0221
Side:神守黒金
桜と桃を葛葉に預けた僕は、一路下野の国を目指して東進する。
黒馬に乗ってるから気楽だし、一気に進めるから楽だね。
なるべく揺れないように走ってくれるから、速いのに快適なんだ。
特にお尻が痛くならないのがいい。
どんどんと馬を走らせて鎌倉まできたら、今度は北進を始める。
下野の国って遠いなと思いつつ、持っているお金を使いながら食事をして進む。
最悪は妖怪を退治して銭を稼げばいいので、長い距離を進むのが厄介なくらいかな?
夜は適当に影兵に沈んで外で寝ている為、宿を探す必要は無い。
そして僕は四日という早さで下野の国に到着した。
ここで那須という場所の話を聞きながら移動。
そして那須に到着したら、今度は殺生石の場所を聞く。
地元の神社の神主さんが知ってたよ。
そして殺生石のある場所へと移動するんだけど、近くに温泉が湧いてるから分かりやすいんだってさ。
そんな所に殺生石ってあったんだね、もっと山奥とか秘境にあるのかと思ってたよ。
そして僕が黒馬に乗ったまま探していると、明らかに怪しい岩を発見。
「アレが殺生石かな?
近くに行くと毒を撒き散らして死ぬって聞いたからね、霊兵を向かわせるのが一番だ。
<古兵・勇壮猛夫><猛兵・剛射隼人><斬兵・豪壮武辺><影兵・自在黒命>」
僕が霊兵を呼び出した直後、殺生石だと思っていた石から黄色い煙が噴出。
その煙が晴れると、目の前には人間の姿のような者が現れた。
頭に狐耳があるから、あれが玉藻で間違いないね。葛葉も頭に狐耳があるし。
「まさか再び稀人が妾を殺しに来るとはな。
因果がどのように巡っておるのか知らぬが、覚悟せよ。童。
此度は十分に力を蓄え、そなたら人間を軽んじたりなどせぬ。
妾の全力で屠ってやろうぞ」
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玉藻 女 七百四十二歳 祟七級
体力・三十二
霊力・二百二
術技・百三十七
知恵・六十四
知識・五十八
運勢・悪
こやつは祟級の妖怪じゃからして気をつけろ。今までの妖怪とは文字通り桁が違うぞ。そなたが全力で戦って勝てるかどうか分からぬほどじゃ。故に全力で倒せ
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「古兵、斬兵は攻めろ。猛兵は矢を射かけて、影兵は隙を狙え!!」
「ふん、霊兵か。厄介ではあるが、そこまでではないわ。
黒、白、赤、青、緑、橙、紫、藍、空。全て出よ。
妾の敵を滅ぼすのだ」
「「「「「「「「「ハッ!!」」」」」」」」」
玉藻の尻尾が光ると、それらが狐の妖怪に変化して襲って来た。
まさか向こうも十体も居るとは思わなかった。
しかもおそらくだけど、こいつら強い。
慌てて眼の力で調べると、こいつら一体ずつが甲一級だった。
幾らなんでも強さがおかしい。
甲一級の相手が九体に祟七級が一体とか、冗談じゃないよ。
こんな相手なら、そりゃ桜ですら置いてこなきゃいけないに決まってる。
流石に尻尾にすら勝てない。
僕は素早く将門の短刀を抜き、最初から霊力を注いで切れ味を上げておく。
とにかく尻尾どもを先に倒さなきゃ駄目だ。
でないと隙を作られて殺されるかもしれない。
「ほう。それはまた見事な呪いの品よ。
そしてその怨念が、そなたに力を貸しておるか。
なかなかに面白い物であるが、妾には通用はせぬぞ。
その程度の呪いなどにやられるほど、妾は小さき者ではない故にな」
そう言いつつ、玉藻はこちらに黄色い炎を飛ばしてきた。
葛葉も使う【狐火】だけど、一度に九個も飛ばしてくるとかメチャクチャだよ、コイツ!!
「ははははははは、踊れ、踊れ! 貴様のような童程度で、妾が倒せるものか。
どこの者に妾の復活の時を聞いたのか知らぬが、後でその頭の中身をほじくり出してくれる。
ついでに完全に虜にしてやろう。
さすれば、なかなかに面白い意趣返しとなろうぞ」
「余程に昔の稀人に負けたのが気に入らないみたいだね。
そんなに悔しいの? でも残念。
その人は既に亡くなってるから、永遠に勝ち逃げだね?」
「………死ね」
更に両手で【狐火】を飛ばしてきたけど、僕は将門の短刀で切り裂きつつ影兵で弾く。
こっちをずっと追いかけて来るような力じゃないのが救いだ。
あんなのがずっとこちらを追いかけて来たら、絶対に火達磨にされちゃうよ。
チラリと古兵や斬兵を見るけど、上手く個々の狐が連携していて崩せない。
あいつら甲一級という強さの癖に、連携が異様に上手い。
しかも霊力を込めた爪や尻尾で受け止められてしまい、斬兵の長剣ですら切れないんだ。
やってくれるよ。
仕方なく僕は一気に霊力を将門の短刀に込めて、霊兵達を強くする。
そうしないと勝てないからだけど、そもそもそうしても勝てるか不明だ。
それでも僕はここで負けるわけにはいかない。
「「「「「!!!」」」」」
ザシュッ! ドシュッ! ドスッ! ズドッ!! ドンッ!!
「「「「「ギャウッ?!」」」」」
「チィ! その短刀の所為か。
まさか妾の分身が斬られるとはな、やってくれる!!」
「そりゃ殺しに来てるんだからやるよ。
そうしなきゃ、こっちが殺されるんだしね!!」
僕は更なる霊力を込め、一気に勝敗を決するように霊兵に命じる。
「「「「!!!」」」」
ズドン! ドシュッ! ズダン!! ドンッ!!
「「「「ギャァッ!?」」」」
「クソッ! 予想以上の力を持っておったか。
これだから稀人は嫌いなのだ。
己の手札を見せぬようにして油断を誘いおる。
さっさと死ねぃ!!」
尻尾の狐が倒され、玉藻の尻尾が全て元に戻った。
その後は狐を出して来ないところを見るに、やられるとすぐには出せないんだろう。
しかし今度は黒と赤と黄色が混ざった炎を飛ばしてきた。
それも結構大きい物だが、僕は慌てて将門の短刀で炎の塊を弾く。
すると玉藻が近づいてきていたが、黒馬が黒い手を伸ばして殴りかかる。
「ハッ! この霊兵がおかしな動きをするのは見ておったわ!!」
身を捻って影兵の攻撃をかわした玉藻は、僕に向かって爪を伸ばして突き刺しにきた。
僕は咄嗟に将門の短刀で横に逸らすも、背中から大きな音がして吹き飛ばされた。
ドゴォン!!!
「ぐはっ!?!!?!」
「くくくくくく……【呪獄炎】の威力はどうじゃ? 気に召したか?
妾を舐めてもらっては困るわ。
貴様のような童とは違うのだ、田分けめ」
「う、ぐぐぐぐぐ……」
「ああ、やらせはせんし軽んじる気も無い。貴様はここで死ね」
ズドンッ!!!
「かっは………!!」
「くかかかかかかかかか、妾の【呪爪】で腹を貫かれた以上は死するしかないのう。
九つの分身を一気に打ち倒したは見事じゃが、そこで終わりよ。
そもそも妾が分身程度の強さのはずがなかろうが。そぉれ」
「ぐぅ、ごぶっ……!」
「くふふふふふふふ、命が無くなってゆくのう!
爪を伝わってくる、この肉の感触が堪らぬわ!!
キヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ………!!」
「あがっ! がっ、ぐぶっ……」
「ほほほほほほほ! 血に沈んで終わりじゃのう。
まあ、そなたを操れなかったのは残念じゃが、霊力の漲る美味そうな肉は喰うてやる。
感謝せいよ」
「………」
「なんだ、もう死んだか。
人間の童は簡単に死ぬのでつまらんのごぉっ?!」
ドゴォ! ……ガンッ、ズザーーーーッ!!!
「おのれ、いきなり妾を殴り飛ばすとは!!
貴様のような童のどこにそのような力があったのだ」
「あぁん? 俺様を童だと? 随分とふざけた事を抜かす汚物だな。
祟りにまでなって現世にしがみつく汚物が何様のつもりだ?
今すぐブチ殺すぞ」
「なんじゃ、コヤツ。気でも触れたか?」
「あぁ? 調子に乗ってる狐如きが随分とフザケてんじゃねえか。
俺様の名は香香背男。
まさか知らねえんじゃねえだろうな?」
「は? 童の名なぞ知らぐぶぉぇっ!?!?!」
ドゴォン!!!
「俺様の名は香香背男だっつってんだろうが。
たかだか狐の分際で、どこまで舐め腐ってくれてんだ、テメー」
「うごっ! ごふっ! ……い、いったいなにが?
それに<かがせお>など知らぬ、聞いた事もないわ!!」
「ほう、そうか。なら滅ぶ前に聞いておけ。
我は建御雷神や経津主神ですら従わせられなんだもの、その名は香香背男。
またの名を天津甕星」
「…………まさか、か、神?
そ、その白く輝く拳で、いったい妾に何をする気じゃ!?」
「あぁん? 俺様を舐め腐ってくれたんだ。
滅ぼされる覚悟があんだろうが、テメーはよう。
なら滅べや」
「ち、ちょっと待つのじゃ! 妾は神などという事は知らず!!」
「神が滅べと言ってんだから、さっさと滅べやぁ!!!!」
ドゴォォォォォォォォン!!!!
「ケッ! 狐如きが何様のつもりだ、ふざけやがってよう。
とはいえ、こいつじゃ勝てなかったか。
ついに俺様まで出てきたが、大丈夫かねえ?
ま、とりあえずは消えるか。次に降臨する時までな」




