0220
Side:足利尊氏
京の都に後醍醐帝が戻られ、三種の神器を光厳院に御譲りになられた。
そしてその三種の神器を持って、豊仁親王殿下は新たな帝に即位。
そこで初めて大きく色々と動き始めた。
オレは都の明法家である是円と真恵兄弟らと共に<建武式目十七条>を制定。
これを基準にして、新たな法体系を築いた。
つまり鎌倉、北条と続いた法の確立だ。
ここで仙太郎と高が色々と揉めたが、最終的にはオレの一存で決める形となった。
高はもっと柔軟なものの方が良いと言い、仙太郎はもっと厳しくするべきだと言う。
この両者は譲らなかったので、少々厳しめにしておいた。
しかし高の言う事も分かるので、柔軟にしなければならん部分は柔軟にしてある。
どっちつかずだと言われそうだが、現をしっかりと統治するには両方必要なのだ。
柔軟と言えば聞こえはよいが、軟弱だと舐められるだけになる。
そして厳しすぎると誰もついて来ぬ。
だからこそ丁度よい塩梅が必要なのだ。
そして建武三年、十一月二十六日。
この日、オレは正二位と権大納言となった。
これは頼朝公と同じ官職であり、オレはとうとうここまで来たのだなと思う。
正直に言って感慨などは無いし、特に喜びも無い。
足利の当主として成すべき事を成す。それだけだ。
黒金と桜も検非違使のままであり、今も京の都の見回りをしている。
賊退治だが、オレ達が京の都に居た時とは違い増えていたようなのでな。
それと鎌倉に文を出し、赤橋と越前の二人もこちらに呼ぶ事にした。
後醍醐帝も花山院に幽閉したし、少なくとも今の京を脅かす者はおらぬであろうからな。
今の内にこちらに呼び寄せておきたいのだ。
仙太郎も妻を呼んだようだし、これからは夫婦でおっても構うまい。
やっと落ち着けたのだからな。いや、長かったわ。
これからは、ゆるりとしておけるであろう。
オレは本拠をどこにするか悩んだが、ここ京の都は室町に決めた。
理由としては、京の都の奪還における主力は西国の者であったこと。
そして政の中心がまた鎌倉に行くのではないかという危機感が、京の都にあった事が理由だ。
やはり鎌倉に政の中心があった事は、畿内の者にとって相当の恨みとなっておるらしい。
そもそも、それこそが楠木殿達が最初に帝に合力した理由でもあるしな。
だからこそオレは政の中心は京の都だとする事にした。
これに関しては高も仙太郎も同じ意見であった。
両者共に、また政の場所を変えれば、それが原因で世が乱れるという意見だ。
これはオレの考えとも一致しているので、他の者の説得も難しくはなかった。
皆、我々が勝ったという形で終わらせたいのだ。
で、あるならば勝者として居られるからな。
また戦などを起こして、今度は敗者に転落したら………
などと考えれば反対はし辛い。
なにより皆が理解しておる、必ず勝てる戦など無いのだという事を。
だからこそ勝ったままにしておきたいのは当然のこと。
後は政を頑張れば済むだけだ。
戦よりは幾分か気楽なのは間違いない。
穏やかな日々が続くであろう、おそらく。
…
……
………
十二月も半ばになった。
寒さが厳しい今日この頃だが、後醍醐帝が花山院を脱出、大和の国は吉野に逃れたようだと報せが入った。
まあ、オレにとっては最早どうでもいい方でしかない。
実際に政をしているのはオレなのだ。
今更あの御仁が何を言おうと従う者は少ない。
津々浦々の多くの者が<二十分の一税>で己らを苦しめた帝だと知っておる。
である以上は、あの御仁を都合よく使いたい者しか集まるまい。
和議によって京の都に戻った時に、あの御仁の名は落ちたのだ。
完全にな。
そして落ちた者の名は二度と浮かび上がらぬ。
それこそが古くから変わらぬ世の常である以上、あの御仁が何を言おうと大した意味は無い。
戦は続くかもしれぬが、オレや仙太郎が出る戦にはなるまい。
ならば下の者達の功となってもらえばよいだけだ。
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Side:神守黒金
今日は建武五年八月十一日。
この日、又太郎は正式に帝から征夷大将軍位を受け取った。
つまり又太郎が武家の棟梁であり、頼朝と同じく津々浦々の武士を差配し、政をする者だと認められた訳だ。
あと、何故か僕と桜には官位が与えられてる。
僕は従三位になり、桜は正四位上となった。
なぜ僕が公卿になってるのか理解できないけど、官職は元のままだ。
つまり右衛門権佐と検非違使だね。
そして全てが終わり、僕達も住まわせてもらってる室町の屋敷に戻っている最中に出た。
何かと言えば、眼の力がだ。
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足利 尊氏 男 三十三歳
体力・二十八
霊力・二十九
術技・二十四
知恵・三十一
知識・三十二
運勢・普
ようやくこの男も征夷大将軍になったか。これでそなたがこの者の近くにいるのも終わりだ。ここからは下野の国は那須まで行け。そこに玉藻が封じられし殺生石がある。あやつは復活する寸前だ。それまでに行き、ヤツを完全に滅ぼすのだ。ただし危険な為、そなた一人で行け
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つまり僕が又太郎の下に居るのはこれで終わりってわけか。
神様がそう言うのであれば仕方ないね。
その事を又太郎や桜、それに桃にも言っておかなくちゃ。
神様が危険だって言うなら、相当の相手だろうしね。
僕は室町の屋敷に戻ってゆっくりしている皆の前で、さっき見えた事とこれからの事を話す。
「つまり黒金は兄上が征夷大将軍になるまで見守る役目というか、兄上の命を守る役目にあったという事か。
そしてそれが済んだから、新田を操っておった玉藻という妖怪を退治に行けとは……」
「しかも下野の国に居たとはな。
どこに居るのかと思っていたが、やはり新田に鎌倉で乗り移ったように関東であったか。
元々稀人が倒したと言われておったが、それでも石に姿を変えただけであったか?
その所為で未だに生きておったとはな」
「封印したとも言われていますし、様々な話のある妖怪です。
既に古い時の事など詳しくは分からなくなっていますからな。
何が本当であったかはともかく、これで黒金殿が討伐してくれるのであれば安心です。
神様が言われているのですから、おそらく大丈夫でしょうし」
「まあね。
とにかく桜と桃は戻ってくるまで鹿野邸で厄介になっててよ。
葛葉も桜が居てくれると助かるって言ってたし」
「そうね。
この室町の屋敷も割と色々なヤツが来るし、結構下卑た目を向けて来るヤツが居るのよ。
向こうはそもそも女性が多いから気楽なのもあるし、向こうで厄介になる方がいいかも」
「まあ、桜殿の美貌であれば……ねえ?」
「ええ。何年経っても変わらず、肌の張りも艶も素晴らしいまま。
妖怪になりたいという者が居ると聞きますが、あの美貌が手に入るのであれば分からなくもありません」
「でも妖怪になったら、おそらく最初の弱い時に喰われて死んじゃうけどね。
生き残れる者は極僅かだからさ」
「あー、それは確かにそうだな。そうそう甘くはないという事であろう。
そなた達も冗談なのであろうが、思っている以上に妖怪は殺されるから止めておけ。
しかも最初は考える事も出来ず、相手を襲うだけの獣となってしまうらしいからな。
考えて戦う事すら出来ん」
「しかも桃と同じで、長く生きなきゃ強くもなれないしね。
強くなれないなら獣のままよ。
人間から妖怪になれるなら、最初から理性はあるのかもしれないけど、そんな方法なんて聞いた事もないわ」
「ま、諦めた方がいいね。
碌な事にならないし、妖怪だっていうだけで殺される事も多いよ。
陰陽師が居るんだからさ」
「「あー………」」
その一言で納得したようで、諦めてくれたようだ。
流石に美しさの為だけに妖怪になるのはねえ……駄目でしょ。




