて、完膚無きまでに相手を叩き潰したいからよ」
「強化術式だと!? 賀茂家や安倍家にしか伝わらぬ術か!
仮にそれで勝っても、私が負けた事にはならぬわ! 卑怯者めが!!」
「………なに言ってるの、アイツ? 理解できないんだけど」
「本当にね。そもそも強化術式が簡単に使えるとでも思ってるのかしら?
これだから知識も無いヤツは困るのよ。
そう簡単に強化術式が使えるなら誰も苦労はしないわ」
艶の狼が相手の狼に突撃して、そのまま体当たりで吹き飛ばした。
その後に追って行って、首に噛みついたらすぐに消えたよ。
吹き飛ばしたって事は、艶の狼の方が強かったって事だから勝利は確実だ。
「ふん! 所詮は賀茂家や安倍家の秘術に頼らねば戦いも出来んとはな!
やはり女などというのは話にもならん!!」
何を言っているのか、本当に分からない。
何なんだろう、アイツは?




