0209
Side:足利尊氏
「攻めろ攻めろ攻めろ攻めろ攻めろ攻めろ攻めろーーーっ!!
賂を貰って私腹を肥やす者を誅殺するのだーーーっ!!!」
「「「「「「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」」」」」」」」」」
「押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せーーっ!!
敵は私腹を肥やす悪党、菊池なにがしぞーーーっ!!
我らが誅殺してやるのだ!!」
「「「「「「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」」」」」」」」」」
よしよし。
敵の前衛は怯えておるし、こちらの気迫に負けておる。
三千の兵でも二万に勝てるという事を見せつけてくれようぞ。
そうすれば九州において邪魔な者はおらなくなろう。
菊池は残るかもしれぬが、それ一家だけであれば問題ない。
「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉっ!!!!」」」」」」」」」」
うん? ………流れが変わったな。
オレが思っていた通り、向こうの内部が崩れたようだ。
こうなれば完全にこっちのものよ。
後は押し潰してしまえばよい。
意気軒高なこちらと、内側から崩れて混乱する向こう側。
勝敗は既に決したな。
「敵は中から崩れたぞーーーーっ!!
菊池なにがしを許すな、ここで殺してしまうのだーーーっ!!!」
「「「「「「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」」」」」」」」」」
「きさんら、薩摩もんの意地ば見せい!!
ここで立つんじゃあ!!!」
「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」」」」」」」」」」
「ワシらも続くんじゃあ!!
菊池ば叩き潰せい!!!」
「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」」」」」」」」」」
おっと、オレが思っていたよりも多くの者が味方になったぞ?
後でこちらに誘おうと思っていたのだが、こちらの想像以上に菊池なにがしは嫌われておったらしいな。
そうでなければ、ここまで一気に内部が崩れたりはすまい。
オレ達も菊池を攻めて終わりだな。
この戦は。
…
……
………
結局だが、蓋を開けてみれば大した損害も受けていなかった。
結果、オレ達は大勝と言えるほどの大勝ちをした事になる。
特に三千の兵で二万に突撃して大勝したのだ、この結果は大きい。
このままの勢いで九州を傘下に収める。
そこまで時も掛からずに済もう。
ここからは仙太郎と高にも頑張ってもらわねばならん。
が、菊池を打ち破った以上は抵抗する者もおるまい。
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Side:楠木正成
あれから一月ほど。
ようやく新田の病は回復したようだが、時すでに遅かったようだの。
京の都に報せが届いたが、足利殿は九州を地盤として傘下に収めたらしいわ。
筑前の国は多々良浜で大勝し、その勢いで九州を制圧。
帝側の者をほぼ寝返らせておる。
「今も抵抗しておるのは、菊池なにがしという者だけか。
打ち倒したのではなく寝返ったというのが全てじゃの。
やはり<二十分の一税>が重いわ。
アレの所為で九州の武士が足利に寝返ったと言っても過言ではあるまい」
「そうじゃろうの。
そして新田が寝込んでいる間に、足利殿は完全に息を吹き返した。
遂に天の時が来たようじゃの。
今までは関東と畿内という形であったが、そこに九州が加わった。
ならば西国も向こうに味方するかもしれん。
そうなれば……」
「こちらの味方は畿内と陸奥しかないかもしれんのか……
それではどう足掻いても勝つ事など出来んぞ。
兵力の差が違い過ぎる。
だいたい元々から畿内と陸奥以外は兄者の言う通り日和見なのだ。
その連中が向こうにつくかもしれん」
「いや、つくであろう。
誰も彼もがあの重税を嫌がっておる以上、足利殿が勝てるならば足利殿につくに決まっておる。
ワシらとて帝に近くなければ足利殿につくであろう?」
「まあ、それは……兄者の言う通り、そうだな」
「それが全てよ。
畿内の武士の中でも、足利殿に従いたい者は多かろう。
当たり前じゃが重税を払いたい者などおらんのだ。
あの愚かな重税さえなければ、ここまでにはなっておらぬというのに……」
「今さら言っても遅いが、それでも愚痴として言わねばならぬほど腹立たしくもある」
「新田がそろそろ出立するであろうが、果たして播磨の国を抜けられるのやら。
赤松円心、なかなかの戦上手じゃぞ」
「無理であろう。
あの男は突撃する事と夜襲が得意なだけだ。
鎌倉を落としたのも足利家の助力があり、足利の長男を御輿に担いだからであろう?
そうでない後、あの者が戦で目立った功を上げたか?
兄者が突撃を提案した前の戦ぐらいであろう」
「そうなのだよなぁ……
戦は勝たねばならんが、あの男は勝った事が極めて少ない。
そして勝った時も大抵は誰かの力の御蔭じゃ。
あやつの力のみで勝った事は無い。
未だに兵を集める時は帝の御名で集めておるしな」
「新田という名では兵が集まらぬのだから仕方ないが、足利とは対照的だな。
向こうは足利の名だけで、兵のみではなく諸将まで集まる。
随分な違いだ」
「九州を平定した足利殿は、必ずや京の都に来る。
その時にどうするかだが、嫌な予感しかせんのう。
最悪を回避するには、足利殿との戦に出るしかないか」
「ワシらの首で、何とか子や孫の事は助けてもらうしかないな。
それをするにも戦に出ねばならんとは……」
「仕方あるまい。
敵前逃亡などという汚名を背負っては、子や孫が苦しむ。
我らは立派に戦をして果てねばならぬ。
やはり稀人が味方しておるという意味を、もっと考えるべきであった」
「子や孫には言い聞かせておくしかあるまい。
文にワシと兄者の連名で、血判でも入れておくか?
稀人には敵対するなと」
「そうじゃの。
子々孫々が同じ間違いをせぬ為にも、ワシらの文が役に立つなら書いておかねばなるまい。
願わくは子孫が間違わぬように」
そう思いを込めて文を書き、血判を七郎と共に押した。
その後、その文を家臣に持たせると、何故か帝から呼び出しがあった。
おそらくは足利殿の事であろう。
「楠木左衛門尉検非違使正成。
お呼びにより罷りこしましてございます」
「よう来てくれたな、楠木よ。
早速じゃが、そなたに聞きたい事がある。
九州にて足利武蔵守が再び挙兵したとの事じゃが、知っておるか?」
「はっ! それがしの所にも報せがございました」
「そうか………それで、この後どうなる?
やはり京の都に攻め上ってくるか?」
「それは間違いないと思いまする。
それがしの所に来た文にも、九州の武士たちが寝返った一番の理由は<二十分の一税>の所為だったと書かれておりました」
「なんという事を申すのだ、この痴れ者めが!!」
ガンッ!!
公卿の一人がワシに笏を投げつけてきたが、どうでもよい。
当たって痛いが、その程度でもある。
「やめぬか!!
楠木は忠節を尽くしてくれておる者ぞ!!
勝手な事をするな!!」
「………」
ワシの方を射殺さんばかりに睨んできておるが、コヤツか?
帝に讒言を致しておる者は。
「楠木よ、やはりそこまで<二十分の一税>は厳しいのか?」
「そうでなければ寝返りなど致しませぬ。
北畠卿も申されておりましたが、皆飢えて死ぬぐらいであれば刀槍を持って立ち上がりまする。
どうせ死ぬならば、死なば諸共。
死兵、つまり生きながらに死んでいる兵となってしまうのです。
これらの兵は命を捨てて殺そうとしてくる為、戦場では一番恐れられております」
「…………つまり?」
「<二十分の一税>は、そのような死兵を作る政であったという事でございます。
やがては畿内の者も叛旗を翻えしましょう。
重税で苦しんでおらぬ方には分からぬでしょうがな」
「「「「「………」」」」」
ふん、黙ったか。
己らがやっておった事がどういう事か、ようやく理解したと見える。
遅いわ!!




