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式神と霊兵  作者: 田中始め
第二章 南北朝編
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 Side:新田義貞



 「行け行け行け行け行け行け行けーーーっ!!

 鎌倉の者など何するものぞ、我らの強さを思い知らせてやれーーーっ!!」


 「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」」」」」」」」」」


 箱根の地で戦っておるが最悪だ。

 隘路(あいろ)で道が使いにくく、その所為で味方の状況を確認する事すら(まま)ならぬ。

 前線に物見を遣わせて確認しておるが、とてもではないが分からん。


 (しら)せが錯綜(さくそう)しておるのだ。

 その所為で、今、何が、どのようにして、起こっておるのか。

 これがサッパリ分からず、そのうえ当然ではあるのだが、戦というものは絶えず動き続ける。


 故に物見が知らせた事が既に遅いとなっておる始末。

 慌てて新しい命を下しても、既に戦の状況が変わっておるでは意味が無い。

 何故(なにゆえ)このような隘路(あいろ)に大軍を持ってきたのか。

 己の頭の悪さに情けなくなる。


 そして相手はこちらを防ぎながらも、どんどんと削ってきておるようだ。

 山間(やまあい)から突如奇襲のように矢の雨を降らせてきたりと、こちらの裏を掻くように戦ってきおる。

 その所為もあり、思っておる以上に被害が出ておるのだ。


 まさかここまで好き勝手にされるとは思わなんだし、一つの失敗でここまで酷い状況になるとは思ってもおらなんだ。

 これ以上は駄目であり撤退するべきだと思うが、しかしここで負けたとなれば鎌倉が遠のくと思うワシもおる。


 ワシはこのようなところで止まる男ではない。

 鎌倉に宮将軍を迎え、ゆくゆくは排除し、そして第二の<鎌倉殿>になる男なのだ。

 それをみすみす逃すというのか? そのような事があって堪るか。

 ならば考えねばならん、ここで敵に打ち勝つ策をだ。


 「攻めろ攻めろ攻めろ攻めろ攻めろ攻めろ攻めろーーーっ!!

 敵は我らを恐れて篭もっておるだけぞ、敵を貫いてしまえーーーっ!!」


 「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」」」」」」」」」」


 士気は高いが、果たしてそれだけで隘路(あいろ)のここを突破できるのか?

 いや違う、勘違いするな。

 突破出来るのか、ではない、突破するのだ。

 鎌倉はすぐそこに見えておる。

 一度ワシが攻め落としたのだ、再び攻め落とすなど容易い。


 にも関わらず、こんな所で止められてしまうとは。

 おのれ足利、最後まで邪魔をするのは貴様か!

 大人しく我が新田の前に(こうべ)を垂れろ!

 所詮は足利荘の豪族の分際で!!


 「かかれ、かかれ、かかれ、かかれ、かかれ、かかれーーっ!!

 敵など攻め落としてしまえーーーっ!!

 しょせんは東国の弱兵ぞーーーっ!!!」


 「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」」」」」」」」」」


 …………駄目だ、良い策が思い浮かばぬ。

 こういう時には義助に聞けば、と思ったが駄目か。

 義助は竹之下の方に行っておって、ここにはおらなんだのだったな。

 チッ、肝心な時にはおらんとは。


 ん? 義助だと?

 そうだ、義助の方から攻めさせればよい。

 上手くやれば敵軍の後背を突く事が出来る。

 ならばすぐに物見の者に走らせねばな。

 竹之下の方には然したる軍勢もおらぬであろうし、今頃は義助が蹴散らしておろう。


 尊良(たかよし)親王殿下が功を奪ってゆくであろうが、ワシの功ではないので如何様(いかよう)でもよい。

 それに文句を言ってきたら北畠の所為にすればよいのだ。

 雪深い所為でいつまで経っても来んのだからな。


 そもそも鎌倉を目指すならば早くに南下せねばならぬというのに、雪深い所為で鎌倉に向かう我らに間に合わぬなど愚かに過ぎよう。

 尊良(たかよし)親王殿下の名を出せば、北畠とて黙るしかあるまい。


 向こうは従二位鎮守府将軍なので、ワシからは何も言えなんだからな。

 此度は公家の如き嫌味も加えて言うてやろう。

 そもそも戦に間に合いませんでしたなど、恥でしかあるまい。

 盛大に嫌味を言うてやるわ。


 「進め進め進め進め進め進め進め進めーーーっ!!

 臆するな、進めば我らの勝ちぞーーーっ!!」


 ………駄目だな、遂に高かった士気まで落ちた。

 兵が声を上げて鼓舞すらせぬようになれば、こちらの士気が落ちている事など丸分かりだ。

 これでは勝てる戦も勝てぬ。


 えぇぃ!! 重ね重ね敵は面倒な事をしてくれる。

 山間(やまあい)に隠れたり隘路(あいろ)を上手く利用しおって!

 そのうえ亀のように縮こまって防いでおる所為で、何度も突撃しておるのに突破が出来ん。


 敵とて箱根が抜かれたら終わりだという事が分かっておるのであろう。

 だからこそ必死に守るのは分からぬではないが、そもそも我らは帝の命を受けた官軍ぞ。

 さっさと(こうべ)を垂れて負けを認めるがいい!!

 そうすればワシ直々に足利の者など根切りにしてやるのだ。

 早う負けを認めろ!!



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:足利尊氏



 物見の報告では、仙太郎達は箱根の隘路(あいろ)で敵軍を防いでおるようだ。

 上手くやっておるらしく問題は無いとのこと。

 なのでオレ達は休んだ次の日に追撃をしておる。

 大軍なので進みは遅いが、数は少ないものの幾つかの者を先行させた。


 とりあえずで追撃をさせておるが、どこまで敵が進んだかは不明だ。

 見つかるとよいのだが、物見の報告は未だない。

 夜に動かす訳にもいかぬから仕方ないのだが、それにしても遅いな。

 と思ったら来たか。


 「報告! 敵軍は佐野山にて陣を敷き、休息をとっておるようでございます。

 また先行している者達に伝えましたところ、すぐに攻めかかるとの由にございます」


 「そうか。あの者達には攻められそうなら攻めてよいと言うてある。だから構わん。

 それより我らも佐野山へ行くぞ!!」


 オレがそう声を掛けると、軍が動いていく。

 オレはワザと軍の一番前を進んでおるが、これは意図的にそうしておるだけだ。

 普通は総大将が先頭を進んだりなどせぬが、黒金(くろかね)がおるからな。

 最悪は影兵に守ってもらえる。


 そして命の危険が無いならば、総大将が先行する形の方が士気が上がるのだ。

 命を懸けておるのは兵卒だけではないと見せられるからな。

 なんだかんだと言って大きな意味を持つし、実際に士気は高い。


 さて、佐野山に向かって進軍するか。


 …

 ……

 ………


 まさか、こんな事になっておるとはなぁ……

 流石のオレも想像すら出来なんだわ。

 それも仕方がないとは思うがな。


 「えい! えい!」


 「「「「「「「「「「おーーーっ!!!!」」」」」」」」」」


 「えい! えい!」


 「「「「「「「「「「おーーーっ!!!!」」」」」」」」」」


 到着したら味方が勝鬨(かちどき)を挙げておるなど、流石に予想外に過ぎよう。

 そのうえ勝った理由がなぁ……


 「それがしは大友貞範でございます」


 「それがしは塩治高貞でございます」


 この両名がこちらに寝返った為、敵軍は大混乱したらしい。

 そこに先行させていた者達が突っ込み蹴散らしたので、敵は()()うの体で逃げて行ったそうだ。


 確かに内部から切り裂かれれば大混乱に陥るのも仕方がないと思うが、我が軍にもそれが無いようにと考えておかねばならんな。

 中から切り裂かれたら、大軍こそ混乱して収拾がつかぬようになる。


 「二人ともこれから頼む。

 我らはさらに追撃を致す事になる故、そのつもりで共に来てもらいたい」


 「「ハハッ!!」」


 さて、敵軍から裏切者を出せたのは大きいが、箱根の方はどうなったのであろうな?

 こちらは進んで行くしかないが、仙太郎達が突破されれば終わりだぞ。

 後ろを取って潰した方が良い気もするが……


 しかし向こうは助力が無くても大丈夫だと言うておるし、悩ましいところだ。

 信じて任せるのも将の為すべき事ではある。のだが、どうしたものか?


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