0022
Side:黒金
僕達は左京の見回りを終えて右京の見回りを始めた。
そこまでしっかりとは確認せず、他の陰陽師の邪魔をしないように見回る。
途中で何度か話しかけられたし警戒されたけど、許しの書状を見せると文句は言わなかった。
流石に賀茂家に文句は言えないだろうって言ってたので、怖いからみたいだ。
ところが一人だけ文句をつけてきた人が居る、それがこの人。
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多田木 新之助 男 二十三歳
体力・二十七
霊力・三十二
術技・二十八
知恵・十九
知識・二十四
運勢・普
普通の陰陽師。可も無く不可も無い能力だが、安倍家の家臣筋の家の者。だからか家柄で相手を見下している。安倍家の妖狐に惚れている為、斯明の事を知れば必ず面倒な事になるぞ?
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「このような所に何故葛葉様が居られるので?」
「は? 誰か知らないけど、わたしの行動に文句をつけようって事かしら?
わたしが顔も覚えていない程度の分際で、随分と舐めてくれてるじゃない?」
「いえ、文句をつけようなどという事はございません。
しかしながらここは下京であり右京でございます。
何故このような所に居られるのであろうかと……」
「わたしが何処に居ようが、わたしの勝手ででしょうが。
お前如きにいったい何の関係があるというのかしらね?」
「いえ、私は本当に文句をつけようなどとは思っておりませぬ。
そうです! そこに見える平民どもではなく、私が御案内致しましょう!」
「………お前はあまりに頭が悪すぎるわね?
そこに居る女は賀茂家の娘よ? 安倍家の者ではないお前が何様のつもりなの?
それとも晴海ちゃんからの叱責を受けたいのかしら?」
「い、いえいえ、私が言っているのはそこの冴えない男でして……」
「それこそ何を言っているのかしらね?
ここに居る斯明は私が祝言を挙げる相手よ。
お前みたいな愚か者とは天と地ほど違うの。
その気持ち悪い顔を二度と見せるな」
さっきまで葛葉に対して「ヘラヘラ」していた男が急に真顔になった。
斯明の事を知れば面倒になるって書いてあったけど、もしかしてコレの事かな?
「貴様が何処の馬の骨かは知らぬが、葛葉様と祝言を挙げるとはどういう事だ!!」
「いや、そもそも貴殿には全く関わりが無い事の筈なのだが、いったい何を言っているのだ?
一応側室の話については、安倍家の御当主様より話があったのだが……」
「そ、側室だと!? 貴様、言うに事欠いて側室だと!?
もはや許せん、貴様はここで叩き殺してくれるわ! 急急如律令!!」
何故か分からないけど、いきなり相手は式神を呼び出し、斯明に対して攻撃してきた。
呼び出したのは<赤鬼>だ。
僕はすぐに動こうとしたけど、それより早くに斯明が動いた。
「急急如律令!」
すぐ符を出して斯明が唱えると、符は<赤鬼>になって出てきた。
そのまま二人の<赤鬼>は手の平を掴み合って力比べを始めたようだ。
一進一退でどっちが強いとかは無いみたい。
すると二人がお互いの<赤鬼>に近付いて手を触れる。
これで<赤鬼>は正式な強さになるね。
「臨・兵・闘・者・皆・陳・列・在・前!」
「天・元・行・躰・神・変・神・通・力!」
「あちゃあ、あいつ式神の強化術式は知っていたのね。
また厄介なものだけ学んでいる感じか」
「式神の強化術式は、家臣筋といえども実力が無ければ教えないのが正式では?
……もしかして安倍家は統制がとれていない?」
「おそらく勝手に教えたんじゃないの? 父親辺りが。
能力が追いついていないみたいで、あいつの霊力が殆ど残ってないわね」
「そんな事を言ってる場合?
斯明の<赤鬼>が押されてるんだけど、このままじゃ負けちゃうよ」
「斯明、九字護法を用いて更に霊力を篭め続けなさい!
貴方の霊力ならそれが可能よ」
「分かりました! 臨・兵・闘・者・皆・陳・列・在・前!」
「く、葛葉様! 何故そのようなヤツに教えるのです!」
「うっさいわね、この三下! お前なんてお呼びじゃないのよ!
勝手にしゃしゃり出てきて喚くな!!
晴海ちゃんに言って潰すわよ、お前の家!」
「あいつは多田木新之助ってヤツだよ。
安倍家の家臣筋だって」
「よくやったわ、黒金。
その程度のザコなど叩き潰してしまいなさい、斯明!!」
「臨・兵・闘・者・皆・陳・列・在・前!!」
斯明が左右や上下に指を振るアレをしながら霊力を篭める度に、斯明の<赤鬼>が徐々に力で押し返していく。
斯明はひたすら同じ言葉を繰り返しながら、どんどんと霊力を注いでいる。
まだまだ大丈夫みたいだ。
「そ、そんなバカな! 私の霊力の殆どを注いだのだぞ! なぜ押し返せる!?
あり得ないだろうが、強化術式も使えない程度の分際で!!」
「元々霊力の過剰供給から生み出したのが強化術式なのよ。
つまり斯明がやっているのは原点と言える強化術。
舐めてもらっては困るわ!」
遂に斯明の<赤鬼>が完全に押し返し、相手の<赤鬼>を地面に押し付けた。
手の平はがっしり組んだままなので、上に居る斯明の<赤鬼>は相手のお腹を右足で踏みつけ始めた。
「クソっ! 早く振り解け、早くしろ!!」
「どうして相手は他の式神を出さないの? そうした方が良いよね?」
「斯明殿のように霊力が多ければ出来るけれど、相手は<赤鬼>と強化術式で殆ど霊力が残ってないのよ。
だから呼びたくても呼べないってわけ」
「ああ、それでかぁ……。
いきなり相手の式神が強くなったけど、このままで勝てそうだね」
「ええ、このまま斯明殿の勝ちは揺るがないでしょう」
僕も間違いなく斯明の勝ちだと思ったんだけど、急に新しい<赤鬼>が乱入して斯明の<赤鬼>を体当たりで飛ばした。
いったい誰があんな事を!
「お前達、何をしておるか! 陰陽師だというのに争いおって!
お前達の敵は妖怪であろうが!!」
何だか妙なヤツが現れて勝手な事を言い始めた。
そもそも喧嘩を売ってきたのは相手なのに、何も知らずに余計な事をするなんて。
ワザと相手のヤツを助ける為に来たのかな? 今の内に視ておこう。
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新川 正之進 男 二十九歳
体力・三十八
霊力・三十三
術技・二十四
知恵・十一
知識・二十
運勢・普
普通の陰陽師。平々凡々ではあるが、鍛えているのか体力は若干高い。己の正しさに溺れておる者であり、非常に面倒な性格をしておる。関わらん方がよいぞ?
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うわぁ……眼から関わらない方がいいって言われるって、相当に酷い人だね。
多田木とかいうヤツもそうだけど、何でこんな関わりたくもないヤツが出てくるんだろう?
「いったい貴方なに? 勝手にしゃしゃり出てきて余計な事を。
もしかして、そこの愚か者の味方? 纏めて殺すわよ?」
葛葉が右手の手の平を上に向けて【狐火】を使った。
それを見た多田木とかいうヤツは青褪めた顔をしたけど、新しくきた新川とかいうヤツは鼻で笑う。
「ふん! たかだか【鬼火】が使えるからといって、平民が陰陽師に勝てる訳がなかろうが。
そんな事よりも貴様ら、ここが何処か分かっておるのか。京の都の中だぞ!
にも関わらず、陰陽師同士で争いおって!」
「勝手に割り込んできて何を言うのかと思えば……。
そもそも、そこの愚か者が先に喧嘩を売ってきてるのよ。
それも知らずに勝手な事を」
「五月蝿いわ! 女だてらに陰陽師をしておるようだが、大した実力の無い者が喚くな!」
何だこいつ? 本当に意味が分からない。
あの多田木ってヤツが明らかにマズいっていう顔をしてるって事は、まだあいつの方が分かってるって事だよね?




