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式神と霊兵  作者: 田中始め
第二章 南北朝編
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 Side:諏訪頼重



 小手指ヶ原(こてさしがはら)で今川を破り、今は槍の穂先に首を突き刺して進軍しておる。

 裏切者の末路を見せつけねならぬからな。

 こうする事によって、裏切りは悪だと示さねばならぬ。

 決して許してはならんのだ、裏切りなどな。


 「謀反人である本人ではないが、謀反人の末路など斯様(かよう)なものよ。

 決して許してはならんのだ、必ずや誅殺せねばならん。

 裏切者がのうのうと生きておるなど、絶対にあってはならぬ。

 それだけは、あってはならんのだ」


 「うむ。我らが鎌倉を奪った後は、足利の首を穂先に突き刺してくれるわ。

 そして裏切者の末路を見せるのだ。

 2度と北条家を裏切らせぬ為にも、必ず行わねばならぬ」


 「その通りよ。我らは北条家の御為に立ち上がったのだ。

 それ故に裏切者は必ず誅殺せねばならぬ」


 うむうむ。滋野殿も仁科殿も同じようで何よりじゃ。

 後の事は色々と揉めるかもしれぬが、まずは一致結束して事に当たらねばならぬ。

 その為にも、愚か者の足利を潰し、鎌倉を奪還するまでは揉めるわけにはいかぬ。

 協力して事に当たらねば。


 我らは武蔵府中を攻めようと思うていたが、下野(しもつけ)の国から小山なにがしという者が攻めてきおった。

 とはいえ敵は疲れ切っておったからな、こちらから襲ってやったわ。

 府中などいつでも攻められる。まずは敵軍を潰すが先よ。


 「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」」」」」」」


 「敵は数が少ないうえに、ここまで急いで来たのであろう。疲弊し切っておるな。

 ハッキリと申せば相手になどならぬ。

 いったい何をしに来たのか、よう分からん奴らじゃ。

 わざわざ負ける為に来たのか?」


 「そう言うてやるな。

 奴らも急いで駆け付けましたという功が欲しいのであろう。

 ここまで大敗すれば功になどならぬがな。

 それでも功になるなら急いで駆け付けるも分からなくはあるまい?」


 「まあ、それは分からぬでもないが、これでは責をとらねばならぬくらいぞ。

 であるならば、休み休み来ればよいものを。

 ………もしかして我らの勢いから焦ったか?」


 「それはあろうな。我らは順調に進軍しておるし、数も膨れ上がっておる。

 これだけ多くの者が不満を持っておったのだと分かるが、だからこそ敵が焦ったというのはあろう。

 ここまでの軍勢になるとは思ってもおらなんだはずだ」


 我らの軍勢は既に一万を超えておる。

 ここまでの数に至ったのは、当然ながら不満と裏切者に対する義憤よ。

 故に我らは結束して事に当たっておるのだ。


 愚か者どもを誅殺する為に立ち上がった者が、負ける事などない。

 諏訪大明神も御覧になられておられようぞ。

 我らの正しさをな。


 …

 ……

 ………


 下野(しもつけ)の小山なにがしを破った我らは、武蔵の国の国衙(こくが)も焼き討ちにした。

 ここの国司は我らが討ち、首を晒しておいてやったわ。

 それぞれの国には北条家が置いた守護だけがおればよいのだ。

 京の都の田分けが置いた国司など要らぬ。


 重税に励む愚かな帝の選んだ者など、なお要らぬわ。

 我らは再び北条家の世とするのだ。

 皆が苦しんでおるのは誰の所為であるか、それを考えれば分かろう。

 愚かな帝と裏切者の足利の所為ぞ! 全てはそやつらが元凶なのだ!


 そして井出の沢まで来た時、遂ににっくき<丸に二つ引き>の家紋を見つけた。

 あれこそ間違いなく足利の家紋。もしかしたら足利左馬頭かもしれぬ。

 愚かにも鎌倉を戦場(いくさば)にせぬ為に出て来たのかもしれん。

 ここで会ったが運の尽きよ。


 「皆の者!! 敵が家紋は<丸に二つ引き>ぞ!

 あれは間違いなく謀反人たる足利の家紋!

 今こそ裏切りた謀反人を誅殺するのだーーーーっ!!!」


 「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」」」」」」」」


 「行け行け行け行け行け行け行け行け行け行けーーーーっ!!

 足利など何するものぞ! 叩き潰すのだ!!!」


 「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」」」」」」」」


 「押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せーーーーっ!!!

 敵を正面から叩き潰すのだ!! 下らぬ小細工など要らぬ!

 天下万民が我らの正義を待っておるぞ!!」


 「「「「「「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」」」」」」」」


 押して押して押し続ければ勝てる。

 何を考えて出て来たのかは知らぬが、愚かに過ぎるわ。

 ここで確実に首を獲って、槍の穂先に掲げてくれる。


 我らこそが真に忠義ある武士。

 北条家を真に支えるのは御内人(みうちびと)なのだ!

 御家人など要らぬ、恩も忘れて裏切る者など要らぬわ!!


 犬でも恩を忘れぬというのに、あれだけ恩を与えられたにも関わらず裏切るのだ。

 足利など畜生以下よ。そのような者など、決して許してはならぬ!!


 「行けーーーっ!! 押せーーーっ!!

 謀反人など何するものぞ! 正義は我らにありーーーーっ!!!」


 「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」」」」」」」


 よしよし、押しておる。

 敵はそれなりの兵を連れてきたようじゃが、勢いが違うわ。このまま押し潰してくれようぞ。

 そして、そのそっ首はワシ直々に掻き切ってくれる。

 覚悟するがいい。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:足利直義



 「これは駄目だな、敵に勢いがありすぎる。

 私が矢を射ったところで敵の数は然して減らぬし、黒金(くろかね)がおらぬとここまで違うとはな。

 すまぬが、この戦は負けだ。私はすぐに鎌倉に引き返して京の都に行く。

 そなたらは適度な時を見計らって逃げよ。

 京の都に文を出せば、兄上が援軍を送ってくれよう」


 「はっ! かしこまりましてございます。

 しかし、重ね重ね無念でございます」


 「言うな。ここまで不満が膨れ上がったのは帝の所為だ。

 あのような重税を掛ければ、こうなるのは当たり前であろう。

 それでも帝の為さる事だ、兄上では止められん。

 特に公卿や公家の方々が帝の味方についておる以上は、如何(いか)にしようもない。

 おっと、本当に急がねばならん。後は頼む」


 「ははっ!」


 私は家臣に後を任せ、すぐさま鎌倉へと馬で走る。

 ここで負ける以上は鎌倉を奪われるのは間違いない。

 そして鎌倉の町は未だ疲弊したままなので、戦場(いくさば)として使う事は出来ないのだ。

 そういう意味でも要害を出て迎撃せざるを得なかった。


 しかしそれでは勢いに勝る相手に勝つ事はできなかったようだ。

 こうなると私がしなければならないのは、成良(なりよし)親王殿下と千寿王を連れて逃げる事となる。

 とにかく2人を逃がさねばマズい。

 すぐに替えの馬と共に落ち延びないと、どちらが死んでも足利家にとっては大きな傷となる。


 素早く鎌倉まで駆けた後、すぐに屋敷に行って赤橋の方に説明。

 そして成良(なりよし)親王殿下に上奏して、すぐに私達は鎌倉を出る。

 千寿王は私が連れていく形であり、成良(なりよし)親王殿下には御自分で馬に乗っていただく。


 護衛の数は出来るだけ減らし、とにかく素早く移動できる形にした。

 出来るだけ早く西に逃げねばならぬが、まずは足利家の領地である三河まで急がねば。

 あそこならば匿ってくれる者も多いし、あそこから京の都に文を出そう。

 兄上にさえ届けば兵を出してくれるはずだ。


 それと………渡辺は上手くやったであろうか?

 護良(もりよし)親王を殺害しておくように命じたので、おそらく暗殺したと思う。

 その事を上手く鎌倉を攻める者達に擦り付けられればよいのだが……。

 無理でも私達は帝の密命に従ったのみ。勝手に殺したわけではない。


 …

 ……

 ………


 親王殿下は良いのだが、その側仕えの所為で遅れるとはな。

 散り散りに逃げる羽目になったが、それでも私は千寿王と成良(なりよし)親王殿下と共に逃げておる。

 側仕えが如何(いかが)なったかは知らぬが、私は護衛の者達と共に逃げる事が出来た。


 他の者は奮戦してくれておるであろう。

 彼らと彼らの家族には必ず(むく)いて、恩を出さねばならん。

 でなければ足利家の恥となる。


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