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Side:楠木正成
「「「「「「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」」」」」」」」
前の方で新田殿の軍勢が攻めておる。
我らは意図的に一ヶ所に固まっておるのだが、これは敵に奇襲などをされぬ為だ。
そして現在攻撃しておるのは、足利軍が篭もっておる円城寺となる。
新田は必死に突撃を何度も繰り返しておるが、やはり黒金殿達の矢で射殺されておるみたいじゃな。
あれは反則に近いからのう、だからワシは先陣を言われたら全力で断る気であった。
北畠卿もあの恐ろしさは知らぬみたいじゃからのう。
普通の戦と考えると大間違いなのだが、どうにも理解は出来んのであろうな。
相手が伝説の稀人であるという事を。
そこまで分かっておったら、迂闊な攻めなどせぬがな。
全軍で一気に突撃せねば、死体が増える一方だ。
「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」」」」」」」」
また突撃しておるが………駄目じゃな。
あの弓矢でどんどんと射殺されておるわ。このまま続けばかなりの被害となるぞ。
それでも北畠卿はやらせるのであろうがな。
それにしても、己の家臣ではないので如何様でもよいという態度はいかん。
北畠卿も公卿の家だから仕方ないのかもしれんが、あの態度は家臣達にも見られておるのだがな。
あまり良い事とは思えぬが、あれで従っておる者達は納得するのであろうか?
己らにも返ってくるのだぞ?
家臣を大事にせぬ者に先は無いと思うがな。
とはいえアレで陸奥が纏まっておるのであれば、問題はないのかもしれん。
ワシがいちいち口を出す事でもないし、口を出そうものなら何を言われるか分からんしの。
「「「「「「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」」」」」」」」
また突撃しておるが、徐々にこちらが優勢になっておるか?
敵はなかなかに反撃をしてきておるが、やはり数の差は覆せぬようじゃな。
しかしてそれは被害に目を瞑れば、という事でもある。
相当に被害が出ておるのはここからでも分かるからのう。
新田は構わんと思うのかもしれぬが、ワシは家臣をあたらに死なせるは御免被る。
なのでワシならあんな事はせん。もっとじっくり慎重に攻める。
しかし新田は鎌倉を落とした者でもあるしの、なればああいう攻めも正しいのかもしれぬ。
それでも被害の多さに、ワシは目を瞑る事が出来んがな。
「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ」」」」」」」」」」
またもや突撃じゃ。
それでも少しずつ押しておるのは間違いないし、このまま続けるしかなかろうな。
南無、安らかに眠れ。
…
……
………
円城寺を落とした新田は、続いて足利殿の弟の軍、そして足利家の執事の軍も蹴散らしおった。
凄まじい快進撃じゃが、その反面その全ての戦場で黒金殿の矢の猛攻を受けておる。
すでに鎌倉攻めの頃からの重臣が次々死しておるようじゃが、それでも前へと突撃を繰り返す。
まるで獣のように突撃しておるが、その恐ろしさで敵が蹴散らされておるのであろう。
ワシとて被害を考えぬような突撃になど晒されとうもない。
ワシが足利軍ならさっさと逃げておるわ。
…………もしかして足利殿の軍勢もそうなのか?
幾ら新田が突撃しておるとはいえ、こうも蹴散らせるのはおかしい気がするぞ。
もし最初から敵を削るのが目的であったなら?
ワシなら黒金殿に頼んで最初から………最初から敵軍に矢を浴びせて削ってもらう。
それは間違いない!!
しまった、完全に削られておるぞ! 向こうはそもそも負ける前提でおるのだ。
最初からこちらの兵を削り、出来得る限り出血を強いる戦い方をしておる。
その所為で新田が勝っておるように見えておるだけでしかない。
仮にそれを言うたところで、北畠卿が効く耳を持つか?
………聞かぬであろうなぁ。
武士の事を見下して下に見ておるくらいじゃ、これでは進言など受け入れまい。
向こうは一致結束して戦い、こちらはバラバラか。どうにもならんな。
足利殿を京の都から追いやれたとしても、必ずや再び攻め上がってこよう。
それをさせぬ為には殺すしかない。
しかし稀人が付いておる者を殺せるとは思えん。
未だにそれだけは出来るとは思えんし、考えても良い方法が思い浮かばぬのだ。
…
……
………
新田が突撃に突撃を繰り返し、ついに都まで戻ってきた。
足利軍は敗退して散り散りに逃げたので追ってはおらぬ。
ワシらの目的は京の奪還じゃからの。
しかし……本当に敗れて逃げ去った者らには見えんかったな。
何というか、皆が素早く逃げたというか、最初から逃げる事が決まっておった。
そう、ワシの家臣達を彷彿とさせる逃げ方であったのだ。
となると、やはりワシの考えは間違ってなかったのであろうな。
このまま京の都に入って、足利殿が何もしておらぬとは思えぬ。
新田が京の都に入ったが、果たして無事に京の都から追い出せるのか?
いや、足利殿は元々から出る気かもしれん。
新田はどれだけ被害を抑えられるか、か。
このまま見守るしかないが、果たして無事に勝てるかは疑問じゃな。
家臣、重臣が全滅しかねんぞ。
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Side:足利尊氏
「よーし、よーし、引き込んだの。
では側面から突撃じゃあ!!」
「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」」」」」」」
四国からの兵を纏めて救援に駆け付けた細川定禅だが、見事な采配だ。
策そのものも細川のものだが、実に素晴らしい。
新田の軍の攻撃を巧みにいなし、そして側面から攻めて瓦解させておる。
京の都が碁盤の目のようになっておるからでもあるが、それを上手く使うておるな。
「素晴らしいな、細川よ。
そなたの此度の智謀は今張良とも言うべきものぞ。
そなたの名は京の都で轟くのではあるまいか?」
「ありがとうございまする。
それがしの智よりも、京の都の分かりやすい道と、相手の猪武者ぶりに助けられております」
「いやいや、左様に謙遜せずともよい。そなたは立派ぞ。
それにここまで出来れば十分であろう。
元々は可能な限り敵に出血を強いる為の戦だ。
御蔭で随分と敵を打ち倒せておる。
上手くいくであろうよ」
「京の都を手放してでも、敵を削るのは正しいと思いまする。
この一度で戦が終わる訳でもありませぬし、敵を削り続ければ、やがて敵も抗し切れなくなりましょう。
それに………あの弓矢ですからな」
「「「「「「「「「「!!!」」」」」」」」」」
ドドドドドドドドドドッ!!!
「うむ、恐ろしいまでの威力であり、今日一日で如何ほど敵を削ってくれたか分からぬ。
このまま敵を削り続ければ、最後にはこちらが勝つ。
弓兵も頑張ってくれておるのだが……」
「威力もさる事ながら、皆中と言えるぐらい当てておりますからな。
恐ろしいと共に頼もし過ぎまする」
「ああ」
さて、京の都に入ってきた新田はどこまで頑張れるかな?
オレはひたすらに削る事しかせんぞ。
お前とまともに戦ってやる気などない。
妖怪に操られている以上、お前の動きは分かりやすいのだ。
既に仙太郎も高も決めておいた場所まで逃げて兵を休ませておろう。まだまだ戦はこれからよ。
とはいえ怖いのは楠木殿だ。
未だに出てきておらぬという事は、後ろで見ておるだけなのであろう。
それが一番怖いわ。
北畠卿もよく分からんし、ここまではオレの描いた通りになっておる。
問題はここからだが、何もなくオレ達の勝利………とは、ならんよなぁ。
なってくれればよいが、流石にそれは甘すぎるというものよ。




