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式神と霊兵  作者: 田中始め
第二章 南北朝編
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 Side:足利尊氏



 オレは仙太郎と千寿王を加えた後、さらに東へと向かって軍を進める。

 そして遠江(とおとうみ)の国は橋本において敵が待ち構えておったので合戦を開始。

 敵は頑張っておるが、多勢に無勢であるのと、黒金(くろかね)の猛兵が猛威を(ふる)っておる。


 一射ごとに敵兵がバタバタ死ぬが、一度で十の矢が飛んでくるのだ。それは嫌にもなろうもの。

 しかも無限に矢があり、途切れる事は無い。


 毎回思うが、ここまでの力を黒金(くろかね)に与えた神々は、黒金(くろかね)をいったい何と戦わせるつもりなのだ?

 ここまでの力が必要な相手というのが考えられんのだが、それはオレが色々な事を知らなさ過ぎるだけか?


 戦の最中に考える事ではないが、敵が既に敗走しておるので構うまい。

 流石に黒金(くろかね)に頼り切るわけにはいかんが、諸将も改めて黒金(くろかね)を理解したようだな。


 「相変わらずだな、黒金(くろかね)は。

 私も頑張って矢を射ったのだが、やはり違い過ぎるか。

 桜にも勝てぬし、別の事をした方が良いかな?」


 「それこそ指揮をすればいいんじゃないの? そもそも僕達は個で強いというだけで、指揮が出来るわけじゃないしね。

 それに足利家である以上、仙太郎だって指揮する側でしょ。

 だったら指揮で頑張ればいいじゃん」


 「まあ、そうなのだが………いや、そうだな。

 これからも兄上に助力する為、もう一段上のしっかりとした指揮を学ばねばならないか。

 今までも学んでは来ているが、私が指揮して勝てた訳ではないしな」


 仙太郎も下手ではないが、どうしてもオレとおるとオレが総大将になってしまう。

 その所為で上に立って指揮する経験が不足しておるのだ。

 そこさえ何とか出来れば、一人前の大将になれると思う。

 オレの弟なのだからな。




 オレ達は戦の後で兵を休息させ、その後は東へと更に進軍。

 今度は小夜にある小山にて戦があり、ここでは今川が敵将の名越を討った。

 どうやら名越の残党もおったらしいな。

 なかなかに様々な北条家に関わりある者を糾合しておるようだ。


 その後も更に東進。オレ達は駿河の国に入り、清見関で敵軍と合戦。

 相変わらず黒金(くろかね)の猛兵が猛威を(ふる)っておるので、敵は敗走。

 我らはそれを追いかける形で国衙(こくが)まで攻めたて、敵将の諏訪なにがしを討ち取った。


 ここで一旦大休止をとり、十分に英気を養ってから東へ。

 ついには相模の国は箱根まで来たが、流石に敵も簡単には通してくれぬようになったな。

 余程にこちらに負け続けたのが堪えたのか、かなりの軍を送ってきたのだ。


 さらに箱根では黒金(くろかね)の猛兵が使いにくい事もあり、なかなか敵の数を減らせないという形に陥った。

 それでも代わりに古兵が暴れておるので、相変わらず強いのだがな。

 そして何故か古兵を見て奮戦する諸将。ここはよう分からぬところだ。


 しかしそれでも今川兄弟が討ち死にするなど、かなりの被害が出てしまった。

 窮鼠(きゅうそ)猫を噛むと言うが、追い詰められた者達の抵抗は流石に激しい。

 そう簡単に勝てるわけではないが、それでも東ヘ進んで相模川へ。


 ここでも激戦であったが、我らは勝利をもぎ取り休息。十分に休めたら更に東へ。

 そして相模の国は辻堂にで諏訪と争う事となった。


 「押せ押せ押せ押せ押せ押せーーーっ!! 向こうは敵の首魁ぞーーっ!!

 討ち取れば、褒美の出る大将首じゃーーーっ!!!」


 「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」」」」」」」」


 やはり褒美の出る首というのは違うもので、あからさまに兵のやる気が(みなぎ)っておるな。

 もちろんここまで勝ってきておるというのも大きい。

 此度の戦も勝ちだと兵が思えば、奮戦もいたすというもの。

 特に褒美の貰える首があれば尚のこと頑張ろう。


 「行け行け行け行け行け行け行けーーーっ!! ここで叩き潰すのだーーーっ!!

 敵を逃がすな! 滅ぼしてしまえい!!」


 「「「「「「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」」」」」」」」


 このままならば我らが勝って終わりだな。

 総大将の北条の遺児はともかく、諏訪とか抜かす御内人(みうちびと)はここで始末しておかねばならん。

 賄賂で私腹を肥やしていた田分けどもなど、この世にはもう要らんのだ。


 だいたい蝦夷(えぞ)の蜂起も、貴様らのような者が賄賂を受け取りおかしな事をしたからであろうが。

 その事も忘れ、またぞろ下らぬ事を求めて決起したのだからな。

 確実にそれらの話を流布して、諏訪の名も含めて叩き潰してくれる。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:諏訪頼重



 おのれぇ! たかが御家人風情がここまでやるとは……!!

 我ら御内人(みうちびと)が得宗家を支え、再び北条の天下にするはずが、何故(なにゆえ)このような事になったのだ!!

 足利の愚かな弟を叩き潰し、そして当主の方も血祭りにあげるはずであったというのに!


 まさかワシの方が追い込まれるなど、そんなバカな事があって堪るか!

 おのれ、おのれ、おのれーーーっ!! 


 「とにかく急げ! なんとしても亀寿丸様をお守りいたすのだぞ!! 何があろうとな!!」


 くっ! ワシにはこの程度の事しか出来ぬ。

 もはや兵は散り散りになり、将も残っておらん。

 滋野殿や仁科殿も既に討ち取られてしまった。

 残っておるのはワシだけ。後は自刃する場所へと行くだけよ。


 …

 ……

 ………


 おのれ、宝戒寺め!! ワシは北条家の御為に立ったのだぞ!

 そのワシを寺の中に入れぬとはどういう了見だ!!


 くそっ! こうしている間にも迫ってきておる!

 仕方ない勝長寿院だ、あそこで果てるしかない!!


 辿り着き無理矢理に開けさせたが、あからさまに迷惑そうな顔をしておる。

 おのれクソ坊主めが!! 腹を召そうとしておる相手に対して、何と非礼なのだ!

 これだから寺や坊主は愚か者しかおらんと言われるのだぞ!


 我が諏訪の大社もそうだが、神のおられる地を汚すわけにはいかぬからな。

 自刃は寺でするしかない。


 後は頼むぞ、必ずや亀寿丸様を仰いで諏訪の家を盛り立てるのだ!!

 我が諏訪家が後の内管領(ないかんれい)外戚(がいせき)とならねばならぬ!

 頼んだぞ!!



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:足利尊氏



 諏訪という者が、鎌倉の勝長寿院で腹を切っておったそうだ。

 そして北条亀寿丸とやらは既に逃がされていたらしい。

 まあ、それに関しては仕方ないと諦めるしかないな。

 我らが鎌倉に入った時には既に遅かったのだからして、仕方がない。


 それよりも、ようやく鎌倉に帰ってこれたわ。

 いったい何年ぶりだ? 随分と帰ってきてなかった気がするが、やはりここがオレの故郷なのだとよく分かる。

 オレの全てが喜んでおるようだ。


 「旦那様、お帰りなさいませ」


 「うむ、やっと帰ってこれたわ。千寿王も無事だし、まことに良かった。

 それに本当に長く、オレも京の都で大変な思いを幾度もしたぞ。

 何度も鎌倉に帰ると言うたのだがな。

 帝が全く聞き入れて下さらぬ所為で、戦でもなければ帰ってこれなんだのだ」


 「お帰りなさいませ、旦那様」


 「うむ、越前もご苦労であったな。

 屋敷を守るも苦労したであろう。

 仙太郎が助けてくれたとは思うが、それでもオレを始め、多くの者がおらなくなってしもうたからな」


 赤橋や越前の顔を見ると、本当に帰ってきたのだと安堵する。

 オレに京の都は合っておらぬのであろう。

 ここ鎌倉が一番だし、もう京の都には行きとうもない。

 それにオレがおらぬでも上手くやれるであろう。


 もし文が来たら、素晴らしき公家の皆様方がおられましょう。

 とでも書けばよかろう。


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