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式神と霊兵  作者: 田中始め
第二章 南北朝編
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 Side:神守(かみもり)黒金(くろかね)



 昨日は面倒くさかったけど、今日はゆっくり出来る。

 そう思って、僕と桜は葛葉(くずは)の所へとやってきた。

 そこで色々と話をしていたんだけど、初めて来た時に突っかかってきたヤツは出て行ったらしい。


 「まあ、ハッキリと言えば小物だったのよ。自分は強いと勘違いしているだけのヤツ。

 それでも修行には励むんで放っておいたんだけどねえ、黒金(くろかね)の事を理解したら急に出て行ったわ。

 なぜかは知らないけど、大した事ではないでしょ」


 「あの男がねえ……。

 なんか面目に五月蠅そうなヤツだったし、しつこく突っかかって来そうな気がするわね。

 それはともかく、まさか子供が居るなんて知らなかったわ。

 人間と妖怪で子供が出来るのね?」


 「そうね。大妖怪なら可能なのかもしれないし、もしかしたら別の理由があるのかもしれないわ。

 黒金(くろかね)は久しぶりに会うでしょうけど、こっちが子葉でこっちが双葉よ」


 「よろしく、二人とも」


 「「よろしく」」


 「うーん………なんだか他人行儀ねえ。

 昔は黒金(くろかね)の影兵に沈んだりとか、色々としていたのに。

 やっぱり百年以上経つと忘れるのかしら? それとも子供の頃の事だから忘れてる?」


 「別に忘れてはいないよ。ただ、長く会わなかっただけで」


 「私もそうかな? 長く会ってないし、何を言えばいいかも分からないもん」


 「まあ、そういうところはあるかもね。

 三葉や四葉も今は居ないし、それぞれが好きに生きてるから仕方ないんだけど」


 「好きに生きるのはいいんだけど、大丈夫なの? そこまで強くないよね?」


 「まあね。位でいえば、一番弱い四葉で甲七級ぐらいはあるんだけど、それでも危険な妖怪はいるわ。

 だからこそ自分達で頑張らせてもいるのよ。危険だと理解しておかなきゃ、生き残れないもの。

 そこは厳しくしないといけないところよ」


 「なるほど。厳しいけど、だからこそ相手を舐めなくなるなら悪い事じゃないね。

 大抵の死ぬ原因は油断だと思うしさ。

 壇ノ浦でも油断した所為で蹴り落とされるし、本当に油断は良くないよ。

 良い事なんて何もないね」


 「それは当然よ。

 それより黒金(くろかね)と桜は官位と官職を貰ったんですって?

 それも私と同じって事は、合わせたんでしょうね。

 もしくは都合よく与えられるのがそれだったか」


 「あれ? 葛葉(くずは)も官位と官職をもらってたんだ?

 ………繋ぎ止める為か、それとも昔から助けてもらってたからか。

 多分だけど、どちらかでしょ?」


 「正確にはどちらも、ね。

 まあ、私がここに居るとその分だけ自分達が安全だとでも思ってるんでしょう。

 私も鹿野の名前を汚すわけにはいかないから、強い妖怪が来たら戦うしね。

 本当は陰陽師に任せたいんだけど、最近のは【霊波】で戦うだけだから……」


 「あの男は式神が使えるのが自慢だったみたいだけど、<赤鬼>ぐらいは使えるの?

 それとも、もっと上の式神も使えるのかな?」


 「そこまでのは、そもそも教えてないわよ。

 アレが自分で編み出したなら知らないけど、それでも然したる強さにはならないわ。

 そもそも強さを追い求めたところで黒金(くろかね)には勝てないしね。

 最悪は将門の短刀を抜かれるだけよ」


 「そうなんだけど、出来れば抜かずに勝ちた、誰か来たよ?」


 「そうね? わざわざ部屋に来る者なんて多くないんだけど……」


 「失礼いたします。

 どうやら内裏において、護良(もりよし)親王殿下が征夷大将軍に任じられたようです。

 ただし満場一致ではなく、不満の多い護良(もりよし)親王殿下を(なだ)める為でしょう。

 相当の武士嫌いのようですので」


 「そう。分かったわ、ありがとう」


 そう葛葉(くずは)が声を掛けると、部屋の外の人は歩いて離れて行った。

 どうやら内裏の中にまで繋がりを持っているらしい。

 これも長く今日の都にいる葛葉(くずは)ならではだろうね。


 「護良(もりよし)親王ねえ……。

 元は比叡山の天台座主だけど、争うのが好きな人物で、武術の稽古にのめり込んでたと聞くわ。

 どうやら自分は強いとでも誤解しているんでしょうね。

 自分なら武士にも負けないって」


 「バカなんじゃないの? どんなに強くても大人数に攻められたら負けるよ。

 そのうえさ、その人って確か戦上手と一緒に居た人だよね?

 一緒に居て何も学ばなかったって、完全に駄目な人じゃん」


 「戦上手といえば楠木の事ね。

 確かに楠木が篭もる城にいたらしいし、吉野にあった城は敵に落とされてるのよねえ。

 それを考えると、個人の武力はあるんでしょうけど、戦には勝てない感じかしら?

 個で強かろうと、大軍を指揮できるわけじゃないんだけど……」


 「単に子供が(こじ)らせてるだけなんじゃないの? そもそも偉いのも帝の子だからでしょ。

 それを自分の力だとでも思ってるんだと思うわよ。

 しょせんその程度でしょうしね。

 せめて私みたいに、山に小屋を立てて二百年ぐらい生きてみろと言いたいわ」


 「二百年って、随分と長いわねえ。

 山姫になってるくらいだから、それなりに長い年月を生きているんだと思ってたけど、二百年とは思ってなかったわ」


 「桜は山姫だからか、異様なほどに体力と筋力が高いんだよ。

 十人張りの弓もアッサリと引くしさ。こういうのは種族的な差なのかな?

 葛葉(くずは)はどちらかと言うと霊力を活かすんだと思うけど」


 「そうね。どちらかと言うと、【狐火】を始め霊力で戦うわね、私は。

 種族的って言われると分からないけど、確かにそういう傾向はあると思う。

 山姫は力で強引にいく感じなんでしょうけど、それで姫? と思わなくはないわね」


 「それを言われても困るんだけど?

 あくまでも山姫という妖怪なのであって、私自身が姫というわけじゃないわよ。

 それに名乗ってもいないし」


 「それはそうだけどね。

 それはともかく、今回は二人とも京に長く居られそうで良かったわ。

 まあ、子葉と双葉はアレだけど、私は歓迎するからいつでもいらっしゃいな」


 「別に喜んでいないわけじゃないよ。

 ただ、何を言っていいか分からないだけ」


 「そうそう。

 だって最後に会ったの百年以上前だし、にも関わらず全く変わってないんだもん。

 余計に何て言っていいか分からないよ」


 「ああ、そういう事ね。

 とはいえ私だって変わってないんだから、そんなものでしょう。

 どこが違うのかしらね?」


 「いや、人間と妖怪じゃ全然違うよ」


 「正しくは現人神一歩手前と妖怪ね。

 そう考えると特におかしな事では無いでしょう。

 そもそも現人神の方が滅多にいないわよ。

 一歩手前でもね」


 「「………」」


 まあ確かにそうだね。

 妖怪は結構たくさん居るけど、現人神一歩手前なんて僕だけだろう。

 それはともかくとして、子葉と双葉も変わったなぁ。

 大きくなってるし、何より恰好いい。

 大人の男って感じだけど、二人は結婚とかしたのかな?


 「二人は結婚とかしたの? 斯明(かくめい)との子供なんだから大丈夫なんでしょ?」


 「まだまだよ。

 妖怪だから成長が人とは違うし、今は修行を重ねないといけないわ。

 十分な実力がついたら良いけど、大した実力が無いなら家族を守れない。

 それは良くない事よ」


 「まあ、気になる女性も居ないし、夫婦になる気も無いかな?」


 「私も同じ。別に一人で生きていけるし、だったら一人の方が気楽だしね。

 今はお兄ちゃんと一緒だけど、それで困ってるわけでもないし」


 「流石に本当の意味で一人だと危険だからね。

 だからこそ子葉と双葉、三葉と四葉で分けてるのよ。

 下の二人はなんだかんだで要領がいいから、あの二人で組ませた方がいいのよね」


 「ふーん……」


 皆それぞれで生きてるんだなー、って分かる話だね。

 今日は子葉と双葉に会えて良かったよ。


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