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式神と霊兵  作者: 田中始め
第一章 平安編
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0018




 Side:黒金くろかね



 僕達は一度家に戻り、僕がさっさと捌いた後で塩を振っておいた。

 馴染ませるのに時間が掛かるみたいだし、その間に右京に戻って見回りだ。

 尚、葛葉くずはは僕がさっさと捌くので、ちょっと驚いていた。


 そして加護の力だと聞いて何故か半目になってたけど、アレは何故だったんだろうね。

 何か妙な表情をしてたけど、疲れてたのかな?


 「わたしもどの神かは分からないけど、どれだけ神が加護を与えているのやら? そう思っただけよ。

 やっぱり今代の稀人まれびとは過剰に加護を与えられていると見て、間違い無いでしょうね」


 「そうですか。とはいえ神々にも何かお考えがあっての事でしょう。

 黒金くろかね黒金くろかねですし、私はこのままでいいと思います」


 「まあ、それはね。

 そこはわたしも否定しないけど、何か大きな災厄でも起こるのかもしれないし、起こらないのかもしれない。

 何の意味も無く稀人まれびとが呼ばれるなんて事は無いから、何がしかはあるんでしょうけど……」


 「それは今考えても仕方のない事よ。

 それより見回りをちゃんとしましょう。収入源でもあるのだし」


 「そうですな。

 それに葛葉くずは殿のおっしゃっていた霊力を感じる方法も学ばねば。

 それが出来れば相当に楽になりますし、騙される事も減りましょう」


 「さっきの妖怪を利用した妖怪ね。いえ、組んでいたと言った方が正しいかしら?

 ああいう妖怪も最近は増えたと思うわ。

 さかしらな事をしてくれるけど、誰かが入れ知恵してるなんて事は無いし、いったいどうなってるのかしら」


 「やれ!」 「いけ!」 「そこだ!!」


 「何でしょう? 何かが争ってる?」


 「その割には声に緊張感がありませんな? とりあえず行ってみましょう」


 僕達は妙な声が聞こえる方に行く。すると、見えてきたのは数人の陰陽師だった。

 どうやら妖怪と戦っているらしいけど、何故か周りの陰陽師は助けもしない。

 それどころか「やれ」とか「そこだ」と言ってるだけだ。


 薄白い狼が黒い何かを噛み千切ると、薄白い狼の勝ちとなった。

 勝ったので大喜びしている陰陽師達。

 この人達はいったい何をしているんだろう?


 「ねえ、ここで何をしてるの?」


 「おお? さっきの見てなかったのか? 桔梗ちゃんが妖怪を倒したろうが」


 「ききょう?」


 「「「「あん?」」」」


 何か分からないけど、僕が「ききょう」と言った瞬間、陰陽師達が一斉に睨んできた。

 いったいどういう事だろう?


 「皆さん、止めて下さい。睨んだりしたらいけませんよ」


 「そうは言うがよう、桔梗ちゃん。

 このガキは桔梗ちゃんの事を呼び捨てにしたんだぜ?」


 「いえ、私の事を知らないだけだと思いますし、そんな事で怒らなくても……。

 あの、貴方達も陰陽師ですよね? そちらのお二人は直衣のうしを着ていますし」


 「あ、ああ。私は左京に登録している斯明かくめいと申す。

 今は賀茂家の御当主様より下京の全域を見回るようにと命を受け、許しを得て見回っているのだ」


 「私はつや。こう見えても賀茂家の者よ。

 ………いや、葛葉くずはも名乗りなさいよね」


 「えー……面倒臭いなぁ、もう。

 わたしは葛葉くずは。一応安倍家に関わりのある者よ」


 「ええ!? 賀茂家と安倍家の方ですか! それは凄いです!!」


 「「「「「チッ……」」」」」


 なんだろう、この人達なぜか悔しそうな表情で舌打ちしたね?

 何か納得できない事でもあったのかなぁ。


 それより今の内にておこうっと。

 この女の子が危険だとは思わないけど、確認はしておくべきだ。


 ―――――――――――――――


 芦屋 桔梗 女 十一歳


 体力・十一

 霊力・五十

 術技・十七

 知恵・十

 知識・十六

 運勢・普


 芦屋の一族の娘。この歳にて霊力は高いものの、それ以外はからっきしであり宝の持ち腐れであろう。自らを厳しき環境に置かぬ所為で、腕が伸び悩んでいる。このままでは平々凡々な陰陽師で終わるぞ?


 ―――――――――――――――


 「へー……君って芦屋の一族なんだ。

 なんか斯明かくめいに似てるね?」


 「えっ!?」


 「「「「「!!!」」」」」


 男達が急に僕に対して道丹の仲間みたいな表情をした。

 なので僕は素早く古兵を呼ぶ。


 「<古兵・勇壮猛夫>」


 僕は古兵を三人呼び出し、すぐに僕の周りを固めさせた。

 あの時とは違うからね、そう簡単に殺されたりなんてしないよ!


 「霊兵! しかも三体も!?」


 「「「「「!!!」」」」」


 「待ちなさい!! 貴方達が黒金くろかねに対して殺気を向けるからでしょう。

 自分達が先に仕掛けたのだと理解しなさい」


 「しかしな、このガキは桔梗ちゃんの身の上を何故か知ってる。

 身の危険があるから隠しているのにだ。

 そこはどう説明するってんだ」


 「ああ、それでか。

 黒金くろかね稀人まれびとでな、八意思金神やごころおもいかねのかみ様の加護を持っておる。

 その加護の目で見れば分かるのだよ」


 「「「「「「稀人まれびと!!!」」」」」」


 うわっ、五月蝿いな。いきなり大きな声を出さないでよ。

 それより戦わないなら古兵を仕舞うんだけど、どうしたらいいのかな?

 まだ微妙な感じがするしなぁ……。もうちょっと出しておこう


 「うむ、稀人まれびとだ。

 だからこそ、そこのお嬢さんの事が分かったという事だな。

 それより私に似ているとはどういう事なのだ?」


 「斯明かくめい芦屋あしや道満どうまんが祖先でしょ?

 この子もそうだし能力も同じ感じ。霊力だけが高くて他が低いんだ。

 それに厳しい環境に身を置いてないから、このままだと平々凡々な陰陽師にしかなれないってさ」


 「なんだと!?」


 「まあ、待て。

 黒金くろかねが見ているものは神様からの神託とも言える。

 つまりこのままだと平々凡々な陰陽師になってしまうという事だろう。

 それを避けるには、厳しい環境に身を置く必要があるのではないか?」


 「でしょうね。

 そもそも周りに助けてくれる者が居て、本当に殺し合いが学べるかといったら無理よ。

 結局は誰かが助けてくれるんだもの、殺し合いの必死さも学べないわ。

 そしてそれを知らない者はどこかで死ぬ。

 貴方達も分かってるんじゃないの?」


 「そ、それは………」


 「後輩だからか芦屋の子だからか知らないけれど、貴方達が甘やかした所為で死んだら責任をとれるの?

 貴方達はそれで納得できるの?」


 「「「「「………」」」」」


 「別に今すぐ殺し合いをさせろとは言わないけれど、もうちょっと普通の陰陽師と同じように厳しい指導もしてあげなさい。

 本人の為にもならないわ」


 「能力はそもそもどうだったのだ、黒金くろかね?」


 僕は斯明かくめいに問われたので、ききょうという子の能力を語った。

 それぞれの男達のも言ってあげたけど、全部が二十を超えてるぐらいだったので、大して強い陰陽師じゃなかったね。


 「霊力が高いわね。確かにこの歳で五十を超えてるのは凄いわ。

 既に私に近いくらいあるなんて」


 「ふふん。桔梗ちゃんが優秀なのは当然だろう。

 それに賀茂家の方と変わらねえんだから、芦屋の血は下賤なんて事は無えんだよ!」


 「それ誰が言ったの?

 賀茂家でも安倍家でも芦屋あしや道満どうまんは認められてるわよ?

 下賤なんていう言葉を聞いた事が無いんだけど?」


 「なにぃ! 賀茂家や安倍家に比べれば、所詮は平民の下賤な家だって言ってるじゃねえか!

 賀茂家や安倍家の連中はよう!!」


 「………もしかして下っ端の連中がそんな事を言ってるのかしら?

 少なくとも本家で芦屋の一族を蔑ろにする者なんて居ないわよ?

 御当主様だって芦屋流が広まって陰陽師が増えたのは評価してるし」


 「賀茂家や安倍家に従ってるだけの連中が、芦屋を見下す為にそんな下らない事を言ってるんでしょうね。

 バカバカしい」


 「………はぁ。何だか気が抜けちまったぜ。下っ端の連中かよ、下らねえ。

 オレ達も芦屋の方々から陰陽術を習ったんでな、芦屋流や芦屋の一族がバカにされるのは許せねえんだ」


 「それはそうでしょう、お世話になったのなら特にね。

 それと芦屋のお嬢さんを甘やかすのは違うけれど」


 「うぐっ!」


 確かにそうだね。お世話になったからって甘やかすのは違うと思う。

 それは良い事じゃないよ。


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